【 魑魅(すだま)/小山田いく 】
何と名付けたらいいのでしょうか。小山田ヒューマンホラー、とでも言いますか、実に独特な世界です。
ある意味変人の東森という男子が部長をつとめる生物部には、地下室があります。そこには、様々なホルマリン漬けの標本など、不気味なものが類々と管理保管されています。いわく、カッパ、ムジナ、猫又、龍、人魚……。
それらは果たしてホンモノなのか、それとも、民話や伝承に基づいてでっち上げられた別物なのか。
ある日、この生物部に、交通事故でぐちゃぐちゃになった猫の死体が持ち込まれます。弔う前に、元の猫の身体に戻してやってほしいとの依頼に、東森はそれを引き受けます。しかし、完全に破壊された足はもはや復元が不可能。そこで東森は、ホルマリン漬けになっている猫又の足を利用して形を整え、復元された猫と、猫又といわれてホルマリン漬けになってる実はなんだかよくわからない生き物を、一緒に葬って遣ることができればと考えたのです。
猫の死体を持ち込んだのは、心優しい少女。しかし気弱で友達がなく、パシりにさせられたり、いじめの対象にされるのがわかっていながら、寂しさのためにその不良グループの一員となっていました。
その少女に猫又が乗り移り、不良グループに幻覚などを見せます。それは、いじめられることで鬱積し抑圧された想いの解放なのかもしれませんね。いじめをしていた連中は、その幻覚の世界の中で、身を守るために所持していたカッターナイフで、幻覚の化け猫と戦います。しかし、正気に戻った彼女達は仲間同士で切り合いをしていたことに気づくのです。
純粋のホラーやオカルトというわけでもなく、少女の屈折した気持ちが産んだ心の中の化け猫によって催眠能力が覚醒し、自らが生んだ幻を見せつけていたのではないか。東森はそんな解釈をしています。
生物部に所属している部員は1人。専女摩未(とうめまみ)という1年女子です。変人の東森部長と、結構良いコンビを醸し出しています。この2人が、ちょっとオカルトちっくで、ちょっといい話を、紡いでいきます。基本的に1話完結の読切形式。第1話と最終話だけが前後編の構成です。
第1話の「猫又」の他には、河童にまつわる話、人面疵、ホルマリン漬けになっていた正体不明の内臓群、死体から生まれて飛び立つ地獄蝶、餓鬼、人魚なども登場します。ホラーっぽい演出でも、単に怖い話しではなく、結局人の心に巣くう黒い部分が魔を呼んでいるんだ、ということを示唆しながらも、民話や伝承上の架空の生き物や妖怪や魂といったものを、全否定しているわけでもない、時には人を暖かく見守っている…。そんな小山田ホラーなんだと理解しています。
動物に食べられて、消化されずに排泄されてから、芽を出す植物のエピソードもあります。時間と場所を超えたロマンチックな話だったりするのですが、摩未が植物温室の中で野糞をしたから発芽したこと東森が見抜いてしまうという、ウンコネタのギャグなんかも散りばめられています。
どちらかというと事件絡みの話が中心の展開で、刑事なんかも出てきたりします。不自然さや違和感はないのですが、刑事ものっぽくなってくると、東森は高校生にしては随分おとなびているようなキャラです。
最終話の「怪画」では、画家のモデルとしてアトリエにやってきた女性が次々と行方不明になる事件の謎解きが行われます。化物じみた面相の人間か妖怪かわからないモノが登場して、摩未も活躍します。人の顔の皮を剥いで絵を描くキャンバスに使うというおぞましい事実を東森が突き止めます。
