【 レイリ/岩明均・室井大資 】
原作はヒストリエや寄生獣の作者、岩明均先生です。
時代は天正3年の長篠の戦いから4年後。長篠合戦で織田徳川連合軍に破れた武田、その配下にある岡部丹波守のもとでくらす女性剣士がレイリです。
恩人と慕い敬う丹波守が、親方様の命で要城である高天神を任されます。
それにともない、レイリは一緒に行くものと思っていました。なにしろ、剣の腕では配下1、戦場では「殺して殺して殺しまくって、最期は丹波守様の盾になって死にます」という、死への憧れをもつ気性の激しい子なのです。
しかし、レイリは連れて行って貰えません。そのかわり、彼女に命じられたのは、 武田信勝の影武者でした。身辺警護と身代わりが仕事です。
剣の稽古に励み、相当の腕をもちながらも女という理由で戦場に連れて行ってもらえなかったレイラ。しかし、ついに軍人としての役割が与えられ、影武者の修行が始まるのでした。
武田信勝の影武者修行の場に、おそらく織田により金で雇われた連中が押し寄せてきます。
レイリは得意の剣術で、切って切って切りまくる。血や肉片にまみれると刀は途端に切れなくなるそうですが、レイリは切り捨てた相手の刀を奪い、また新たな敵を切って切って切りまくるのです。
影武者修行の場に襲いかかってきた連中の一人を殺さずにおき、雇い主はだれかと尋問したところ、「金だ」との返答。詮索したところで、無駄のようです。
一方、レイリの元の君主、岡部丹波守が守る髙天神城が包囲され攻撃にさらされますが、援軍は出さないと軍議で決定されました。
援軍を出せば待ち構えていた何倍もの兵力を持つ信長に殲滅されるからです。
髙天神では、援軍が来ると信じて半年にもわたる籠城戦が繰り広げられていることを知ったレイリは、たった一人で城へと向かいました。
そして、籠城のあげく皆殺しにされるくらいなら「逃げる」ことを提案します。
その提案に基づいて作戦が練られ、レイリが犠牲となることで、未来のある若い兵士だけでも脱出させる案が採用されました。
レイリのことを作品内では「死にたがり」と表現しています。
彼女の望みは、仕える人を守るために、敵を殺して殺して殺しまくって、最後は自分が盾になり、立派に殺されることです。
戦国の世における殺すだの殺されるだのを、そのまま現代にあてはめるには無理がありますが、命のやりとりではなく、「自分の想いをいかにとげるか」がテーマであり、メッセージであるなら、「殺して殺して殺しまくって、最後には殺される」という生き方に、共感できないわけではありません。
しかしおそらく作品としては、レイリは様々な出会いと成長の末、大切な人のために「生きる」という選択肢に至るのではないか、あるいは、「生きることの尊さ」にやっと気づいたのが死の瞬間だった、というようなエンディングになるのかな、なんて考えたりしています。
現在4巻まで所持。
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