【 万能鑑定士Qの事件簿/松岡圭祐・神江ちず 】
少年エースかヤングエースかその他のエースかはわからないんですが、多分、雑誌掲載の初回を読んでたら、まあ、買わなかったでしょうね。
1人の青年が、事務所にガードレールなんかを運びこんだおかげで、あちこちぶつけて書類を撒き散らしてしまうというB級マンガですよと言わんばかりのわざとらしさ。
おまけに、気持ちの悪いオッサンの顔がズラリとならべられて、これがしかも「力士」だと言う。いやこれ、力士に見えませんって。
幸いだったのは、書店に並んでたコミックスの表紙とタイトルが気になって、買い続けてたこと。しかも、読めないままになっていたんですよね。
そのうち、「最終巻が出る」ということて、慌てて購入。最終巻が出ると、ほどなくまとめて店頭から消えるので。
さて、気味の悪い力士シールですが、これが都内のあちこちに貼られており、悪戯にしては量が膨大、これに興味をもった角川書店の雑誌が記事にすることになり、そのシールの貼られたガードレールを編集部に持ち込んでいるところだった、というのが冒頭のシーン。
若手編集者の小笠原は、シールの鑑定を依頼していた人物にキャンセルを申し渡され、代わりの鑑定家を探すことになり、そして「万能鑑定士Q」凜田莉子に依頼します。
事務所には先客がおり、絵画の真贋の判定を求めていたのですが、短時間に数々の的確な指摘を行い、「贋作」と判断した「若くて美人」の鑑定士の美貌鑑定眼に驚きすぐさま力士シールの鑑定依頼をします。
こちらは残念ながら、科学鑑定が必要とういことで数日の時間を要することになるのですが、このため「直帰する」と会社に連絡した小笠原、「就業時間内は仕事しろ!」と一喝。さすがは大手角川書店、甘くはありません。
架空の出版社が舞台ならともかく、実名が出てるからしかたありませんね。
小笠原は、この美人鑑定士に密着取材を敢行します。
そして、まさしく事件に遭遇するのです。遭遇、というより、予想でしょうか。
そのことを警察に伝えた莉子は、「また、お前か」と最初は相手にしてもらえません。しかし、詳しく説明するうちに、小笠原は立ち会いを拒否された上で、別室にて刑事と莉子の密談が行われ、大勢の警官の派遣が決定、事件を防ぐことができました。
物語はその後、莉子の過去にも触れながら進行していきます。この話には彼女の過去エピソードが欠かせません。なぜなら、超能力やタイムスリップ的な要素を持ち込まない限り、莉子のような若い娘が「なんでも鑑定」するほどの知識と洞察力を身に付けているなど、普通では考えられないからです。
それらをしっかり設定してあって、ストーリーに組み込んであるのに、とても好感がもてました。きちんと原作があるためかとも思われますが、漫画の場合、長期連載により仕方なく後付け設定せざるを得なくなった、というのも多そうです。筋道が通ってたら、それも悪くはないですけどね。
ところで、莉子が気づいて警察に届け出たその事件、実は裏にもうひとつ大きな事件が潜んでいて、そのために警察そのものが仕組んだ茶番だったことが判明します。
つまりは、所轄署をも巻き込んで捜査妨害をしてしまっていたわけです。
秘密裏に行われていたそれを、週刊紙記者のいる前で明かしたのは、「書くなよ」という意味なのですが、小笠原はそれにも気づかす、注意を受ける始末。
対して有能な鑑定士である莉子は、またしても事件解決に至るヒントを掴みます。
こうして、初巻から続く謎を3巻目にしてようやく解決、ということになりました。
その後も、様々な依頼を解決してゆく莉子。
モナ・リザに関すること、安倍晴明に関すること、などなど、結構おおがかりな依頼(事件?)に取り組んでゆくのです。
そして、ついには「脱税疑惑」のある会社に調査員として偽装入社をさせられるはめになります。
といっても、フリーパスではありません。角川書店の推薦はあるものの、入社試験は受けねばならないのです。
意地悪な面接試験のヒッカケも、彼女の鑑定眼のおかげでクリアし、合格。
学校での試験の成績はオール1だったとかの逸話もあり、実力で一般企業に就職できて受かれる莉子ですが、果たしてお役目は全うできるのでしょうか?
全10巻 (75-294)