ラストシーンは、どうやら東森と摩未が恋人同士になりそうな予感を漂わせて、物語は終了です。
全2巻なのですが、1巻だけしか手元には無く、後に1冊にまとめられて復刻したブッキング版(それも古書)にて読了。これには「下闇の香り」という読切と、創作裏話的な「1968年の標本ビン」(描き下ろし)も収録されています。
(162-619)
【 プラネットラダー/なるしまゆり 】
実は全巻は持っていないのですが、高河ゆんさんがお好きならとお薦めシていただき、その時 書店にあったのをいくつか購入したような記憶があります。
写真、ご覧のとおり、主人公の女の子、めっちゃ可愛いし、甘い雰囲気あるし、書棚に並んでいる巻を全部買いました。
第1巻の時点では、どんどん状況に巻き込まれて、ひたすら翻弄されます。しかし、かぐらは精神的にどんどん成長し、状況も理解して、後には、ヒロイン的な動きをするようになります。貝やそこに存在する人々を救おうとするわけですね。世界を守もらなければ、という自覚に徐々に目覚めてゆくわけです。
だけど、守れないのです。いくつかの界は滅び、また、いまにも滅びそうな状態にあり、滅亡を待つばかりとなります。
しかし、それらの滅亡を覚悟した上でなら、ひとつの界だけをなんとかすることはできそうです。
最後は、崩壊した(させた)界のエネルギーによって、残された界(あるいは、新たに産み出した界)において、人々が日常生活を営む様子が描写されています。カグヤもその界で、未来の人類のために、着実な歩みを始めようとします。そんな物語です。全巻がもともと揃っていないので、作品への理解度が低く、申し訳ありません。
(174-649)
【 第一○七生徒会記録/むつきつとむ 】
金ちゃんと、すずめの赤貧カップルは、広大な敷地を持つ学内の森の中でテント生活中。寮と違って男女別ではないから、やり放題ではあるのですが・・・。
この2人が、封印されていた伝説の学ランを盗みだします。
望みを叶えるというこの学ラン、実はこれを着ると「生徒会長に惚れてしまう」という呪いアイテムでありました。そのため、封印されていたのですが。
第107代生徒会長は、この学ランを取り戻すために奔走したり、策を労するのですが、すずめがこれを羽織ってしまったために生徒会長に惚れてしまい、生徒会長もすずめも女だったため、レズビアンセッ○スが学内で公開されてしまいます。
最終的には学食ランチ3ヶ月無料という取引で取り戻し、焼却処分、学食ランチの件も沙汰やみになってしまいます。
赤貧カップルの次なる策略は、化け猫を利用した賞金稼ぎです。
というような感じの、エッチな高校生カップルのお話です。
(173-645)
【 アーシアン/高河ゆん 】
アーシアンとは、地球人のことです。
地球人は、滅ぶべきか、存続すべきか。これを調査しているのが天使。
プラスの調査員とマイナスの調査員がペアを組んで採点するのです。
写真は、創美社発行の完結版なのですが、背中が割れたりして痛みが激しいです。大切に扱わねば。多分、新書館版も持っているはずです。創美社版は一冊が400ページくらいの分厚い本なので、背中も割れやすいんでしょう。
ところで、アーシアン。
ラスト、どうなるのでしょうか?
