漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 アリエテ2057/五十嵐浩一 】

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 宇宙戦争もののSFです。
 国連宇宙軍は木星の衛星にある前線基地空域で、攻撃してくる謎の宇宙生物を必死で食い止めています。

 その最前線に補充兵が送り込まれてきました。士官候補生のソリアーノエルナンデス、アギエラ曹長の3名です。
 3名は着任早々、悲惨な光景を目にします。正体不明の敵に攻撃され、這々の体で帰還した兵は、先の戦闘で失ったらしい身体の一部にパーツが埋め込まれ、どこかに接続されていたらしいケーブルは切断された状態で身体からぶら下がっており、しかもシェルショックで正常な判断力を失っていて、味方に襲いかかります。その兵士を、やはり身体にパーツを埋め込んだ傷痍軍人である男(中尉の階級で、後に新人3人が所属する隊の隊長になる男とわかります)が撃ち殺します。

 ここでは色々なことが読み取れます。致命的な怪我をしても欠損した部分を機械で再生して埋め込まれ、引き続き軍人であらねばならないこと、また、そうしなければならないほと戦いは厳しく、おいそれと補充兵がこないこと、ここにやってきた新人3人も訓練では好成績をおさめた連中であり、前線に立てるまでに訓練をクリアできる人間は少数である(軍が要求するレベルをそこまで高くしなければならないほど、敵が強大であること)などです。

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 とまあ、世界観の説明はこれでいいかなと思うのですが、評価は高そうに思えるものの、多少わかりにくい作品かなと。 
 1巻の帯には「超硬質なミリタリーSF巨編」とあります。
 超硬質とは、ただ激しい戦闘だけを意味するのではなく、アドレナリン大噴出の戦闘時とは異なる、いわば待機時間の葛藤や、仲間同士の意見の違いや、それによるいさかいも出てきます。
 なるほど、士気の高い兵士が連戦先勝では、超硬質とは言いがたいですね。

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 ネット上のレビューとか、Wikipediaなども読み、そして作品を読み返してみて、みたいなことをした作品です。我ながら読解力がありませんな、トホホ。

 敵部隊をなんとか食い止めている木星宙域。ココを突破されれば、地球へ敵は一直線。そこで、核兵器の使用が提案されました。
 でも、懸念があります。兵士や国連職員は覚悟の上でも、その、家族たちが巻き添えになります。そして、彼らが脱出すべき小型船は、もうないのです。20年も稼働していな小型船はあるのですが。
 さて、旗艦にまで潜入してきた人ならぬ化け物を、殺害ではなく、捕虜にして調査したところ、化け物の肉体は合成されたものですが、神経や脳はまるで人間。全員が行方不明になった第三時調査隊の脳のコピーであるらしいことが判明。もちろんそれは秘匿されるのですが。

 おかげで、当時の生き残り兵が、拷問に近い「真相記憶の探査装置」にかけられ、精神崩壊の危機にまてさらされます。

 一方、敵からの圧倒的な物量攻撃にさらされ待った無しの状態におかれた木星宙域の守備軍は、ろくな補充のないまま絶望的な戦いに身を投じてゆきます。
 そして、完全に死亡かと思われた一人の兵は、全身にチューブのつながれた状態で、おそらく旗艦の医務室で、悶絶しながらの蘇生。

「今日からおまえもオレと同じ複製体。再定住者の仲間入りだ。」

 除隊も死亡も許されない絶望的状況が示唆されます。

 上下2巻。戦争そのものに何らかの決着がつくわけではありません。ラストまて描ききれず打ちきりになったのか、技術が進んでも戦争が絶えることはなくむしろより悲惨になるのたという警鐘を残して予定通りの結末なのか、私には判断できません。(上下2巻)

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