【 ACONY アコニー/冬目景 】
中学生の少年、空木基海がやってきたのは、まるで廃墟のような「しきみ野アパート」。
父親は1年以上連絡がなく、実質母子家庭のようですが、その母親が海外赴任することになったため、祖父の住むアパートに引っ越してきたのでした。
食事や風呂は祖父の部屋で済ませ、本人にはお風呂の無い別の部屋が借りられています。
モノノケの気配はするのに、人の気配はあまりしないこのアパートで、最初に出会ったのは書生風の風貌をした管理人でした。その正体は、成仏できなかった幽霊です。
次に出会ったのか、同年代に見えるけれど実は23歳のアコニー。日本人の母親は行方不明で、アメリカ人の父と2人暮らし。
母親が行方不明なのは、実験中の事故に巻き込まれたものの死体が発見されなかったからです。このため行方不明扱いなのです。もちろん、アコニーも父も、母親の生存を願い、信じていますが…。
そして、その母親から、手紙が届きましたた。届いた手紙の発信地は、日本。だから、、父とアコニーは母親探しのため、日本にやってきたのでした。
アコニーも事故に巻き込まれた1人で、それ以来髪は紫色になり、また代謝速度が極端に遅くなり、23歳なのに中学生の風貌です。
3ヶ月に一回程度の睡眠をとり、一度寝たら2日間ほど起きないのだとか。
父親の小説家ですが、アメリカではさっぱり売れず、日本でようやく日の目をみたようです。ジャンルはホラー作家です。
担当編集者は若くて美人、しかも同じアパートの住人です。この女性も実はまともに生きてる人間ではなく、 その正体は蛇。
この他にも、呪いをかけられて蛙になってしまった武士や、職業「秘密結社」とのたまう16人でひとりの分身人間、人間に変身する犬、狼に変身する人、魂を宿して座敷童になった少女人形、封印から目覚めた緑の守り神などなど、魑魅魍魎とはまさにこのこと。
アパートにも意識があるらしく、悪いモノは排除し、壊れた場所は自己修復をします。
そんな舞台での、ファンタジック日常ホラーコメディです。
物語の中心を貫く一本の筋は、アコニーの母親探し。どうやら過去の因縁とかもあり、色々な所でつながっていきます。
基海の協力もあり、やがてアコニーは母親に再会…かと思ったら、その人はアコニーの祖母でした。
アコニーと同じく、事故のせいで極端に成長が鈍化しています。ですから、祖母であるにも関わらずその容貌は母親かと見まがうくらい若いのです。
さてその事故につながった実験とは、人間の不老不死に関する研究でした。
しかし、マウスの実験から、「成長は極端に遅くなるものの寿命は延びず、ある日突然、その時がきて、電池が切れるように死ぬ」らしいとわかってきました。
こうしてアコニーの母のこと、祖母のことなど、色々と判明してきたのですが、物語はあと少しだけ続きます。
相変わらず無茶苦茶なモノノケに蹂躙されつつ、なぜかしきみのアパートは「はい、無事に解決してもう大丈夫」的な、展開。
しかしその生活も終わりを告げる時がきます。
基海の母が帰国し、再び基海と母の生活が始まることになったからです。
馴染みになったモノノケ達に見送られながら、基海はアパートを去ります。
でも、祖父やアコニーが住んでいるのともあり、しょっちゅう遊びに来ることになるのでしょう。
全3巻。
同時複数の不定期連載を持ち、休載の多い作家さんですが、しかし、しっかりと完結させる律儀な方です。アコニーももちろん完結しました。
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