漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 色即ぜねれいしょん/みうらじゅん・喜国雅彦 】

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 通信教育で空手を習得し、女の子の目の前で不良をやっつけるシーンを夢想をするような情けない男、乾純(あだ名が「イヌ」)の、ひと夏の経験を描いた物語です。 

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みうらじゅんの性春自叙伝を喜国雅彦がコミカライズ」という触れ込みで、映画製作に合わせて漫画も連載されました。

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 時代は昭和。インターネットなんてものはなく、情報収集も困難を極めた、かどうかは知りませんが、「フリーセックスの島がある。そこにやってくる女とはやり放題」という クラスメイトからの誘いに、イヌはひと夏の経験のために、友人たちと、のこのこフリーセックスの島にでかけていくのです。

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 島の名は、隠岐の島。
 日本海に浮かぶ、島根県の島です。
 いま、そんな話を聞かされたら、「はあ~?」と思いつつも、ネットで真偽を確かめるでしょう。
 いや、確かめるまでもなく、そもそも本気にしないでしょうね。

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 さて、島に渡った一行がやってきたのは、ユースホステル(以下、YHと表記)。若い男女が集まる場です。とはいえ、YHです。フリーセックスの噂がガセであると普通は気づきそうなものですが、期待は膨らむばかり。
 一行はその時が来るのを今か今かと心弾ませ待ちます。
 映画撮影の時点では隠岐の島YHは既に廃館となっており、ロケは天橋立YHで行われたそうです。

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 やがて、いよいよ「その時」がやってきました。
 だが、しかし。彼らの期待は見事に裏切られます。始まったはフリーセックスなんかではなく、とっても健全なキャンプファイアーだった、というオチです。

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 フリーセックスは実現しませんでしたが、解放感溢れる夏の離島です。青春の脂ぎった情熱のたぎる彼らは、女性の気を引こうと奮闘したり、高校生では叶わない大人の魅力を備えた思わぬライバルに対抗心をもやしたり、海水浴ではきわどい水着にドキドキしたりと、テンションあがりっぱなしの夏を過ごしました。

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 映画は観ていませんが、原作本と漫画は読みました。残念に感じたのは、原作に比べてYHのシーンが少ないこと。物理的ページ数をカウントしたわけではありませんが、量も密度も自分的には不足だと感じました。
 いや、量も密度も関係ないかもしれません。YHというシチュエーションが十分に描かれてないように感じた、ということです。原作ではそれか満たされていたので、余計に残念に感じた、というところです。

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 小説版では、そういった状況を楽しみ、状況に流されているのがよくわかるのですが、漫画版はどちらかというと主人公の成長物語という切り口に重きがおかれてたようです。

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 ただ、後半がかけ足になったのは、読者の人気や評価もあったのではないでしょうか。それで、2冊で完結させることになったのではと邪推しています。前半のペース配分だと、3冊にするのが適切のように思います。


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