【 鉄道少女漫画/中村明日美子 】
【 87クロッカーズ/二ノ宮知子 】
【 エビアンワンダー/おがきちか 】
エビアンワンダー。それは、悪魔と契約し、地獄にエネルギーを供給する「銀符」と呼ばれる姉弟の物語。どうやって供給するかというと、悪い奴を殺してエレルギーをうばいとるわけです。
そもそもこの姉妹の弟が悪魔との契約によって姉に与えられたものなので、その代償は大きいのです。
銀符に狩られた魂は地獄のエネルギーになるのですが、悪い魂であればあるほどよく、善良な魂は地獄のエネルギーにはなりません。
なので、魂を狩るという恐ろしい所業ながら、いわば悪人退治という、良いこと(?)をしてる、ということになる、のかな?
道半ばで掲載誌「アワーズライト」が休刊し、当時はまだ単行本化されておらず、書き下ろしを加えて全2巻で刊行。その後、多分ゼロサム誌に移籍、エビアンワンダーリアクトとして続編2巻、計4巻の作品です。
銀符で悪の心を刈る能力か与えられているからといっても、決して無敵ではありません。呪文を唱えることができなければ、ピンチにも陥ります。 僧侶フェイ・イは、フレデリカのピンチを助けつつ、また神の道を説き、彼女を改心させるために、同行したりもするのですが、ようするに銀符などというものをやめさせたかったわけです。
フレデリカが欲したのは、自分を見捨てずにずっとついてきてくれる弟。これは契約によってあたえられました。 しかし、そこに矛盾かあるものの、彼女は自分自身の命は欲していなかったのです。むしろ、死んでしまいたいとすら思っていました。
でも、悪魔はこの2者にいのちを与え、その契約としてフレデリカに銀符の仕事を義務付けました。
これを不公平な契約とし、僧侶フェイ・イは契約の無効・破棄を主張します。
逆転裁判のような「意義あり」はありませんが、フレデリカに関わった何人かの善良な人々が証言に立ちます。
そこで有効なのは法ではなく、どうやら人の心のようです。
そして、神は裁定を下します。
【 居酒屋ぼったくり/秋川滝美・しわすだ 】
とにかく漫画雑誌を買っていませんから、新しい作品にチャレンジするには、書店のコミックスコーナーで、「面白そうかな?」という勘で買うしかありません。
さて、居酒屋ぼったくり。えげつないタイトルですが、表紙を見る限り、ぼったくり店を主軸にしたバイオレンスものとは思えません。
裏カバーには「東京下町にひっそりとある、居酒屋「ぼったくり」。なんとも物騒な暖簾がかかるその店では、店を営む姉妹と常連の間で日々、旨い酒と美味しい料理、誰かの困りごとが話題にのぼる。そして、悩みを抱えて暖簾をくぐった人は、美味しいものと義理人情に触れ、知らず知らずのうちに身も心も癒されてゆく…。
と、紹介文があります。
また、第一話のラストには、店の名の由来が書かれています。
「誰でも買えるような酒やどこの家庭でも出てくるような料理で、金をとるようなうちの店はそれだけでぼったくりだ。たとえありきたりの料理であっても一つ一つ大事に心を込めてつくる。口に入れた人が思わず笑みを浮かべるような一皿、それができて初めて払った金が惜しくないと客が思ってくれるようになる。俺はまだそこまでじゃない。だから、この店の名は「ぼったくり」でいいんだ。」
現在、店の切り盛りをしている姉妹の父の言葉です。
作風は全く違いますが、「深夜食堂」のシチュエーションの異なるバージョンみたいな感じかなとも思います。
もし、「深夜食堂」と交互に読んだら、交互に通いたい店ですね。
ついでに言うなら、山口よしのぶ先生の「ダブル」という作品に出てくる飲み屋にも通いたいし、料理のグレードはぐんと上がりますが、「酒は辛口、肴は下ネタ」の「男道」という店の常連にもなりたいですね。
女店主美音のおせっかいぶりにも、目を見張るものがあります。客が、子供の夏休みの自由研究に困っていると、おしげもなく「ぼったくり」のレシピをていきょうします。
空腹状態でいきなりお酒をカブ呑みした客には、「そんな飲み方は身体に悪いから、先に言ってください」と、説教します。
捨て猫を客が拾ってきたときは、「飲食店なのではいってもらえない」ため、「外のみ」を提案します。
そこにもこだわりがあって、店内調理のものを外に運ぶのではなく、七輪と炭で鮎を焼いたりするんです。
レシピも簡単なものが多く、キャベツ、キュウリ、ニンジン、プロセスチーズを千切りにして焼き海苔でまいただけのサラダとか、鮭・梅・海苔を使った「全部載せ茶漬け」なんてのも、出てきます。
もちろん、そうそう簡単にはできませんよ、という料理も出てきて客を驚かせ、喜ばせます。が、そうそう簡単にはできないレシピをここで紹介しても意味がないので、書きませんが。
お酒の知識と選択眼もたいしたものです。「夏子の酒」のように醸造における苦労話や蘊蓄は出てきませんが、ワインの鑑評を評論家がするような表現力です。
グルメに片寄りすぎない人情漫画、人情に片寄りすぎないグルメ漫画。
それが、「居酒屋ぼったくり」です。
ランチョン・ミートが通称の「ポーク」という名前で出てきて、それでつくるゴーヤチャンプルーとか、専門店で食べるような餃子を家庭で焼くコツを伝授するなども、僕がこの作品を好きなゆえんです。
漫画用の原作があるのではなく、人気小説のコミカライズです。
【 ポリ公/立原あゆみ 】
本気(マジ)が終わった後、立原先生はいくつもの作品を手がけられていますが、極道色が強いなあ~という印象が否めませんでした。別に極道物が嫌いだとか、イヤだとか言うわけではありません。でも、他の作品も読みたいな、と。
