【 マイガール/佐原ミズ 】
かつての恋人、陽子の死。そして、遺族から伝えられた現実。「この子はアナタと陽子の子なのです」と、知らされます。
俺の、子供?
笠間は突然のことに、状況がつかめません。
笠間には確かに陽子という恋人がいました。しかし、既に別れています。別れの理由は、留学。
「いつになるかわからないから、待ってなくていいよ」という陽子。
「待つよ」と答える笠間。
しかし、次に二人が会ったのは陽子の葬儀会場。不慮の事故で彼女は亡くなったのです。
陽子は妊娠を隠して海外留学にでかけ、一人で出産。コハルと名付けて、不馴れな海外で勉学に励みながらも、5年間大切にコハルを育てていたのでした。
突然のことに混乱する笠間。しかし彼は現実を受け入れ、笠間とコハルのささやか2人の新しい生活が始まります。
コハルは笠間のことをマサムネくんと呼んで、親しげに接します。
しかし、問題は突然現れた娘との関係構築だけではありません。むしろ問題は、笠間の仕事にありました。
いきなりのシングルファーザー。子育てのためには独身時代と違って、色々とお金がかかります。しかし、子供の面倒を見なくてはなりませんから、これまでのペースで仕事を続けることはできません。
基本的には優しさに溢れたお話ですし、決して難解なストーリーでもありませんが、作者独特の感性に戸惑うことはありました。
シングルファーザーという立場は色々と大変なのですが、笠間はむしろコハルに助けられる(精神的にも)ことが度々あり、これはきっと、陽子が生前、コハルに優しく接していたことの証、すなわち彼女が素晴らしい女性だったんだ、ということを読者に示してるんだと思います。
(52-232)