【 アイムホーム/石坂啓 】
主人公、家路久は、優秀な銀行マンでした。単身赴任中、室内で七輪で餅を焼き、一酸化炭素中毒になます。それが原因で記憶喪失に。
その事故の直前の久は、離婚して妻と娘を置いて家を出て、直後に新しい奥さんと結婚していました。再婚後、息子が生まれますが、どうやら久の実の子ではないようです。
記憶を失した久はある日、前の奥さんの家に帰宅してしまうというミスをおかします。これに類した失敗は時々しでかしてており、単身赴任していたときのアパートに戻ってしまったこともあります。
そういうことのないよう、記憶にない事実が判明した時はメモをとり、折に触れメモをチェックはしているのですが。
それよりも問題は、新しい家族の顔がわからないこと。仮面をかぶったように久には見えてて、表情すらよめないのです。
深層心理では「ここは俺の本来の居場所じゃない」と、感じていることの象徴として漫画ではそう描かれてるのかなと僕は解釈してるのですが、ではなぜ「ここは俺の:居場所じゃない」と感じてしまうのかが、わからないのです。
そもそもが前妻との離婚が原因なのか、職場で無理をしてて自分こそが仮面をかぶった生き方をしていたということなのか、2度目の結婚が(記憶にはないけど)不本意なものだったのか。それとも、もっと別の理由が?
テレビドラマ版では、妻も息子も、仮面のない状態で登場します。しかし、久視点のときだけ、仮面をつけた状態で電波にのります。
でも、漫画版は、徹頭徹尾仮面描写で、読者にすら素顔や表情は示されません。
ラストシーンは「引き」の状態、それも、屋外からの視点で、屋内の3人は描かれないのですけれど、「ただいま」「おかえり」といった会話が交わされてるところを見ると、久視線でもこの時には仮面は外れていたのではないかな、と思いました。しかし、示唆されただけで、漫画版では新しい奥さんと息子の顔は、最後まで出てこないのです。
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