【 夜叉少女/服部あゆみ 】
夜の公園。気がつくと、女子高生夕香の足元に、同級生美樹が血まみれになって倒れていました。
「私が殺した?」 でも、そんな記憶はない…。
夕香は家に逃げ帰ります。
それから一週間。美樹は学校に現れませんが、死体が発見されて事件になるというのもありません。その日、部室には腐乱死体のような異臭が漂っていました。クラブ活動は生物部でしょうか? 先日、マウスが逃げだして、捕まえそこねた一匹がどこかで死んでいるのではないか、ということになります。異臭の元らしいロッカーを開けたら、マウスの無惨な死骸が。それを見て卒倒した夕香は保健室に運ばれます。
その頃から、時おり感じる得体の知れない気配。そして、現れる美樹らしい顔面腐蝕状態のゾンビや、沸いたウジ虫。実在か、幻覚か? ともあれ恐怖からあげた悲鳴に駆けつけた母親は、さらに後ろから追う美樹のゾンビに刺されます。
その様子を隣家のおばさんに見られ、「人殺しー!」と叫ばれて、夕香は逃げます。逃走中、車道に飛び出したために車に跳ねられ、入院。しかし、夕香は4階の病室からぴょーんと飛び出してまた逃げます。
そういえば、自宅から逃げた時も、2階の自室の窓から飛び降りていました。
どうやら夕香は、人ならざる者のようです。
夕香が感じていた気配は、夕香を守護する者。夕香は夜叉の王(の候補)。夜叉の王は、同時に2体人間界に現れ、戦い、勝った方が夜叉の王になるのです。
美樹はもう1体の夜叉の王の候補。公園で倒れていたのは、夜叉の王(の候補)同士の戦いのあとだったのです。本来ならこの時、相手を喰らい、その力をも自分のものとしなければなりませんが、夕香はそうしなかったために、ダメージから回復した美樹から、再び狙われることになります。
美樹にも守護がいて、さらに夕香は警察からも殺人容疑で追われます。
夜叉は人を殺め、その血をすすってエネルギーとするのですが、そういうやりかたを、「人間なんかただの餌」と割りきる美樹と違って、納得できないでいる夕香。力の差は歴然です。その夕香に、「まだ殺人者と決まったわけではない」と力を貸してくれる刑事と、夕香の母が彼女に与えた力によって、夕香は美樹に勝利します。
それとは名前は出てきませんが、風見斎シリーズと同様に、道教がベースになったオカルトかなと思います。
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