結論は、「地球には手を出さず、そのまま撤退。なぜなら、地球は放っておいても地球人のてによって滅ぶから」です。
でも、異を唱える天使もいます。地球人は地球に愛されているから、滅びない、と。だからこそ地上に人類が産み出されたのだと。
本当の所はとうなんでしょうね。地球人が、地球をもっと愛しなさい、という、メッセージなのかもしれませんね。
(172-644)
全3巻+外伝1
【 HOTEL/石ノ森章太郎 】
元々、全巻揃えるつもりもなかったのですが、TVドラマにもなりましたし、原作がどういう感じで描かれているのか興味を持ち、何冊かは読んでみようという気持ちになったのです。
古書で入手したものと、新刊とで、本人によるもの5冊(1、6、8、11、21巻)と、故人となられたあとで石森プロダクションとして描かれたものが1冊(1巻)あります。
商売なんでもそうですが、収入を得るためには、経費が必要です。経費を上回る収入がなければ赤字、あれば黒字です。この境目を、採算分岐点といいますね。
ホテルの場合、採算分岐点が高いのですが、いったんこれを越えるとものすごい収入になります。
採算分岐点が高いのは、設備投資に相当の費用が事前に必要だからです。でも、採算分岐点をいったん越えたら、一人のお客にかかる経費なんて屁みたいなもんになります。だって、水光熱費に消耗品、リネン等の洗濯の費用くらいですからね。
ただしこれは、一定期間を通したトータルの話ではなく、毎日の勝負になります。売れ残りを翌日半額で、みたいなことができないからです。
で、1巻のわりと早い場所におさめられているような「オーバーブッキング」のエピソードが生まれるわけです。
ノーショー(無連絡キャンセル)も含めて当日キャンセル(急病や不幸事などもありますからね)を見越して多目に予約をとり、本当にオーバーブッキングをしてしまったら同クラスのホテルに「回し」を入れる。回された方も、本当に満室なら断ればいいし、空室があればより満室に近くなって、助かるわけです。
「ホテル」本作品でのオーバーブッキング騒ぎは、既に107%の予約率であるにも関わらず、他からの回しを受け入れたこと、その根本には「仮予約のまま連絡がとれなくなっていた団体客があった」ことが、原因です。
当時と現在では、「ネット予約」の存在や、その「比較サイト」の登場などホテルを取り巻く環境は大きく変わってきていますが、団体客を旅行代理店に依存してる体質や、「仮予約」という意味不明な言葉の日常化(仮だろうと何だろうと部屋おさえをしてることには変わりなく、他の予約を受けられない)など、ホテル業界の体質はあまり変わってないようですね。
いずれにしても、「満室」で希望する日に希望のエリアで宿泊できないお客様がいるわけですから、業界全体でダブつき気味のキャパを用意して、混雑が集中してしまったホテルにスタッフを「回す」などの、根本的な発想転換が必要でしょう。
夏は山小屋、冬はスキー宿を、それぞれ同じ従業員でまわしてる宿泊施設があるとか、テナントで入ってるレストランの料理人なんかは、実際に回しが行われてるとか、きいたことがあります。
ホテルならではの話もあれば、たまたま舞台がホテルではあるものの、いわゆるヒューマンドラマの範疇の話の両方が混在しています。
ただ、色んな人が色んな事情を抱えてやってくる場として、ホテルという舞台は最適な場のひとつですし、ゴルゴ13ほど読み手を選びませんから、ちょっとした待ち時間のある場所なんかに置いてあるといいですね。
1巻の発行日は、1980年代なのですが、作品が色褪せてないのもいいです。もちろん、世相は当時を反映してますから、そういう古さはありますけど、「今時それはないでしょ?」というのがないんです。
各回のテーマをできるだけ普遍的なものにしようという思惑があったのか、自然とそうなったのか、そのへんはわかりませんが。
全巻揃ってるわけではありませんが、どこかに直し込んでおくのではなく、そのへんに放り出しといて、気まぐれにページをめくって気分転換するのには、とても良いなあと感じました。
表紙をたくさんのせても代わり映えしないので、各シリーズからひとつずつだけ、掲載してみました。
(170-640)
(171-641)
【 TheかぼちゃワインAnother/三浦みつる 】
かぼちゃワインの新作続編です。かつてのかぼちゃワインは、テレビアニメ楽しみにしてて、ほぼ毎週観ていたのですが、原作はあまり馴染みなかったですね。
単行本カバーには、「絶対満足SEXYコメディー」とありますし、アニメでお馴染みのキャラクターですし、買ってみました。
エルの「春助くん、だ~い好き」の、アニメでのフレーズがまだ耳に残っています。
春助の家は女性下着の専門店で、いやいや手伝わされていたのですが、探偵事務所の採用試験に合格し、そこから物語がスタートします。
が、探偵ものとしても、ちょっとエッチなコメディーとしても、中途半端感がいなめません。
それに、もともとエルのキャラクターは、大柄な女性というより、デブ。個人的にはあんまり・・・なのです。
