漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 お願いアルカナ/中垣慶 】

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 ミナト 山の手 坂の街
 白い壁の占いの館へ ようこそ

 GIFT SHOPアルカナでは お守り おまじないグッズを取り揃え
 占いの家Arcanaでは 各種占術をあやつる優秀な占い師がひかえております
 あなたの心の秘密の扉を開いてみませんか

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 神秘的な衣装でルーン占いをする佐倉は、先輩占い師から、「短期バイト? マネージャーから本採用くどかれるなんてスゴイことなのよー」と、言われますが、「家にも学校にも内緒なんです」

 佐倉の父親も占い師で、街頭易者をやっていましたが、難病で入院していて、いずれアメリカに渡って、治療しなくてはなりません。その費用を補うためのバイトです。

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 そのため佐倉は学校を休みがちだったので、転校生の木葉とは初対面。女の子にモテるためのツールとして、遊びで占いをやっていたのですが、佐倉にタロットカードを扱わせたところ、「自分より腕は上」と、直感します。あとでわかるのですが、佐倉には「何かを見通す能力」もあります。

 佐倉はアルバイトの占い師ですが、木葉は既にプロの占い師として、占いの館「アルカナ」で働いています。母親はテレビなどでもひっぱりだこの占い師であり、霊脳者でもあります。その母親が経営するのが「アルカナ」です。転校してきたばかりで木葉は佐倉が自分の店でバイトをしてるとは知らなかったのです。

 ある日、佐倉の女性客が占いの途中で、逃げ出してしまいます。それを止める佐倉。佐倉は叫びます。「行かせちゃいけない。死んでしまう」
 木葉は店を飛び出しますが、その女性の姿はもうありません。
 佐倉はこのとき、「何かを見通す能力」を発露するのですが、木葉には佐倉のその姿が全裸に見えます。周囲の人々からはそうは見えないようで、佐倉と木葉はそれぞれ感応・共鳴するようです。

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 おかげで、その女性客の自殺をとめることはできましたが、一方で東京店の従業員が裏切って、マスコミに「アルカナの占いはヤラセ」だと垂れ込み、お店はピンチに陥ります。

 元は木葉の母も街頭易者でしたが徐々に客がつき取材を受けるようになり、出版社のすすめで本を出したりするようになります。ある時、テレビで有名人を占ったところ的中、霊脳者だと評判になり、あとに引けなくなりました。木葉はそんな母親から女手ひとつで育てられ、また占いの技を叩き込まれたといいます。

 作中では、腕のたつタロット占い師という設定ですが、それでも佐倉の「予知能力」が羨ましいといいます。
 佐倉は、ルーン占いは誰でもが持つ潜在予知能力を発現させる占いのひとつであり、そういう意味ではタロットも同じ。ただ、時々、強い想いが伝わったときに(未来が)見えるのだとか。

 佐倉は木葉の手を握り、「お母さんのことを強く思って」と言います。すると、ふたりの姿はお互いに全裸状態に見え、同時にテレビ局で葉桜木霊(木葉の母の占術師ネーム)が事故に会うシーンを2人の前に浮かび上がります。

 この予知を電話で木葉は木霊に知らせ、木霊はテレビ局で、リハーサル中のスタッフに「逃げろ」といいます。そこへ天井から照明が落下してきたのです。

 リハーサル中でしたが、機転を利かせたディレクターがカメラを回せと指示しており、「ヤラセを追求するはずだったその番組」は、木霊が霊脳者であることを証明することになってしまいました。

 おかげでお店は再び繁盛します。
 新たに、香川という水晶占いの男が加わります。占いの腕は1級品ですが、女癖が悪く、お金持ちのお抱え占い師だったのが暇を出されてしまったところを、木霊に拾われてアルカナで仕事をすることになったとか。
 野心溢れる男で、いつまでも雇われ占者をするつもりはなく、アルカナを足がかりに独立するつもりのようです。
 
 そこへ、付き人までいるという上流階級のご婦人がやってきて、一騒動起こります。このご婦人こそが、香川をクビにしたお金持ちだったのです。気に入らなくなったお抱えの占い師をクビにして、違う占いを求めてアルカナにやってきたら、クビにしたはずの占い師がそこにいたのですから、気分も悪くなろうというもの。ひと悶着あって、帰ろうとするのを、木葉がひき止めます。

 木葉は彼女のことをある程度言い当てたため、彼女から信用を得ます。そして、過去(本当の悩み)を打ち明けます。自分には一緒に暮らしている女の子とは別に、男の子の子供がいた。でも、事情があって、赤ん坊の時にその男の子を他人の手に委ねた。その際に、「探さない。忘れる」と、約束した、と。木葉はスプレッドを変えてもう一度リーディングしましょうかと提案しますが、婦人はそれを断り、代わりに名刺を渡します。「一度、いらしてください。ぜひ顧問としてお招きしたい」と。

