【 あいカギ/犬上すくね 】
2巻の帯で煽る煽る。曰く「挿れて、開けて、ダダ漏れ」
エッチ描写もそこそこある女流作家さんの作品の帯がこれですから、「ええ! これってそういう漫画?」と、思わずその気にさせられます。
作中のやりとりも、なんともすごい。
あやめ「で、どうしたの? 何を言い争って? ケンちゃんはなんて?」
きい「最近しつこいの。女に挿れたいって、そればっか」
あやめ「ぎょ」
きい「女のほうが気持ちいいからって。自分の好みでモノ言われちゃ困るのよね」
ケン「なんだよ、ちゃんと挿れてるだろ、男のほうにも!!」
きい「士気の問題よ。男に挿れるたびにグチグチ文句言われちゃたまんないの。遊びでやってるんじゃないのよ。あたしたち」
常軌を逸した会話としか思えません。しかし、そこは、ファンタジー。それぞれ意味があるのです。
ここまで読むと、「あれ? エロ漫画の台詞というわけでも、なさそう…なのかな?」と、感じる方もいるでしょう。そうです。エロマンガではありません。
ニューハーフバーも、BLコミックも、すっぽんぽんでステージにあがる男性ボーカリストのいるバンドも、男女のセクシーなシーンもありますが、これは断じてファンタジーマンガなのです。
きいちゃんというのは、ややもすれば中学生くらいに見える女の子で、「鍵使い」です。そして、ケンは、普段は人の形をしてるけど、小人サイズの人間(?)。体力を極端に使うけど、普通サイズに大きくなることもできます。しかし、その正体は、鍵。
何かを心の中に抱え込んだ人間には、その量によってサイズの異なる鍵穴があって、きいちゃんが鍵型になったケンをその鍵穴にぶち込んで解錠すると、本音がダーっと口をついて出てくるのです。
そうして、「言いたいけど言えなかったことを、言う(言わせる)」ことで、人は良い方へ変化するのです。
が、きいちゃんとケンの目的は、鍵を開けることで、何か素敵なことが起こると信じて、そのためにやっているのです。2人が求めてる素敵なことには、まだ出会えてないようですが。
このようなエピソード集なので、基本は一話完結。でも、メインゲストで登場したキャラか、後のエピソードでは脇役で何度も再登場します。
後日談的なことを知れるのも楽しみですが、実は意外と狭い世界で物語は進行している、ということでもあります。
(この、驚嘆してる漫画家さん、だれです? あとでわかりましたけど)
他の作品とも一部登場人物が重複してますが、手塚先生のようなスターシステム(役者という位置付けで色んな役で登場する)ではなく、本人としての同じ設定での登場です。
何巻まであるのか知らないのですが、我が家にあるのは2巻まで。
犬上すくね先生の作品は大好きです。でも、「作家買い」をしてる、というほど網羅できていないのです。あんまり書店に並んでなくて。
絶版になってなけりゃそのうち書店で見かけるだろうという古い考えはもはや通じません。注文取り寄せでもしないことには、知らない間に絶版になってしまうので、焦ってるとこです。
小山田いく先生の作品のように、どんどん復刻されるとか、庄司としお先生の「サイクル野郎」のように、デジタルではなく、オンデマンド出版で紙ベースの単行本が手に入るなんてのはレアケースなので、ちょっと急がないといけませんね。
(3-5)