太った女性という位置づけで描写されてるキャラのほうがまだ自分にとっては好感度なんです。例えば、銀の匙のタマコのような。
とにかく、大柄でグラマラスなことを主張したかったんでしょうね。もしかしたら、少年誌連載時代なら、当時の少年どもの憧れ体型だったかもしれません。
春助は、主人公なのに男前ではなく、普通の男子な描写、というか平凡で、自分は好きですけどね。
続きのストーリー、すなわに2巻以降について、「何が何でも読みたい」という衝動にかられるほどてはなく、1巻のみの収集でストップしとります。
(169-635)
【 地球へ/竹宮恵子 】
地球へと書いてあるのを見て、とっさに「テラへ」と、読んでしまう人って、決して少なくないですよね。
私がもってるのは、スクエアエニックス版ですから、もっとも新しい発行のものだと思いますが、作品そのものは私が10歳にも満たない頃に描かれたSF。
いくつかの設定をとりあげてみますと、こんな感じです。
地球が荒廃して人類は宇宙へ移民。ワープ航法が実用化されている。コンピューターによる人類の管理。子孫は試験官ベビーで出生する。
超能力者と一般人の対立。
反政府的な思想の洗脳による除去や最適化。
今でもこれら設定が使われている作品は少なくありません。バリバリの現役の設定なのです。ですが、これら全てを当時盛り込んで作品にしている、そう思うと、なんだかムチャクチャ凄い作品ですよね。
「地球へ」は、難しい作品という評価もあったようで、なるほど、当時これだけの要素をてんこ盛りしてたら、確かに難しいと感じる面はあったかもしれません。
今日的に問題視されるかもしれないなと思われる部分もあり、時代を感じさせます。それは、障害者に対する扱いです。
成人検査の際に精神障害を患う者がいるという設定は、成人検査において精神の奥深くにまで入り込むためで、今なら非人道的なこととして扱われざるを得ないでしょうし、知的障害者や、成人検査のために精神障害者となった者が、はっきりとは言及されてないものの、成人検査でハネられることが示唆されています。
世界観の設定のひとつとして作られているので、ナシな設定ではありませんが、それらを批判する勢力を、今なら同時に登場させざるをえないでしょうね。
でも、この作品では、社会的に身体障害者が阻害されるという設定がないと成り立ちません。
身体障害者は、その補完のために、超能力が発現するという設定だからです。そして、生物学的には、それは正解だと思います。ある身体能力を持たざるものは、他の身体能力でカバーしなければ、生き残れないからです。
さて、ミュウと呼ばれる身体障害のある超能力者たちは、はるかな長い旅を経て地球にたどり着きます。
その彼ら彼女らの運命はいかに?
ミュウの誕生が自然の流れであるならば受け入れるべきという主流の意見と、断固反対であるという政治家の意見、両論併記の記録がコンピューターに残され、かつその選択肢まで託された状態のままになっています。
今まで気づかなかったのですが、「人間は神の領域に手をつけた。この戦いはその制裁だ」とか、「新たに紡がれる「地球へ・・・」の世界、などの言葉と同時に、3巻の帯には「新連載」の予告ともとれる活字が・・・。
続編が出てるのでしょうか。それとも、このあとの物語はみなさんの頭のなかで、そして、日々の行動で、紡いで下さいね、ということなのかもしれません。
(168-634)
【 あひる/樫田正剛・楠本哲】
この方の漫画には、ヤクザなどアウトロー怖い系のキャラと、ホームドラマ系キャラの描き分けがあるのですが、この作品は基本的に後者です。
でも、かわりに時々、とんでもない人物が登場します。そのとんでもない連中に翻弄される話です。
6歳のりつ子は、家族でおでかけしているある日、カメラマンから写真を撮らせて下さいと声をかけられました。謝礼はたった2千円。しかし、街角で見つけた未来のスターという雑誌の特集に掲載されたことで、運命が動き始めます。
りつ子はスターを夢見、母親はステージママに変貌をとげてしまいます。
しかし、悪質なプロダクションに騙され、レッスン料やオーディション料をとられた挙げ句、そもそもオーディションそのものが出来レースだとわかります。そして、母親は重病で入院。医師の話では、退院することはもうありえない、と。
そのため、父親である耕三が、ステージパパにならざるを得なくなります。
しかし、悪質なプロダクションのやり口に、耕三はりつ子をプロダクションからやめさせます。これで、芸能界への道筋は閉ざされてしまいました。
でも、娘の夢は叶えてあげたい。唯一のコネといえば、最初に声をかけてくれたカメラマンのみ。相談すると、とあるプロデューサーを紹介してくれることになりましまた。プロデューサーは協力を惜しまないという意志表示をします。でも、それには、交換条件がつきました。耕三の身体です。プロデューサーは筋金入りのゲイだったのです。娘の夢のため、一度は腹をくくる耕三ですが・・・。
痛いのか?
