【 ゆるキャン△ ①/あfろ 】
へんなペンネームですねえ、とか、女の子がカワイイですねえ、とか、色々言いたくなりますが、まあそんなのはオマケみたいなもので、この漫画はキチンと読ませてくれます。
タイトルの「△」は、テントです。つまり、ゆるキャンとは、ゆる~いキャンプのこと。でも、全然ゆるくありません。雰囲気はゆる~く感じますが。このことはおいおい書いていきます。
各務原なでしこが所属する「野外活動サークル」(3人)と、友人でソロキャンプを愛する志摩リン、そしてリンの友人の計5名の女子高生を中心に、キャンプと旅と野外飯などを描いた漫画です。
ゆる~いキャンプといと、本格的なキャンプではない、ということに通じそうですが、彼女達のキャンプは本格指向です。本格に踏み込めないのは、資金難ゆえのことです。
資金が潤沢なら(あと、時間も)、彼女たちはいきなり本格的なキャンプにのめり込んだでしょう。そう感じさせるほどに、本格派の片鱗が散りばめられてるのです。
キャラ造形は、ライトノベルのイラスト風で、萌えっぽいのですが、背景とか遠景描写は美しいです。作者も風景描写を正確にするため、何度も現地にでかけられているとか。やっぱ、そーですよね。
物語のスタートはおそらく晩秋で、リンの「寒さの中の冬キャンプ」が、あちこちからクローズアップされます。それも、ソロ。リンはオフの静かなキャンプ場で、1人で過ごす時間を大切にしているのです。
一方なでしこは、野外活動サークルの仲間達と、どんどん仲良くなっていきます。
でも、リンは本当に1人というのではなく、スマホでなでしこ達と夜景を送りあったりして、交流や相互理解が徐々に進んで行くのです。人間関係や心の交流といったことが描かれ、彼女たちはキャンプを通じ成長します。
真冬のちょっと標高が高いキャンプ場で、防寒が十分でなかったために、あわやという事態もあります。この時は人に助けられてことなきを得ますが、そういったひとつひとつが冒険であり出会いであり、勉強となってもいるのです。
キャンプだけをストイックに突き詰めてるわけでなく、移動の行程には、旅や観光といった要素もあり、しかも、キャンプの蘊蓄まであったりするから、たいしたものです。
食に関しても細かな描写があって感心しますね。さりげなーくキャンプや、キャンプ場でのマナーなんかも織り込まれています。
ところで、一時期、ドバーっと登場した女子テツ漫画ですが、別のところでも書いたように、ピークは越えたようにおもいます。
一方で、キャンプものがこれからちょこちょこ出てくる予感がしました。
先達として「山と食欲と私」という作品があります。 その上で、こういった作品が出てくるんですから。
しかも、共通点も多いんです。例えば、「出かけて行く」ということを、重要な要素にしています。また、キャンプの食事で使う食材は、あらかじめカットして持参する、というシーンもあります。こうすると、荷物も減るし、ゴミも出ません。こうしたやり方は、いま、キャンプの業界で推奨されているのです。
7巻ではついに、リンちゃんに影響を受けたなでしこが、冬のソロキャンプにチャレンジします。
心配になってそっと様子を見に行った姉と、リンちゃんがバッタリ。一方、なでしこはというと、現地で出会った家族キャンパーと仲良くなったりして。
ソロキャンプもグループキャンプも、それぞれの良さを感じたなでしこは、ソロキャンとグルキャンを交互にやろうと決意。顧問の先生にも相談し、次回は3月か4月に伊豆へ行くことになり、それまでは旅費稼ぎのバイトにいそしむことになりました。
今回もそうですが、道中様々な旅としての要素(食や温泉など)が登場します。また、リンちゃんは原付を持ってますが、なでしこは、公共交通プラス歩きでキャンプ場へ向かいます。
野外料理も、流行のバーベキューやらダッチオーブンなんぞ「それなに?」の世界。焼きリンゴと同じ要領(濡らした新聞紙とアルミホイルで食材を包んで焚き火にくべる)で、色々な野菜を調理したり、お湯をかけるだけ出来上がるフリーズドライ食品も否定しません。
ソロキャンプは暇だから、何かすることを用意しておくといいよとリンちゃんがアドバイスしますが、それが読書だったり、編み物だったりします。
野外活動って僕のイメージ的にやることいっぱいで大変、なんですけど、「暇だから何か用意しておく」だなんで、その暇に憧れますね。
こうなると、彼女たちは、とても自由で優雅で、自分が高校生の頃に体験させられた教育キャンプ、あのつまらなさ、押し付けがましさって、一体何だったんだろうって思います。
決して学校主催の教育キャンプが悪いとは言いません。ガチガチの教育キャンプにはガチガチなりの教育的目的があるのだし、ガチガチであっても、キャンプは基本的には楽しいものです。
楽しいといっても、享楽的な意味ではなく、友達の知られざる面を知ったり、好奇心や冒険心を満たしたり、薪に火をつけるだけのことであっても非日常における成功体験であったりと、子ども達にとってウキウキワクワクすることがタップリあるのです。
また同時に、グランピング? はて? そんなもののどこが良いんですか? とまで感じてしまいます。いや、それはそれでもちろんいいんですが、彼女たちのキャンプがそれほど素敵に描かれてる、ということです。これもノウハウを指導してくれる人がいたりする、という構成が生きてるからだと思います。
この漫画には、夜のシーンのカラー絵が欠かせません。なにしろ、野外で一晩を過ごすわけですから。
大変なこと不自由なことが多々あるのは、当然です。家でもホテルでもないのですから。でも、魅力的に描かれます。絵の美しさも、それ抜きにしてこの作品は語れません。
この漫画もアニメから入った作品です。何曜日の何時にこのアニメを観なくちゃ、なんてことが勤務の都合でできませんから、たまたまテレビをつけたらやっていた、前後も何もわからないままに観ていたけれど、ものすごく惹かれた、原作も読んでみたいぞ!
とまあ、こういう流れです。
おやおや、車の中で寝ちゃったりもしてますね。首尾よくいかなくて、お姉さんにこうして助けてもらうこともあるのです。
それにしても、連載中の漫画はレビューが難しいです。新刊が出る度に、書き加えるだけでなくて、過去部分の印象も変わるし、伏線が回収されたりしたら根本的な書き直しも必要になることがあります。
僕自身の「書き方」や「切り口」なんかも、徐々に変わってきたりしますし。
でもまあ、新旧おりぜて、色々取り上げていきたいと思います。
(85-323)