なにしろ私は「麦ちゃんのヰタ・セクスアリス」の頃からの読者ですからね。この作品の連載は「小説ジュニア」および続編が「セブンティーン」、そしてあの絵柄ですから、多くの読者が「女性作家」だと思っていたでしょうね。私もその1人です。でも、あるシーンから、「この作者、男じゃないの?」と気づきました。それは、麦ちゃんがやよい(この作品におけるヒロイン)を脱がせている途中のとあるシーンでした。これ、男視線だよなあ……と。
(この件は確か別の項目で書いた記憶があります)
あ、話がそれました。で、ポリ公ですが。
はみ出し者の刑事が、シルバーバレットという体内で消える銃弾で、悪人を抹殺する話です。
もちろん、その餌食になるのは、超悪い人ばかりです。
これを「悪即断」と定義してしまうと、「アクメツ」とか「ワイルド7」とか「クリスタルキャンディー」なんかと同系統ということになってしまうのですが、そう思うと「悪人退治」のストーリーって結構多いのかもしれませんね。
上の写真はローラースケートです。走って逃げる犯人を追い詰めるときに、ローラースケートで、おいかけるという、珍しい設定です。
常に履いてるならともかく、脱着にかえって時間がかかるのでは? とかいう突っ込みはこのさい無しにしておきましょう。
ポリ公は、はみ出し者の刑事を集めた部署です。そのためか、刑事そのものが悪人みたいな風体をしていて、おおよそ刑事らしくない。そこがまた立原極道系作品の系譜を踏んでいるような気がしないでもないですが、いつ続きが出るのであろうか、もうそろそろかなとネット検索してみたら、いつのまにか「全5巻」の表記です。
う~ん、完結したようには思えないのですがねえ。
打ちきりなのか、雑誌の休刊なのかはわかりませんが、20~30ページでいいので、せめて「おわり」を実感させてくれるエンディングが読みたいものです。
私怨を晴らして終わり、まあ、それもありかもしれませんね。
【 ギルガメッシュ/石森章太郎 】
竜也(弟)と紀美子(姉)は、おじさん(何らかの研究者?)に呼ばれて、やってきました。
しかし、そこにいたのは、病に伏したおじさんと、「ギルガメッシュ」と名乗るクローン人間でした。
2人はギルガメッシュに事実上の拉致状態にされ、しかも紀代子は強姦されます。このため、紀美子はギルガメッシュを撃ち殺してしまうのですが、そこへゾロゾロと、撃ち殺したはずのギルガメッシュ9体が現れ、「我々10人のクローンのうち、1人の命が感じられなくなった。殺したのか?」と、二人は取り囲まれてしまいます。
こうして、竜也と紀美子は9人のギルガメッシュに歯向かう術もなく、逃亡を試みるも
失敗続き、召し使いのようにこき使われる日々が始まりました。
ギルガメッシュ達は「ある目的」のために、莫大な資金を必要としており、強盗や空き巣などやりたい放題。
一般人が混じってる方が怪しまれないからと、竜也まで悪事に荷担させられますが、この二人が謎の敵対勢力に襲われます。敵対勢力は、いわゆるUFOに搭乗しており、二人を抹殺するために追い回します。
最終的にギルガメッシュは死亡、竜也は謎の老人に救われたものの、研究所も破壊されます。研究所には地下シェルターがあり、彼らは難を逃れはするものの・・・。
竜也を助けた老人は、竜也の祖父でした。襲ってきた円盤族とは、長年に渡って抗争が繰り広げられており、最終決戦が近いことが祖父から告げられます。
また、ギルガメッシュ達と竜也らは同一の祖先を持つ仲間であり、喜代子のお腹には彼らの運命を左右するであろう超絶な力を持つ子が宿っているはすだと、老人は予言するのです。
ギルガメッシュにはいわゆる超能力があるのですが、同じ祖先を持つ竜也にも、それはあるはずです。しかし、普段、そういったものを、使うどころか意識もしていない竜也に、すぐ超能力が使えるはずもありません。
達也は円盤族との対決のために、訓練に励むことになります。
最終的な決着は描かれていません。ただ、円盤族が地球上の最後の砦としている場に、決戦を挑むために向かう、というシーンで物語は終決します。
その結果、「どうなるかわからない」を示唆する作品も決して少なくないのですが、「ギルガメッシュ」関しては、「圧倒的勝利」をおもい描く読者が大半でしょう。
全6巻。5巻を紛失してる模様。
(179-691)
【 エクセル・サーガ ③/六道神士 】
17巻ではエクセル社長の誘拐事件が発生します。誘拐されたのは、記憶をなくして四王寺家で保護されてる本物。誘拐犯が電話してきたは、六本松(一式)が演じる偽物のエクセルが執務するILL本社で、エクセル(偽物)はそこにいます。話が通じない状況です。
四王寺照葉を名乗り四王寺家に保護されてるエクセルには発信器がつけられいて、四王寺五条が完成させた人型ロボット六本木(2式)により、救出されました。 未来(過去の超文明をふくむ)超テクノロジーが、遺憾なく発揮されています。
さて、ある日突然、憔悴しきっていた蒲腐博士が、保障局の連中を集めて、盛大にパーティーを実施します。
秘書の百地が巧妙に公金と隠し財産を分離し、いざというときのために、博士の資金を、キープしていたのです。ここに、市街安全保障局は以前よりも強化復帰し、変身用のパワードスーツも復活、局のメンバーは危険な任務に就くことが再び予想される事態になりました。
ILL全店での商品無料配布を行わなければしかけた爆弾が爆発するとか、保障局のメンバーが一瞬にしてナントカレンジャー的なものに、変身できるグッズか開発されるとか、結論としてはテロリスト同士の勢力争いにほかならない?