俺はタチなのか、ネコなのか?
覚悟が定まらないまま、耕三は呻吟します。そして、出した結論が、ダッシュで逃げる!
これでついに、芸能界への細い糸も切れてしまいました。
ところがその後、ひょんなことから、未来の俳優を夢見る青年と知り合います。
この青年がエキストラとして出演する映画の現場に、「子役」と「マネージャー」を装ってついていけば、見学ができるというのでついていきました。
そして、監督に見初められたのは、りつ子ではなく、耕三。
とはいえ、ズブの素人です。演技など満足にできるはずもなく、監督からはボロクソに罵られます。その耕三にアドバイスを与えたのが、人気女優の香坂ちづるでした。
アドバイスのおかげで撮影はうまくいったものの、耕三に目をつけた香坂ちづるほ、耕三を落としにかかります。さらに、耕三の勤める会社の女子社員にまで言い寄られ…。
ご都合主義な展開ではありますが、ご都合主義を感じさせないスピーディーで意外な展開が次から次へと耕三を翻弄します。
女子社員としこまた呑んで、酔いに任せて次に訪れた店が、なんとゲイバー。そこで、意気投合したメンバーと調子にのって裸踊りをしているところへ現れたのが、例のゲイのプロデューサーでした。
「やっぱりアナタ、そういう趣味だったのね」とばかり、今にも襲いかからんとするゲイのプロデューサー。
耕三、絶体絶命のピンチ!
とまあ、だいたいこれが1巻の粗筋です。
書店で2巻をみかけたら購入、のつもりでしたが、そこ後、みかけません。
さて、りつ子の、夢は、叶うのでしょうか?
(167-631)
【 ライブス/田口雅之 】
チャンピオンREDコミックスで全2巻。購入してからしばらく読みもせず置きっぱなしになってたようです。
読むのが購入するペースに追い付かないことが時々ありますね。
おそらく、「バトル・ロワイヤル」の次の作品で、勢いで買ったままになっていたのでしょう。
難しい作品です。
ある日、東京を中心とした関東一円に、巨大な隕石郡らしきものが多数落下し、壊滅状態になります。
ライフラインの一部は辛うじて生きているようで、テレビのニュースなどでは、自衛隊と在日米軍により立ち入り禁止措置がとられていると、報道が流れます。
事態が把握されてるのなら、やがて救助が来るだろうと、安心したのもつかの間、事態はそう簡単ではありませんでした。
アリーナでのコンサートを控えたアイドルグループの控え室は幸い被害を受けなかったようですが、会場の様子を見に行くとメチャクチャに破壊されています。
ただの、巨大隕石郡などでは、ない?
しかも、人間が獣への変身能力を身に付けており、弱肉強食の世界へと変貌していました。
物語は、巨大隕石郡落下の直前の様子がいくつか示され、そして、その生き残りが、獣に変身してしまった弱肉強食世界を生き残るためのグループを作ったところから、本格的な展開へと移行していきます。
剣術のあととりであるシン、アイドルグループの生き残りの葉月ちゃん、そして、自殺を図ろうとビルから飛び降りたところを助けられたマー坊です。
しかし、それ以外に仲間がいなかったわけではありません。行動を共にはするが、敵対者は容赦なく排除すると宣言していたシンの兄弟子は、早々に人間が変身した獣に早やられてしまいますし、葉月ちゃんが兄と慕っていた人物も、実は葉月ちゃんが獣化して食べていたことが後に明らかになります。
人は命あるものを食せねば生きていくことはできませんが、その命が、さっきまで人間同士だった者の殺し合いだったら?
