【 ジャパッシユ/望月三起也 】
生まれながらにして、最凶最悪。日本を、そして、やがて世界を征服するために、1人の男が世の中を蹂躙していきます。
悪魔のような狡猾さで周囲の人間を巻き込み、征服のための歩みを着々と進める日向光。目的のためには、殺戮も破壊もいといません。しかしそのやり口は計算高く、世論は味方します。
そして、まさしく独裁者への階段を駆け上がっていくわけです。
作品そのものを評価するなら、途中の過程をすっとばしていて、短い説明や時間の経過だけでそれを表現、「なにもかも日向光の思惑通りにすすみました」と読者に伝えている部分が多く、きちんとストーリー展開している部分もご都合主義が目立ちます。なぜ思惑通りにことが運んだかの説明にしても、一方的にすぎると感じます。ですが、おそらくこれは単行本で一気に読んだせいでしょうね。これが週刊誌や月刊誌で読まされたとしたら、きっとちょうどいい塩梅だと思います。
ともあれ、野望を叶えるための階段を駆け上がっていく話は、面白いものです。フィクションがゆえの殺戮や破壊が拍車をかけます。
悪がどんどん悪になり、思い通りにコトが進行するストーリーに思いのほか人気が出てしまい、マズいと思った作者自身によって、連載を打ち切ったとあとがきに記されています。
主人公は最後に、拳銃で撃ち殺されます。
決して悪は栄えたりしないという作者の想いがこのラストに込められているのでしょう。そしてまた、現実も、そういう歴史の繰り返しであったと、作者は警鐘を鳴らしています。
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