さて、この辺りから話が実はよくわからなくなってきます。
六本松(一式)ではない本物のエクセルとエルガーラはアクロス本部へ向かおうとF県F市の地下通路(下水路など)を動き回りますが、アクロス本部への入り口がよくわかりません。四王寺博士はその、行動を六本松(2式)に尾行させますが、あまりのバカバカしさに頭を抱えます。肝心の保障局のメンバーは温泉旅行中、といった具合ですが、博士だけが進捗のない状況にイラついています。
そしてまたぶっ壊れた岩田人型アンドロイドに与えられたのか、六本松(2式)です。見た目が女同士ということで実咲に預けられますが、このあたりになってくると、アクロスも博士も四王寺も目的がバラバラ、利害の共通することだけ協力し、あとは、報酬の多寡による、というかんじですね。
岩田が実は四王寺の研究所で生存していて、一式や2式は身体は動かないものの脳波でコントロールしていたことや、実咲と四王寺のホットラインが実質機能していなかったことなどが判明、イルバラッツォの野望は進捗しつつも、エクセル、ハイアット、エルガーラの生活レベルはどうやら橋の下掘っ立て小屋レベルに戻ってしまっまようです。
その掘っ立て小屋のパソコンがナゼか起動し、アクロスメンバーに「待機せよ」との指示が下されます。
アクロスは、次の作戦のために準備期間に入るのだとか。
ギャグオンリーでバカバカしい展開が繰り返されるだけではなく、明らかに物語が進行していることがうかがえます。
単独行動に出たエクセルは、記憶喪失寺に四王寺照葉を名のって暮らしていた研究所に戻ります。不思議となんのセキュリティもなされておらず、簡単に侵入できたのですが、その先をどんどん、進んでいくと、息子である四王寺五条さへ立ち入りを禁止されたエリアにあっさり入ることができ、そこは蒲腐博士の秘密基地になっていました。 エクセルはそこで実咲たちに見つかってしまい、軟禁されてしまいます。下手な動きをするとセキュリティにひっかかるため、じっとさせておくためです。
ところがそこへ、ILL社長(つまり、偽物のエクセルであり、六本松一式)が乱入、戦闘力においても高性能ロボットであるはずの一式が、本物のエクセルに倒され、持ち去られてしまいます。
どういうわけか一式の主人(命令者)がエクセルということになり、橋の下の段ボールハウスが一式の手でどんどん改築され、流されてきたハイアットとも合流、イルバラッツォの行方は知れぬものの、3人による市街征服活動が再開となります。
その鍵を握る人物として、エクセルとエルガーラにより、美咲拉致を実施します。
美咲、エクセル、ハイアット、エルガーラの4人が揃った段ボールハウスに、2式に乗り移った岩田が乱入。四王寺の研究所では岩田本体が瀕死状態になります。2式から戻らないと岩田の命は今度こそ無い、という状態で美咲がなんとか状況を回避、ところが今度は、偽エクセルがハイアットをつれている所に渡辺が遭遇。戦闘用スーツの転送装置を作動させ、1式とのバトルが始まってしまいます。
現場にかけつけた美咲も同様に戦闘用スーツを転送、渡辺を止めることに成功しますが、「深入りを避けるのを諦めた」と宣言。
そして、物語は終盤に突入していきます。
市街安全保障局が新たに技術顧問として、四王寺美和博士を迎えました。四王寺五条教授の母親です。 美和女史が黒幕となって、最後の戦いっぽい戦闘が始まりました。
エクセル達が住む段ボールハウスが爆破されます。それを予期していたかのようなタイミングで、エクセルとエルガーラは、偽エクセル(一式)の引くリヤカーで剛速脱出。それを待ち受けるのが、ゴレンジャーみたいなパワードスーツに着替えた保障局のメンバー。蒲腐博士らは、その様子をモニターで観ています。(誰が撮影してんだ?)
ところが突然、蒲腐博士らのモニター回線が途切れます。そして、エクセルと美咲の間で交わされる会話。
蒲腐博士らの思惑から逃れるために、二人は事前に用意されていた芝居を打っていたことが明かされます。
しかし、美咲がそれを裏切らねばならない状況になり、美和博士が遠隔で介入、かけつけた四王寺五条にアクロスのメンバーは保護され、研究所で戦闘で被った治療を受けることに承諾、蒲腐博士には「逃げられました」と美咲が報告し、戦闘状態は一旦おさまります。
しかし、またもや発生するイレギュラー。人型ロボットである一式に、今度はエクセル本人の精神が取り込まれてしまいました。
この状態が続けば、魂の抜けた本体は死亡するようなのですが、ロボット体の中のエクセルは「銀河鉄道に乗る手間が省けた」くらいにしか考えていません。
要するにすべての大元、様々にあれこれ引っ掻き回してしるのは、この、おばさん(美和女史)と、容易に想像できます。イルパラッツォとも繋がりがあり、職階上の上下関係などはもちろんありませんが、美和女史にイルパラッツォが翻弄されてるような描写もあり、どう見てもイルパラッツォより上の立場です。
美咲と四王寺教授のホットラインか、あてになるのか、脆弱なのか、疑心暗鬼ににりつつある中、突然保障局を襲撃してきたエクセル(一式)と岩田が互角に戦えたことがきっかけとなり、蒲腐博士は再度、イルバラッツォの基地探索のために、地下への出動の命令がします。 全体の様子を俯瞰している四王寺美和によって、下水道の鉄砲水発生や、アクロスと、保障局のメンバーの精神状態への介入など、色々なされますが、とにかくみんな、しぶとい。
アクロス本部基地への潜入、戦闘、通信回路途絶によるバックアップの喪失、一部期待の人員の五条による回収、そして、出口が喪失したことにより基地内に残されたメンバー(アクロス、保障局側双方)の、事実上の捕虜状態と、物語はどんどん混迷していきます。
ここに来て、よりハッキリと読者に示されてるのは、全ての元凶は、四王寺美和である、ということでしょう。 イルバラッツォ2体がどこかで会話を交わしていたり、六本松2式が、閉じ込められてるはずの基地の連中に、どこからか物資を供給していたりと、何も動いていないようで、何かが動いています。
閉じ込められた地下基地の温度上昇や酸素の低下など、生命維持に危機的状況が発生しかける中、各々が誰のために、何のために、このような、状況に追い込まれたのか、考え始めます。
基地が解放され、脱出可能となてからも、納得できないまま逃げ帰ることなんてできるか、そんな気持ちを持ち始め、仕掛人を追い詰めてゆくのです。
仕掛人は四王寺教授の父で行方不明になったままの四王寺天満宮、そして、その期待は母である美和の姿をした六本松3式。
イルバラッツォの市街征服の放棄宣言、AI機能と無限のエネルギー供給機能を兼ね備えた「核(コア)」を備えた3式さえ手に入ればもうそれでいいという四王寺教授の本音などなど、様々な想いが交錯します。
さて、いよいよ最終27巻です。雑誌掲載時から修正されてるとのことで、さらに加筆も50ページとのこと。Wikipediaによると「ギャグマンガ」という分類にしかされてませんが、もうここまでくると立派なSFです。
地下基地内で、それぞれの想いに決着をつけるべく行動を起こす面々。地下の様子をモニターしていた四王寺五条の言葉を借りると「全員生還の為、迷わず賭けに出るとは頼もしいキレっぷりですよ。どんなカードを引いたのやら・・・。バーストしていないとよいのですが。あの『扉』の中にみえたもの・・・。あれは、『核(コア)』ですね?」
四王寺五条が語りかけてる相手は、同じくモニターしていた蒲腐博士です。
イルバラッツォに乗り移っていた四王寺天満宮(四王寺五条の父)が去り、三式が登場して基地を消し去る宣言をしす。
そして、床が崩れ始めます。一同、一斉に逃げ始めます。
とりあえず、生還!