読者は心の置き所、共感のしどころ、感情移入の仕方など、とても難しい立ち位置に置かれます。そのためか、おそらく深淵なテーマと練られたストーリーを持ちながらも、打ちきりになったのではないかと類推します。
ヒントはおそらく、シンが師匠から教わった「活人剣」というキーワードにあります。そして、表紙カバー絵になってるちょっとデビルマンぽいキャラが、ヒーローとして活躍する物語が、予定されていたのではないでしょうか。
(165-628)
【 ベンゴスター/楠本哲 】
全3巻で発行されてたはずですが、なぜか上下2巻で復刻。しかも同じレーベルだし。テレビドラマ化されたとか、特別なトピックもなかったはずですし、飛び抜けて人気があったようにも思えませんし、不思議です。
弁護士になるべく、弁護士事務所でアルバイトしてるときの話が3分の2、残りが弁護士になってからの話です。
主人公が得意とするのは、闇金の債務整理で、巨乳好きの親子(唯一のわらえるマンガ的ゴラク要素)弁護士の事務所でイソ弁(自分で事務所を経営しない雇われ(居候)弁護士のこと)として、活躍する。はずが、夢を叶えたとたんに完結とは……。
この作者にしては、バイオレンスな描写が少なく、弁護士らしい言葉のバトルもわずかで、相手が弁護士と知ると尻尾を巻く、という展開が多いです。
そのかわり、なぜそんな借金を抱える羽目になったとか、どうしてそういう境遇にいるのにオモテザタにてきないのかなど、人の暗部や社会的問題に触れること方が主眼となっているようで、弁護士活躍物語というテーマではない、と、私は判断しました。
とはいえ、主に1話完結スタイルは少ししんどい。せめて、前後編くらいで話を進めないと、読者は肩透かしを食らうよな、というのが、素直な感想です。
(164-626)
初期発行の3冊も所持してるはずですが、カウント含めてません。
#漫画 #楠本哲 #ベンゴスター
【 覚悟のススメ/山口貴由 】
これはまあ、そこそこ知られた作品ではなかったかなと思います。連載当時は、チャンピオンの看板作品のひとつであったと認識してます。
とはいえ、ワケわかんない作品ではありましたね。
数多の英霊を宿した不気味な強化外骨格なる全身を覆う鎧をまとった葉隠覚悟が、人類滅亡を目的とする敵が送り込む「戦術鬼」というグロテスクな改造人間と闘います。舞台は東京。毒素にまみれて壊滅しており、生徒達は消毒のために定期的に「防疫プール」に入ります。そうしないと生命維持が困難なほど、汚染が進んでいるのです。
敵の総大将は、覚悟の兄。なぜか女性化しています。兄弟の因縁の対決です。
そう、過去の因縁が大きくからんでいます。
愛と正義を語る哲学的なヒーローSF、とでも申しましょうか。
連載中は「気色悪い作品」でしたが、後年、チャンピオンレッドコミックスのレーベルから出まして、それを集めました。全5巻。でも、4巻が買いそびれたままありません。
当時、連載と平行してコミックスが買えなかったのは、チャンピオン、モーニング、スピリッツ、ヤングジャンプ、アワーズライトなどを定期講読していたからです。時期は違いますが、少年キングやサンデー、少女誌では、少女コミック(フラワーズ)とかmimiとかアワーズガールなんてのを買ってた時期もあります。
(163-624)
【 八百八町裏表 化粧師/石ノ森章太郎 】
江戸時代後期が舞台となっているらしい「化粧師」。式亭小三馬という石森キャラとしたら相当なイケメンを主人公にした物語です。
タイトルを素直に解釈すると、いわゆる「メイクさん」がお仕事と思えますが、町中に店舗を構えて自ら開発した商品を販売するだけでなく、女性の着物の世話をしたり、大きなお茶会のプロデュースをしたりと、単なる小売店の店主というわけではありません。