 木葉は、アルカナの経営者である母親に相談し、母親は「いい修行になるし、高給優遇だろうから」やってみればいいと言います。
 木葉は、それならと、佐倉と組もうと思い付きます。佐倉が父親の手術の費用を稼ぐには、絶好の機会と考えたのです。
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 そんな時、木葉は同級生の男子から、恋愛相談をもちかけられます。好きな子がいるので、占術でなんとかならないか、と。木葉は自分の口で伝えろと断ります。
 恋愛の相手、水上優香は大の占い嫌いで、そのやりとりの場に出くわしてしまったために、彼女に想いを寄せる同級生も、木葉も思いっきり嫌われてしまいます。
 優香が占い嫌いなのには訳があり、母親が娘との会話も大切にせず、占いにのめりこんでいるからです。
 もう、おわかりでしょう。木葉を大金で顧問にしようとしていた上品なご婦人が優香の母親です。

 木葉と佐倉が水上家を訪ねた時にそれが発覚、優香は2人を嫌って出かけますが、優香が事故に会うと佐倉が予言、木葉が引き留めに走ります。
 事故とは建物の煉瓦壁が崩れて落ちてくるというもので、木葉は間一髪のところで優香の行く手をはばんで事故を防ぎますが、かわりに自分が煉瓦の直撃を受けてしまいます。

 また別の日には、クビになったことを逆恨みした香川が水上家を訪問、その場にいた優香と佐倉をまとめて強姦しようとします。佐倉の「助けて」という念が木葉に伝わり、木葉がかけつけて2人は難を逃れます。

 そんなこんなで、優香も木葉や佐倉と仲良くなり、それぞれ事情や過去をわかりあったりして、アルカナのショップの方でアルバイトをするなど、3人でつるむようななっていきます。

 これらの人間関係にはまだ過去の因縁がありました。優香の母親が、もう一人の子供、男の子を預けたのは、木葉の母親、つまり、街頭易者をしていた頃の葉桜木霊でした。
「探さないという約束だったはず」といいながら、木霊は男の子のその後の事を語ります。しばらくは木葉と双子のように育ったが、子供ができない夫婦に里子にもらわれていった、と。
 そして、本人が望みもしないのに、今さら「私が産みの親です」と名乗り出ることの不毛をときます。

 水上婦人は佐倉の「占いより親子の会話では?」という説得に応じ、優香との関係も改善、優香もどんどん木葉に惹かれていきます。
 でも、優香は感じていました。木葉と佐倉は、お互い口にはしないけれども、相思相愛だと。
 この頃には、優香は、佐倉の事も大切な友人と認識していて、木葉と佐倉の仲を応援する一方、自分も木葉が好きという状態になっています。
 そして、佐倉の父のアメリカでの治療の見込みがたち、佐倉と父の渡米が近づいてきました。
「今、告白しなきゃ、佐倉は遠くへ行っちゃうんだよ」と、優香は木葉に言いますが、木葉は動きません。
 それどころか、優香が予想だにしない事態が発生します。木霊は佐倉を占いの館の貴重な戦力とみなしており、佐倉の父親の希望もあって、佐倉は渡米せず、木葉の家に下宿することになったのです。

 木霊という保護者はいるもののしょっちゅう家をあけており、ひとつ屋根の下で木葉と佐倉が二人きりになる機会が多くなるということに愕然とした優香、なんと彼女までが木葉の家に転がり込んできます。

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 水上婦人からも「娘をよろしく」と電話がかかってきますが、同時に「高校生の男女が二人暮らしなんて、間違いがおこる元になるから、いけません」と、釘をさされもします。

 こうして3人の生活が始まり、母子家庭である木葉の料理上手なんかも披露されたりするのですが。

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 こんなことになってしまいます。

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 酒盛り!

 平成一桁年代の作品では、まだアリだったんですねえ。

 さて。
 こうして3人の愉快な生活が始まったかというと、そうはいきません。
 色々謀略を画策する香川にまた振り回されます。
 水上婦人が若い頃に木霊に預け、その後、里子に出されたリョースケという木葉と同い年の少年を探し出して、連れてくるのです。
 木霊が捨てた子として表沙汰にしたら、テレビでも活躍する木霊にとってスキャンダルになるはずだと考え、揺すりたかりの材料にしようとしたのです。
 この過程で、ヤバイ薬を木葉に盛り、そのせいで木葉が幼児退行してしまうなど、アルカナを取り巻く環境がピンチになります。