【 エクセル・サーガ ②/六道神士 】
さて、物語の紹介もスピードアップしていきましょう。
保障局のメンバーは公務員ですから健康診断があります。それで、岩田が全身癌に侵されてることがわかり、間もなく死亡。しかし、脳だけは生きてる状態だったので、人型ロボット六本木(一式)に移植され、アンドロイドとして蘇ります。ただし、戸籍は死亡扱いで、保障局の備品として取り扱われます。
一方、エクセル達はイルパラッツォから活動資金として1000万円が入った通帳をわたされます。しかし、印鑑がなく、暗証番号もわからないため、お金がおろせません。落胆して帰宅すると、アパートが火事。通帳は手元にありますが、印鑑は燃えた模様。橋の下に作った段ボール小屋での生活が始まりました。
しかし、どこからともなく現れた男性が、前のアパートの大家からの依頼を受けて、新しいマンションの部屋を提供します。結局、保障局のメンバーも同様の待遇を受けて、つまりは一ヶ所に集められてる状況が維持されてるわけです。
新しくあてがわれたマンションは何かの寮だったらしく、各部屋や備品まで同じ仕様。ベランダから裏の風景には、なんだかよくわからない施設がどうやら放棄されたままになってるらしいものが見えます。蒲腐博士のいつまでも成功に至らない実験施設だったようです。
このマンションからもメンチは逃げようとしますが、エルガーラに捕まってしまいます。最初は怯えますが、散歩に餌やりなど、世話を焼いてくれてた人だと気づいて、やたらとなつくようになります。
イルパラッツォからは「征服宣言」をするようエクセル達は命じられ、メガホンを持ち町中で演説を始めるというバカバカしいことをしますが、そこにサイボーグといて甦った岩田が登場。他の保障局のメンバーも自動で着替え(変身?)させられており、まるで科学戦隊○レンジャーのようなコスチュームにさせられています。が、蒲腐博士の気まぐれで撤退。
客の来ないスーパーの屋上でアクロスの喧伝を行うことになったエクセルとハイアットは、そのハイテンションで店長をおかしくさせてしまい、7割~8割引とうい常軌を逸したセールを実施させ、満員にしてしまいます。
そして、屋上のイベント会場で、ハイルイルパラッツォの斉唱をまさに実施しようという瞬間、ナントカレンジャー風衣装で保障局の連中がなだれ込み、威力不明の銃でスーパーを崩壊させてしまいます。どのみち閉店・取り壊しが決まっていたからまあいいや的な保障局の連中。本当にそれでいいのか?
エクセルのアップです。こうして見ると、相当の美女ですね。
はい、これは蒲腐博士の日常執務の様子。 こんな、紹介の仕方でいいのか? でも、あらすじ語ると長くなりすぎるので、省略だ。
こちらは、四王子五条の母親で、少し頭のおかしい、けれど優秀な科学者です。
ある日、四王寺五条の研究所の電源がすべてダウンします。長い間、留守にしていた母、美和の帰宅の挨拶代わりの悪戯だったようです。この人がまた、物語をぐちゃぐちゃにする1人として加わります。
町中では、ローカルテレビ局が新年の街頭インタビューが行われていたのですが、アクロスの3人娘がこれを、ジャック。プロパガンダを、始めます。
と、その時。ビル10階ほどの大きさで、イルパラッツォの3次元映像が突如現れ、市街をアクロスが支配することを宣言。スクリーンもなにもない空間に3次元映像を投影する技術力なんかもっていたのか? このマンガはギャグではなくSFなのか?