名家の姑と嫁が張り合ったりするのに力を貸したり、客のつかなくなった夜鷹を甦らせたりもします。男の化粧である「刺青」の図案や、騙されて大量に在庫を抱えた手拭いの販売にも知恵を絞ります。男気も才気も溢れるこの男を頼って大勢の人間が出入りするわけで、単なる小売店物語とは異なるわけです。
この作品も私はアニメから入りました。大橋巨泉さんのナンタラいう番組でやってた「笑ゥせえるすまん」に続く番組内アニメだったのではないかと思います。短い期間で、「笑ゥせえるすまん」に戻されてしまったように記憶するのですが、当時としては目の覚めるような鮮やかで美麗な色彩で、とても丁寧に彩色されてたように思います。
アニメ版は、2~3回しか観れなかったのですが、そのなかで印象に残っているのか、「寒の水」です。ただの水を売れとの命を引き受けざるを得なくなり、最初は「飲める化粧水」として売り出し、大ヒットを飛ばします。そこへ、かねてからの計略どおり「あれはただの水でしたかない」と悪評を流されてしまいます。式亭の評判も信用もガタガタになります。
しかし、ただでは起きない式亭、その水が越後の國よりいかにして苦労して運ばれてきたものか、そして、いかに多くの人の絶賛を受けているかを喧伝し、再びヒット商品に返り咲くのです。
この男が広告も含めた総合的なプロデュースの腕をもった知恵者かがわかるエピソードです。
正続2巻に約30のお話がおさめられています。
(162-618)
#漫画 #石ノ森章太郎 #八百八町裏表化粧師
【 探偵学園Q/天樹征丸・さとうふみや 】
物語は中学生のクラスメートが進路について雑談しているところから始まります。
見た目は多少かわいいけれども、これといった取り柄のなさそうな、華奢な少年キュウが、「探偵学園」を受験すると宣言します。
探偵養成の為に作られた、才能ある者しか入学が許されないこの「探偵学園」、我こそはと思う頭脳のエリート達が受験のために集まってきました。そして、早速、試験開始です。
事件の概要説明のあと、容疑者候補6人が壇上に立ちます。コイツが犯人だと思う者を尾行し、正解ならその先に試験の第二会場が用意されてるとのこと。
試験会場で知り合ったり、尾行中にお互い受験生だと名乗り合ったりして、自然と共同戦線が構築されるなか、キュウたちは犯人(とおぼしき)人物に迫ります。さて、正解は?
校長ほ、現役時代にゆいいつ拳銃の所持を許されたとされる伝説の大物探偵。
試験に合格し、入学が許されたキュウ達は、やがて実践投入されていきます…。
また、謎解きの宿題を出されたりもします。
その上、普段の活動や試験の成績によって、クラス替えなどもあって、探偵学園の生徒たちにとっては、緊張の連続。
金田一やコナンはじめ、いわゆる推理ものの、最大の弱点というか、難点というか、ふっと覚めてしまう瞬間があります。
それは、「刑事もの」じゃないんだから、素人の一般人がそんなに次から次へと殺人事件に遭遇するわけねーだろ?」と感じたときです。
そこは目をつむって、フィクションと割り切り、純粋に読者として楽しむのが、読者としての礼儀でもあるわけですが、少しでもその「冷める瞬間」を回避する工夫がなされていると、やはり感心します。
「探偵学園Q」は、それができている数少ない作品ですね。
まず校長が伝説の名探偵ですから、事件が持ち込まれる、というシチュエーションを自然に作れます。また、探偵学園なんですから、自ら事件現場にクビを突っ込んでいく、というのも、さほど違和感がありません。
本物の事件もありますが、謎解きそのものは、「過去にあった話の解決」を課題として出されることもあります。
そして、子供たちだけで危ない事件にクビをつっこませるのではなく、学園講師で現役の探偵が「見守り」役としてついたりもします。
ここまでやれば、物語としては十分だと思うのですが、みなさんはいかが思われますか?
