漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 TOGETHER/中垣慶 】

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 重厚な門構えの純和風建築。表札は「巽組」。どうみてもやくざの本拠地です。ペットショップ「いぬい」から餌の配達に来た若者はそれだけで怯みますが、「鍵は開いてるから玄関まで持ってこい」とインターホンから指示。言われた通りにしようと庭に入ると、大型犬を中心とした用心棒たちに追いかけまわされます。

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 そこへ通りがかったのが、勇樹です。犬たちも勇樹には従順で、無事、配達は完了しました。

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 ペットショップのオーナーは不在ですが、巽組組長とは懇意で、ショップを任されてる幸(20代半ば? かなり美人)にも小さい時から目をかけています。
 その幸にちょっかいを出そうとした若い男はクビ(というより逃げた)、かわりに勇樹が巽組に寝起きしながら、昼間はペットショップのアルバイト、それ以外の時間は巽組の犬係り兼雑用係をし、組員にはならずに、居候をすることになりました。

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「青春まっすぐ元気いっぱいストーリー」中心だった中垣先生の作風に変化が生じた作品だと思います。

 ペットショップを経営する幸は、双子のお母さんです。でも、本当は母(自分の子)ではなく、姉の子です。姉が出産と同時に亡くなったため、自らが母親になると決めたのです。

 後ろ楯になってくれたのは巽組という暴力団の組長。
 幸は組長のことを「親父(おやじ)さん」と呼んでいます。組長は幸を我が子のように可愛がっていますし、また幸は組長に対して父親にも似た感情をもっていますが、暴力団の組長だからそう呼んでいる、というのもあるでしょう。少なくとも2人の顔を並べれば、誰一人として、組長と幸が親子だなんて思わないでしょうね。

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​ 独身の身ながら姉の子をひきうけると決めとき、「本当の母親になるというのなら、学校はちゃんと出ろ」と組長に諭され、おそらく必要な援助もしてくれていたのでしょう。やがて幸は一人前になってペットショップを任されるようになります。
 そこへ転がり込んできた勇樹という青年は、獣医の勉強のためアメリカへ行っていたのですが、何か事情があり、日本へ逃げ帰ったようです。
 ただ、勇樹には動物と心を交わす特別な才能があり、巽組の犬が襲われるかなにかの事件があったりしたこともあって、上記のように巽組の犬係りとして組にお世話になることになったのです。

 実は勇樹には、巨大ペット産業を営む父がいて、いわば御曹司というべき立場です。自分でペットショップを開くくらいのお金は親が出資してくれそうです。ですが、父の儲け主義に嫌気がさしていて、日本を飛び出したのであり、父親の跡を次ぐ気はありません。

 ある日、アメリカで学友だった金髪美人のフィノラが、はるばる勇樹を訪ねて来ます。
 これは作者の演出ですが、全容を語らずに物語が進められるため、フィノラは勇樹をアメリカに連れ帰り、大学に戻して、その後、結婚をする、という展開になってしまいます。
 誤解を生みがちな中途半端な会話(をわざと作者がさせてる)が原因ですが、ラスト近くなって色々な事情が明かになり、まあ、そのへんは徐々に落ち着いてきます。
 この他に、幸や巽組や勇樹から絶大な信頼を得ている獣医さんも、重要な役割を果たします。
 勇樹は巽組に犬係として住み込みながら日本の大学に編入して再び獣医をめざすことになります。
 笑いあり、人情あり、ビジネスあり、夢追いもありで、短いながらも、好感のもてる物語です。

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 気になるのは作品内で獣医を目指すのに編入したのが医学部になっていること。別の作者の漫画作品では、「獣医は動物のためにいるのではなく、人間のためのもの。だから獣医になるために行くのは医学部ではなく、農学部」というのがあったことです。
 気になるなら自分で調べたらいいんですが、ほったらかしです。すいません。

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