その姿を感慨を持って眺める蒲腐博士。やはり2人は知り合いのようです。
かい 直接対決の時が近づいてきました。市街安全保障局のメンバーが召集され、博士からアレが敵対する組織であると、宣言を受けます。実咲は「その話、きいてから後戻りはできるんでしょうね?」と質問し、聞こうが聞くまいが後戻りできないことを悟ると、今度は渡辺が「俺たちは地方公務員だよな?」と訊きますが、博士は「表向きはな」としか答えません。もう、どうにも対決はさけられそうにありません。
そして、ついに、博士とイルパラッツォの因縁が語られます。
2万数千年前、超科学力で栄華を極めたソマリアという地上唯一の都市が壊滅。生き残ったのは数名。博士もその1人。その文明のかけらをひとつずつ捜索して消し去ることを贖罪として生きてきた。しかし、それに反対する者もいた。それがイルパラッツォなのだ、と。
ここまで話を聴かされて、もはや逃げ道がないとだと悟った保障局のメンバーは、「せめて給料を上げてくれ」と嘆願、博士に「前向きでよろしい」と誉められ、いよいよ戦いは泥沼化していく、かもしれなくなってきました。
備蓄非常食の立場を免れられないメンチ、とうとうお節になってしまいました。
一時的に記憶喪失になったハイアットが渡辺と新婚生活をしたり、温泉でくつろぐ蒲腐博士の旅館で殺人事件が発生して犯人扱いされたりするうち、ガス爆発で住むところ失ったエクセルとエルガーラは冬の閉ざされた海のいえに身を隠していました。ところが、ゴムボートで密漁にでかけて遭難、しかし軍艦に救助されます。その軍艦のオーナーがまたしてもスキンヘッドのペンションオーナー。支配人がメーテルに似た人。高級船上ホテル開業準備中とかで、まだ、武装解除が十分ではなく、おまけに救助されたはずの軍艦も故障して漂流中。こりゃあもういかようにも、なりませんな。
イルパラッツォに迎えにこられて記憶を取り戻りしたハイアットはアクロスに戻り、エクセルとエルガーラは海上収容所に収監されます。これまで2度ほど入管でつかまってますが、今度は脱獄できそうにありません。
収容所に向かう船から海に逃走、トカベンの山田太郎に似た孤島に住む神様に助けられ、そこへイルパラッツォが、迎えにきます。
転送装置みたいなハイテクでアクロス本部へ連れ戻されるのですから、20000年以上前の超ハイテク都市がどうこうという蒲腐博士の与太話も、妄想による作り話ではないのかもしれません。読者はどんどん世界観の理解を崩壊させられます。
ただし、連れ帰られたのはエルガーラのみ。エクセルはサバイバル生活を余儀なくされます。さらに、六本松(一式)がイルパラッツォにより奪取され、外装をエクセルに換装されて、なんとILLという電化製品量販店の社長に。
エルガーラたちも(役員として?)優雅な生活を送っていましたが、政治絡みの汚職の操作を命じられます。
古い権力を椅子からひきずりおろし、ついにイルパラッツォが地方政治をも手中にすべく、動き始めるのです。
蒲腐博士はイルバラッツォ率いる電気量販店ILLグループを潰しにかかります。しかし、スパイとして送り込まれるはずの保障局のメンバーはバイト面接で全員不合格。博士参加の量販店で値下げ攻勢をしかけて勝負に出ます。
遭難していた本物のエクセルは、四王寺五条の助手で姪の「うみ」が研究所に匿って住まわせ、事態を結果としてややこしいことにしてしまいます。
イルバラッツォと正面戦争を決意していた博士は、その準備のために独断で使用した公金を使途不明金と糾弾されて、あっという間に凋落。保障局も空き地のプレハブに移転、ドブさらいや街灯交換の仕事に精を出さざるを得なくなります。
博士が落胆衰弱しているのに、保障局のメンバーは「30分以内に大食い(多分お好み焼き10人前程度)に成功したらタダ、という企画にチャレンジじす。挑んだのは、アンドロイト岩田と住吉。住吉はりタイヤしますが、岩田は成功します。只し、胃袋が破裂して、メンテナンスを受けねばならない羽目になりました。
かい その頃蒲腐博士は、憔悴しきった身体で、四王寺天満宮(五条の父)との出会いを邂逅していました。
彼の技術力の高さを認め、過去の超文明に存在したとされるブラックボックス(桁外れの演算能力と無限のエネルギー出力を持つ、後に彼らが核(コア)と呼ぶことになるもの)を提供しました。
これが六本松の原型なのです。
(つづく)
【 エクセル・サーガ ①/六道神士 】
腐った世界を是正するため立ち上がったイルパラッツォ。理想推進機関アクロスを立ち上げます。しかし、いきなりの世界征服では愚民がついてこれないと判断し、まずは1国、いやいや、もう1歩踏み込んで、まずは市街征服に乗り出します。
読み返してみて、最初は「某」と表現されていたことに改めて驚きましたが、場所は明確で、福岡県福岡市です。
アクロスの構成員は1名。エクセル(コードネームであり、エクセルは日本人)という若い女性です。さっそく市街征服のための命令を受けていたのですが、エクセルは携帯電話でバイト先から急遽の呼び出しを受けます。
バイト先は、工事中の道路における交通整理。しかし、誘導に失敗して大事故が発生、クビになります。
新たに新聞配達のバイトを始めますが、初日から大雨。流されてきた子犬をエクセルは非常食として捕獲、以後、一緒に暮らすことになります。
イルパラッツォは、新聞の求人広告でハイアット(コードネームであり、ハイアットも日本人である)という人員を新たに雇用しますが、健康状態の確認を迂闊にも怠ったため、彼女は出社初日に目の前で血を吐いて倒れてしまいます。病院に通っている様子は描かれてないのですが、常に大量の薬を常備し、飲み続けています。
さて、彼女たちは社宅と称するアパートで一緒に暮らし始めます。
次に受けた命令はごみ問題の調査です。ちょうど燃えないゴミの回収日だったため、エクセルとハイアットは、貧乏のため所持していない家電製品の収集に精を出します。
しかし、何らかの原因でゴミ集積所から火災が発生、たまたまそばにあったポリタンの液体をぶっかけて火災の鎮火に協力しようとするエクセルですが、ポリタンには「ハイオク」の文字が。
取り急ぎ脱兎のごとく去り、戦果(カラーテレビ、掃除機等)をアクロス基地に報告するのでありました。