全22巻と、プレミアム巻、そして、ファンブックというべき「ザ・ラスト・ミステリー」巻の24巻の構成です。
(160-614)
【 アタゴオル物語/ますむらひろし 】
アタゴオルについては、以前、書かせて頂きました。
この「アタゴオル物語」は、以前書いた「アタゴオル」の文庫版と内容は重複していまして、内容についてはあらためて記事にすることは特にないのですが、何故わざわざ掲載するかといいますと、「持ってますよ」と自慢しているだけなのです。すいません。といっても1巻だけなのですが。
しかし、朝日ソノラマからの「サンコミックスレーベル」のものなので、貴重本だと思います。しかも、状態も悪くはありません。
ネットで調べてみると、6巻セットで7000円となっています。3倍くらいの値段になってると判断していいのかな?
でも、思ったほど高くはなってないようです。いや、高かったら売るとか、そんなことは全く考えてないんですけどね。
で、ふと、裏向けると、リンゴの形の家の小さなイラストがありました。
確信は持てませんが、これ、1年ごとに家と苗が交代するあのおうちではないのかな?
このエピソードがどのシリーズの何巻に掲載されてるとか、そんなことも記憶にはないのですけど、ちょっとした冒険譚で、ワクワクしながら読んだことは覚えています。
(158-589)
【 あみーご×あみーが/瀬口たかひろ 】
聴力障害(普通にしゃべることはできる)の女の子が、サッカー部への入部を希望してきます。
でも、そこは、とんでもないサッカー部でした。
部室にいる男子は1人。しかも美女を何人も侍らせてハーレム状態。
しかも2巻のカラー口絵がこれもんじゃ、これ「サッカー漫画じゃねーだろーよ!」
博多の森高校サッカー部には、伝説の選手がいました。足のサイズはなんとたった23cm。そして、再びそのスパイクの履ける選手が入部したとき、博多の森高校サッカー部はまた最強のチームになる。
そんな伝説を夢みて、自らはなにもしない先輩たちに嫌気がさした銀は、どうして自分達自ら練習をして強くなろうとしないのかと、先輩たちと全面衝突。オンナをはべらせてた主将と銀を除いて、その衝突を期に、みんな部を去っていたのです。そんな過去のあるサッカー部に、聴覚障害のある彼女、犬丸りるかは入部します。
純粋にサッカーが好き。みんなとサッカーがしたい!
そんな気持ちに元部員たちも突き動かされ、また新入部員もはいって、博多の森高校サッカー部は、メキメキと実力をつけてゆく・・・というお話では、これもう瀬口先生の漫画じゃなくなっちゃいますね・・・と、瀬口先生がお考えになられたかどうかは存じませんが、なんですかこのギャグっぷり!
お色気ギャグ漫画やるんすか? サッカー漫画やるんすか? どっちなんですか??
あ、帯付きの1巻の写真も載せときますね。
「萌え♥️×燃え!」の進化形サッカーコミック登場!! と書いてあります。要するにそういうことです。
でもさー、カバー絵と帯絵、ちゃんとリンクしてんのに、どうして文字がずれてるんでしょうね。こういう場合、帯にもカバー絵と同じデザインして、その上に煽り文句を重ねるんじゃないっすか? デザインさん、これ、ミスってますよね?
でも、なんだかんだ言いつつも、良い作品なんですよね。そこまで下ネタからませなくてもいいのにと思う場面は多々あるのですが、感動系でうるってきちゃいそうになる場面もこれまた少なくありません。
多分、私が持ってるサッカーネタの唯一の漫画です。
あと、あえて言うなら、「夕焼け番長」にサッカーシーンがあるくらいですかね。
瀬口先生の作品じゃなかったら買ってなかったろうなあと思います。(全2巻)
(157-588)