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 リョースケは裕福な家庭に里子に出されたはずなのですが、その育ての親が両親揃って事故死してしまい、グレてしまっていたのでした。
 香川は木霊から脅し取った金の一部をやるからと、リョースケを利用しようとしていたのです。
 でも、リョースケも無一文というわけではありません。親の遺産があり、成人までは後見人に管理されていて、自由に使えないというだけです。
 リョースケの産みの親は木霊ではなく、水上だということもわかり、香川はまた謀略に失敗します。
 香川の所業に、いい加減頭にきている木葉ですが、木霊は、いずれ香川は木葉が掌の上で扱わねばならない存在、そうすれば優秀な占い師として戦力になると、息子に試練を与えるのです。

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 ひとつずつ詳しくストーリーを追っていきたいところですが、短い(全5巻)作品ながら中身が盛りだくさんで、キリがありませんから、スピードアップ!

 リョースケは色々誤解もとけ、北海道で夢を叶えるべく牧場で働くことになりす。いずれ優香とひっつくことも示唆されてます。

 本物の魔女を探しているという自称魔女研究家なる変なじいさんにひっかきまわされたりもします。

 そして、ついに登場する木霊の終生のライバル、クリス。能力としては確かにライバルなのですが、実は二人は仲良しです。でも、その事を隠してテレビなどでは何度も対決しています。なので、演出上、仲良しがバレてはいけないのです。
 その秘密に感づいたテレビ局が取材にしつこくやってきます。
 このときクリスは、お忍びでアルカナに遊びに来ていたのです。
 テレビ局はうまく誤魔化すことができて一件落着ですが、アルカナにとっては重要な人物になります。木葉の能力を開花させるための、木葉にとっては重要な助言者となっていきます。

 その木葉が占い師として活動するときの芸名は、銀牙(ギンガ)というのですが、この名の由来はタロットカードにあります。

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 GINGAというのは、一般のタロットカードには存在しない25枚目の大アルカナカードで、木葉の持つタロットカードにのみ存在するのですが、現在は失われています。

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 月の光で召喚できる使い魔のカードです。うーん、カラーで載ってなかったかなあ? まあ、こんなカードなんです。
 この失われたカードを優香が手に入れてしまい、最初は木葉がその肉体を使い魔にのっとられてしまったりもするのですが、やがては使いこなしていくことになるのでしょう。

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 渡米した佐倉の父の危篤も、佐倉の能力を木葉がサポートすることで大きな力を発揮することができ、向こうの世界へ行こうとする父を呼び戻すことに成功します。

 と、いったところで、物語はエンドマークです。

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 さて、この作品が特異なのは、漫画でありながら、漫画だけでない点です。
 筆者は神戸在住で、阪神淡路大震災の被災者です。
 各巻の巻末には、地震のことと、その後のことが記されています。特に1巻には、文章のみで14ページにも渡って当日とその直後の様子が記されています。

 実は当時は、そんなに重要なものとして認識していませんでした。
 今回、改めて読んで、この文章がきわめて重要な記録であることを感じたのです。

 僕もかつて、フェイスブックに当時のことを書いたことがあります。
 一般的な報道とことなり、きわめて個人的なことです。
 妻の実家が神戸にあり、買い込んだ水と母に頼んで作ってもらったオニギリを大量に車に積んで、その日、神戸に向かいました。被災地に車で行くなんてとんでもないという常識は、その直後に生まれた概念です。
 車でスムーズに神戸入りできたのは、西からでもなく、東からでもなく、北からのアプローチだったからです。
 我が家でも激しく揺れましたが、物が落ちる程度で、家屋には被害がありませんでした。妻の実家は崩壊しましたが、幸い無傷または軽い怪我だけですみました。
 そして、その後の交通機関や物流、自分達の行動などの記録を書いたのです。きわめて個人的なことなのですが、「それこそが大切な記録」と、ある方から指摘を受けました。

 そういう指摘を受けてから、中垣先生のこの記録を改めて読むと、一般的な報道では見えてこなかったものが見えてきます。

 被災した地で暮らす人々は、ニュースで知らされる概要とかからは知ることのできない、個々の事情や葛藤があり、それらのひとつひとつこそが、災害の現実なのです。

 この、ひとつひとつを集めて、はじめて実態がより見えてくる、ということなのだと、改めて気づかされたのです。

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 色々策略を巡らすわりに実りのない気の毒なキャラ香川。
 ちょっと服部あゆみ先生のキャラと似てますね。服部先生の場合、このキャラは主役がピンチのときにさらっとやってきて、力添えをしてくれるカッコいい役柄に使われるキャラなんですが。中垣先生の場合、ちょっと残念なキャラとして出てくるんです(笑)


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