ところで、F県(福岡県)F市(福岡市)に設立された「市街安全保証局」責任者である蒲腐博士は、悩んでいました。巨額の(多分)予算を投じてせっかく設立した安全保証局にも関わらず、敵対者がいないのです。そこへ、アクロスが「市街征服」の予告チラシをタイミング良く撒いてしまいました。
これを敵と認識した蒲腐博士、さっそく市街安全保証局を始動。といっても、どうやら人員募集をようやく始めたらしいことが、あとでわかります。
エクセルとハイアットがコンビでバイト中に、イルパラッツォから緊急呼び出しの電話がかかってきました。
シフト交代にまでまだ時間があり、緊急呼び出し応じれば職場放棄となって、クビ間違いなし。仕方なく2人は自主的に現物支給を受け取りアクロス基地へ。そこでイルパラッツォから告げられた緊急事態は、「身近な所に敵がいる」ということでした。
そりゃあそうでしょう。同じアパートに住む渡辺、岩田、住吉の3人が、蒲腐博士の配下にはいることになるのです。ここに大学時代の岩田の同級生である松屋美咲が加わります。
その時、イルパラッツォと蒲腐博士は、お互いの存在を「敵」として、認識し始めていたように思われます。
さて、市街安全保証局の職員として採用された渡辺、岩田、住吉、松屋の訓練がはじまりました。場所は山中の秘密研修所。新開発(出力不安定)のレーザーガンでの射撃訓練や、地雷源の突破など危険な訓練もふくまれます。
エクセルとハイアットは、その秘密基地へ「お届け物(時限爆弾)」を運ぶ命をイルパラッツォから受け、現地へ向かうのですが・・・。
屋外で訓練中のため研修所は無人、研修生のために設置された「訓練コース」の表示を、イルパラッツォが自分たちのために用意したものと勘違いした彼女たちは、地雷源へ突入。無事(でもなかったが)突破し、ゴールへ。
そこが最終目的地とまたまた勘違いしたエクセルにより、時限爆弾のスイッチが押され、結果として山がひとつぶっ飛びます。
しかし、市街安全保証局のメンバーは、出力不安定なレーザーガンの危険性を考慮し訓練を一時中止していたため、時限爆弾の被害は皆無。
方法は不明ですが、状況をイルパラッツォは把握しており、「あの威力で、なぜはずす?」と、作戦失敗に頭を抱えます。
こうして、秘密結社アクロスと、福岡県福岡市市街安全保証局との、長く激しい(あまり激しくない時も結構多い)戦いが始まるのです。
ところで、そもそもエクセルもハイアットも、アクロスから活動資金などは出てないようで、いつも生活苦ネタが出てきます。
選挙事務所でバイトをしたり、ほぼPHSが当選する(つまり契約者を増やす)バイトをしたり。イルパラッツォの命令でニセ看護師として病院に潜入したり・・・、いや、これはお金にすらなりませんね。
3巻のラストになって、ようやくアクロスと市街安全保障局との直接対決と時が来ます。とにかく地下に入って調査せよと蒲腐博士に言われて出動した岩田達、アクロス本部に鳴り響く侵入者を知らせるアラート。
侵入者を阻止するための装置を作動させるレバーやスイッチ類のある部屋で、適当にいじるエクセルと、最終的にその謎の地下道に水が押し寄せる装置の作動により海岸まで押し流されて窮地を脱した保障局のメンバー。
とりあえず引き分けという所でしょうか。
勝負は引き分けですが、その「趨勢」は微妙です。振り込まれた給料をおろしたとたん、ハイアットが銀行強盗に人質として拉致されます。エクセルが救出に向かい、強盗犯をトラウマに陥れいれてハイアットを奪還しますが、もちろん、市街安全保障局との小競り合いとは、関係ありません。
保障局にはショートヘアーの美人秘書、百道が加わります。有能なのは確かですが、完全に蒲腐博士の趣味人事。アクロス対策になるのかどうかは未知数です。
なんだかよくわかりませんが、テレパシー的ななんらかでお互いの存在を認識したイルパラッツォと蒲腐博士の対立は続きます。アクロスは2度目となる爆弾を用意しました。前回は送り届けてからスイッチを押してカウントダウンが始まるタイプの時限爆弾だったようですが、今回は既にタイマーが起動しており、所定の時間までに所定の場所に届けるよう、エクセル達は命を受けます。
しかし、道に迷い、間に合いそうもありません。
一休みしながら対策を考えている最中に、ハイアットが吐血。地面に置かれたアタッシュケース型のそれは、血みどろになります。往来に存在するものとして、それはきわめて怪しい代物に見えます。
しかし、保障局には、新兵器が導入されていました。コンピューター工学の第一人者四王寺五条によって製作され、「六本松」と名付けられた人型ロボットです。超ハイテクAIが搭載されており、時限爆弾の解体・無力化も可能。ただ、納品前にアクシデントがあったため、爆弾の解体に失敗、大爆発を引き起こしてしまいます。
六本松の機体(後)も崩壊したため、とりあえず六本松2式(前:フルスペック装備になっていないため、軽量である)で、納品しなおされました。
その六本松の歓迎会の会場となったのが、こともあろうに、また、エクセルとハイアットのバイト先のステーキハウスです。
牛をバラしてこいと店長に命を受けたエクセルがそれに失敗、店外に逃げた牛を避けるためにハンドルを切ったトラックがステーキハウスに激闘。全てがまた終わります。なにもかも台無しになるのが、この作品の本領なのです。
同じ街に住み、いや、同じ街どころか同じアパートに住んでるわけですが、保障局とアクロスは常に微妙な接点があり続けます。
花見のエピソードは省略して、鳥人間コンテストのお話。優勝賞金100万円に目がくらんだエクセル達はこれに出場するのですが、会場係に保障局のメンバーがかり出されます。
結果、エクセルは優勝しますが賞金をもらい忘れたまま帰宅、ハイアットはそのまま魂が天に昇ってしまいそうになります。メンチも犬用の機体をエクセルから授かって参加しますが、「鳥犬コンテスト」ではないので失格。そのままどこまで飛んでいったのかわからなくなってしまいます。
優勝賞金の行方は漫画の中ではドサクサに紛れてどうなったのかわからないままですが、とりあえずエクセルたちは次のイルパラッツォの指令に従い、新たなアクロスメンバーがいるらしいペンションに向かいます。
