【 バターナッツ/犬上すくね 】
若い男女の同居のものラブコメです。これはもう確立されたパターンですね。でも、このパターンを使うにはふたつ問題があります。
ひとつ。なぜ、同居することになったか? 読者に顛末をちゃんと提示できるか?
ここで読者に無理矢理感やご都合主義を感じさせてはダメですから、難しい所だと思います。
「バターナッツ」の場合は、ルームシェア。募集する方も応募する方も、男女を取り違えてた。確認が不十分だった。これが原因ですが、片方はガラケーのため写真のデータサイズが大きくて開けなかったとか、男女の同居を拒否して別の場所を改めて探すという選択肢が困難な状況をあらかじめ仕込んであるなどがなされています。
もうひとつは、ストーリー展開。当たり前ですけどね。作者あとがきでも、脇役の台詞にもありますが、ひとつ屋根の下で若い男女が同居というシチュエーションなら「押し倒し放題」という発想がでてきて当然です。
押し倒し放題という設定(2人は恋人同士)の作品の方が主流に思える犬上先生の作品(なので、イチャイチャシーンも結構あります)ですが、「バターナッツ」は初対面同士。そう簡単に押し倒してしまったらお話はおしまいです。
主人公の「りょう」と「千聖」は、共用部分ではテープまで貼って「はみ出し禁止」にしてしまうほど、ドライな関係になってしまいます。これでは、押し倒し放題とはほど遠いですね。だから、面白いんです。
しかも、2人は同じ大学で、さらに同じサークルの先輩と後輩。学年が違うので講義は別でしょうけど、生活とサークルは一緒。なかなか気まずいです。
この話の流れだと、それぞれが別の恋愛をすることになっても全然不自然じゃないんですが、まあ最後はくっつきます。
単行本2冊分の分量で、妙に変な要素を入れて長くひっぱったりせずに、一気にストーリーが進行する。悪くありません。
(1-2)