【 ペリカンロードⅡ/五十嵐浩一】
ペリカンロードの2作目です。Ⅱ(以後2と表記)という限りは前作があるわけですが、時系列では初作の後ではあるもののストーリー的には続編ではなく、新たな物語です。
前作は、バイクがかなり重要な位置を占めており、バイクを通じて成長する青春もののような感じでした。
主人公渡辺健一(高校生)ら4人のバイクチーム「カルーチャ(ポルトガル語だったかな、ゴキブリの意)」は、暴走族ではありませんが、校内唯一のバイクチームであることと、以前この高校にあった暴走族チームが現存しないことにより、他校のバイクチーム(こちらは武闘派暴走族)に狙われたり、抗争に発展したりします。
殺伐としたストーリーやシーンもありますが、そういった話ばかりでなく、全体として読み通せば、悩み、傷つき、見失った道を探し求めたり、離反したり理解しあったりなど、バイクとその仲間たちとの交流と成長を描いた青春学園ものでした。
一方2は、主人公たちの成長物語という前作と同じ要素はあるものの、暴走族や暴力団、アウトローのなりそこないなど、 ろくでもない連中がウヨウヨ出てきての抗争ものです。2では、前作の主人公の所属するカルーチャと当初敵対していたフェルトヘルンハレ(以後、FHHと表記)というチームが登場。但しFHHも4代目リーダーの本間が死んだ時点で、3代目リーダー中崎マキが解散宣言しており、チームとしては現存しません。
2の主人公は、本間の甥の藤枝冬馬です。
かつてFHHから分離したヴィルデ・ザウが、ヤクザとも繋がり、我が物顔でやりたい放題、やがてFHHの残党との抗争に発展、叔父の死の真相に迫ろうとする冬馬も巻き込まれていく、というようなストーリーです。
よくある青春ケンカものとも違い、かといってヤクザものとも違うのですが、高校生中心の話でありながら、その高校生をヤクザがシャブで食い物にしたり、いい加減いい大人になっているFHHの残党がほぼ現役高校生のザウの連中と潰し合いをしたりと、あんまり気分のいいお話ではない部分もあります。
刃物による殺傷沙汰はともかく、ピストルが出てきた時点で、それはないでしょ、とちょっと引いてしまいました。
エンディングは悪くありません。本間の死の真相が明らかになります。それはFHHとザウの抗争によるものではなく、バイク走行中の事故によるものだったことを冬馬は知ります。
企業犯罪の「蜥蜴のしっぽ切り」で刑務所に入らざるをえなかった父と、冬馬との再会もあります。
なので、先に書いた「あまり気分の良くない部分」が、もう少し違ったものだったらなあと思う次第。
前作から、明らかに継続して登場しているキャラは、FHH3代目リーダー中崎マキだけです。この他に、名前は出てきませんが、白バイの警官が田川しげるでしょう。
その他は全て新キャラです。
ちなみに、1巻カバー裏(3枚目)と、2巻カバー裏(4枚目)に、うつっている人物、これ、多分ヤチさん(2代目FHHリーダー)だと思います。3巻カバー裏(6枚目)は、マキ。4巻カバー裏(8枚目)は、誰だろう? 田川かサチだと思うんですが、区別がつきません。
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