そこでも新人パートと間違えられてコキ使われますが、3人目の隊員であるエルガーラも何故か従業員として働いており、お互いに張り合って仕事をします。また、この断崖絶壁の上にあるペンションで、メンチとも再会。こんな所まで飛んできてたんですねえ。
ちなみに、このペンションのオーナーは雪山のスキンヘッドのオーナーと同一人物で、支配人としてメーテルそっくりな新たなキャラが登場します。
そして、このペンションもまた、火事で無くなってしまうのでした。
(つづく)
【 猫mix幻奇譚とらじ/田村由美 】
勇者パイ・ヤンは、人語をしゃべる猫、とらじと旅を続けていましまた。
とらじはもともとは息子パイ・ヤンのペットなのですが、悪いネズミに術をかけられ、猫mixにさせられてしまったのです。おまけに息子はさらわれて…。
そんなわけで、パイ・ヤンは息子を取り返す為、とらじは普通の猫に戻る為、その悪いネズミを探し求めて旅をする、そんなお話しです。
同じ作者の「7SEEDS」と、姉妹誌に同時連載のようで、作者としては趣の異なる作品に手を出せて良いペースで描かれているのかもしれませんが、とらじの方は、あまりにも自由な世界観(パタリロやアタゴオルに匹敵すると思います)に、「いやもうその辺にしといてもらわないと・・・」な印象をもちました。
・・・とは、「世界観が深まりすぎて、思考がおいつかないんですよ」等々です。なので、六巻が限界でした。
(077-659)
【 ゆるキャン ②/あfろ 】
野外活動サークルのメンバーにリンちゃんを加えた一同、伊豆キャンプは目前に迫ってきていて、彼女たちは準備に余念がありません。あくまでキャンプ、すなわち野営が目的ですが、グループ旅行というか、観光とかグルメの要素もアリアリで、そのための資金調達バイトにも一生懸命です。高校生が、やりたいことをやるために、バイトに精を出しつつ、着々と準備を進めるというのは、とても好感が持てます。いきなりキャンプ場に到着して、キャンプ本番を始めちゃう、などというお話になっていないストーリー構成も、いい感じです。
あおいの妹のあかりが同行することも、顧問の酒好き鳥羽先生に了解をもらい、先生も7人乗りの車を調達します。でも、りんはいつものソロキャンと同じく、原付スクーターで現地まで走りたいと申し出て、これも顧問からOKをもらいます。そして、キャンプの日まで、まさしくカウントダウンが始まりました。
りんの家では、壮行会(みたいな夕食)が開かれます。祖父も父も母もバイク乗りで、主に祖父の手によりスクーターの整備なども行われ、野クルメンバーより一足早く、真夜中に出発します。祖父が途中まで同行。なかなか渋い熟年ライダーです。バイクに乗ったことのある男性なら、そのカッコ良さというのも理解できるでしょう。
一方、野クルメンバー+あかりの一行は、先生が運転するワンボックスで、伊豆へと向けて出発します。テーマは「伊豆のジオパークめぐり」と「伊豆の食材をキャンプめしで味わう」だと宣言して、意気揚々。でも、車に乗ったとたんに居眠りを始めるメンバー。一人旅を続けるリンは、大瀬崎やビャクシン樹林などを観光します。車メンバーもワサビアイスを食べたり、ループ橋を通過したりして、その後、河津桜見物の渋滞にひっかかったりします。やっと目が覚めたなでしこは、「2日間眠りっぱなしで、もうキャンプを終えて帰るところ」だというタチの悪い冗談にひっかかったりします。
車班とバイクのリンも合流して、金目鯛の干物と伊勢海老の干物をゲットして、目指すキャンプ地に到着しましたが、「ここはキャンプ禁止になりました」との情報を現地で初めて知り、茫然となります。夏場は禁止されていたものの冬場はOKとのことだったのですが、地主さんの意向で冬場もダメになったとか。キャンプが流行するにつけ、マナーの悪い人が大挙し、無料のキャンプ場がどんどん閉鎖になっているというニュースを聞いたことがありますが、この漫画にもそういう社会現象の一端を語らせているのでしょう。
地元の知り合いの方にキャンプ場を紹介してもらい、宿泊場所も確保。日帰りできる温泉を検索して立ち寄った所、先生がビールを飲んでしまって、キャンプ場まで運転代行を頼む羽目になり大散財、というオチで8巻は終了です。単行本1冊かけて、まだテントも張っていない? いや、旅というのはそういうものですよ。
僕がこの作品を好きなのは、こういった旅の要素が描かれていて、キャンプだけではない作品になっているからでしょうね。
(239-985)
【 ラディカルCC(カップルコップ)/中垣慶 】
野浦凛(女)と芳賀吉樹(男)の2人の刑事を中心にした刑事もの漫画です。
お会いしたことはありませんが、従姉妹がアシスタントをやっていたので、親近感あります。でも、アシスタント云々というのは後日知ったことで、少年キングに連載をいくつかされてて、ずっと好きな作家さんだったんですよ。
一通り読み返してみないとわかりませんが、多分「お願いアルカナ」という作品が一番好きかもしれません。
ラディカルCCは、2話目のラストで2人が県警直属の特別捜査官への転属がつげられます。ここからがおそらく本編ですね。
ジャッキー・チェン(だったはず)のファンで、アクションシーン大好きの先生ですから、第3話はもうまさしく、最初から最後までドンパチです。
相手は女子供7人を既に銃撃で殺しており、銃弾を打ち込まれた警官も1人や2人では済まない。海外への高跳びを計画していて、捕まえるチャンスは今しかない。
警察が来てると知れば容赦なく撃ってくる(しかも、漫画に出てきたの、散弾銃やんか!)。裁判になれば死刑か終身間違いなしだから、自分の身を守るためには容赦なく急所を撃て、死にたくなかったらためらわず撃て。
これが芳賀から凛へのアドバイスでした。
銃撃戦では先に芳賀刑事が右肩を撃たれ、凛ちゃん一人で犯人を制圧しなくてはならなくなります。が、その時、凶悪犯の後方上部から、「こっちだ!」と、芳賀が声をかけます。その左手には、拳銃が。
凶悪犯は「その距離で左手で当たるわけがない」と小バカにしますが、それを当てちゃうのが芳賀刑事。
実は芳賀も凛も拳銃の名手で、署内の射撃訓練所でしょっちゅう現金をかけて勝負(訓練)しているようです。いや、現役の警察官が現金かけたら、アカンやろ?
それはともかく。
銃撃戦だけでなく、中垣先生の格闘シーンが素敵です。まっすぐ伸びたキックが相手に綺麗にぶちこまれるシーンなんか、惚れ惚れしますね。余計な効果線とか、ナシ!
「なんかパワフルそうな攻撃だな」みたいな背景も演出もナシ。ただ一撃、ズドンと決まるんです。これが大好きです。
ただ、わざと押さえ気味にされてるのか、絵のタッチが他の作品に比べて、癖が少ない、というか、柔らかいです。他の作品なら、「これ、中垣先生の絵だ」ってすぐにわかるんですが、ちょっとわかりにくいですね。
全2巻。両方所持してます。
(176-653)
【 本気(まじ)外伝 クジラ/立原あゆみ 】
本気は本編50巻の他にいくつかの続編がありますが、こちらはまさしく外伝。本気とは別組織(といっても同じ風組傘下)の元組長クジラが、本気にまつわる思い出話を語るという構成です。
クジラが語るのは過去のことですが、時系列は現在で、現在を舞台にしたいくつかのエピソードも出てきます。
クジラは「極道の食卓」の主人公で、こちらは読んでないのですが、「本気外伝クジラ」は、両方の後日談であり外伝である、ということなのでしょう。
クジラ本編は所持していませんが、「本気外伝クジラ」のトーンはおそらくクジラ本編を踏襲したもの、登場エピソードは本気本編と続編の後日談を含むもの、てな感じのようです。
雑誌連載作品ですから、本気本編を未読の人でもそこそこ読めるものに仕立てないといけないんだろうなとは思いますが、実際に本気を知らない人がどの程度この作品を楽しめてるのかはわかりません。なにしろ、私は本編と全ての続編を読んでますから。
でも、正直なところ、本気の続編こそを読んでみたいところですね。
(175-651)
【 魑魅(すだま)/小山田いく 】
何と名付けたらいいのでしょうか。小山田ヒューマンホラー、とでも言いますか、実に独特な世界です。
ある意味変人の東森という男子が部長をつとめる生物部には、地下室があります。そこには、様々なホルマリン漬けの標本など、不気味なものが類々と管理保管されています。いわく、カッパ、ムジナ、猫又、龍、人魚……。
それらは果たしてホンモノなのか、それとも、民話や伝承に基づいてでっち上げられた別物なのか。
ある日、この生物部に、交通事故でぐちゃぐちゃになった猫の死体が持ち込まれます。弔う前に、元の猫の身体に戻してやってほしいとの依頼に、東森はそれを引き受けます。しかし、完全に破壊された足はもはや復元が不可能。そこで東森は、ホルマリン漬けになっている猫又の足を利用して形を整え、復元された猫と、猫又といわれてホルマリン漬けになってる実はなんだかよくわからない生き物を、一緒に葬って遣ることができればと考えたのです。
猫の死体を持ち込んだのは、心優しい少女。しかし気弱で友達がなく、パシりにさせられたり、いじめの対象にされるのがわかっていながら、寂しさのためにその不良グループの一員となっていました。
その少女に猫又が乗り移り、不良グループに幻覚などを見せます。それは、いじめられることで鬱積し抑圧された想いの解放なのかもしれませんね。いじめをしていた連中は、その幻覚の世界の中で、身を守るために所持していたカッターナイフで、幻覚の化け猫と戦います。しかし、正気に戻った彼女達は仲間同士で切り合いをしていたことに気づくのです。
純粋のホラーやオカルトというわけでもなく、少女の屈折した気持ちが産んだ心の中の化け猫によって催眠能力が覚醒し、自らが生んだ幻を見せつけていたのではないか。東森はそんな解釈をしています。
生物部に所属している部員は1人。専女摩未(とうめまみ)という1年女子です。変人の東森部長と、結構良いコンビを醸し出しています。この2人が、ちょっとオカルトちっくで、ちょっといい話を、紡いでいきます。基本的に1話完結の読切形式。第1話と最終話だけが前後編の構成です。
第1話の「猫又」の他には、河童にまつわる話、人面疵、ホルマリン漬けになっていた正体不明の内臓群、死体から生まれて飛び立つ地獄蝶、餓鬼、人魚なども登場します。ホラーっぽい演出でも、単に怖い話しではなく、結局人の心に巣くう黒い部分が魔を呼んでいるんだ、ということを示唆しながらも、民話や伝承上の架空の生き物や妖怪や魂といったものを、全否定しているわけでもない、時には人を暖かく見守っている…。そんな小山田ホラーなんだと理解しています。
動物に食べられて、消化されずに排泄されてから、芽を出す植物のエピソードもあります。時間と場所を超えたロマンチックな話だったりするのですが、摩未が植物温室の中で野糞をしたから発芽したこと東森が見抜いてしまうという、ウンコネタのギャグなんかも散りばめられています。
どちらかというと事件絡みの話が中心の展開で、刑事なんかも出てきたりします。不自然さや違和感はないのですが、刑事ものっぽくなってくると、東森は高校生にしては随分おとなびているようなキャラです。
最終話の「怪画」では、画家のモデルとしてアトリエにやってきた女性が次々と行方不明になる事件の謎解きが行われます。化物じみた面相の人間か妖怪かわからないモノが登場して、摩未も活躍します。人の顔の皮を剥いで絵を描くキャンバスに使うというおぞましい事実を東森が突き止めます。
ラストシーンは、どうやら東森と摩未が恋人同士になりそうな予感を漂わせて、物語は終了です。
全2巻なのですが、1巻だけしか手元には無く、後に1冊にまとめられて復刻したブッキング版(それも古書)にて読了。これには「下闇の香り」という読切と、創作裏話的な「1968年の標本ビン」(描き下ろし)も収録されています。
(162-619)