漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 LICENSE/小手川ゆあ 】

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 ライセンスとは、行政執行代理人の資格のことで、民間人が罪人を逮捕することのできる資格のようです。裁判所でライセンスを見せれば指名手配犯のリストがもらえるとか…。ですが、行政執行代理人が現代の「賞金稼ぎ」と呼ばれるのは、そこではありません。

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 拘置所が満員になるのを防ぐため積極的に保釈を行うようになり、保釈金が払えない者は保険会社に保険金を払い、高額の保釈金を払ってもらいます。逃げなければ保釈金は却ってきますから、保険金が保険会社の収入になるわけですが、逃げたら保険会社は保釈金まるごとパー。そこで、行政執行代理人に依頼して逃亡者を確保、保険会社が行政執行代理人へ報酬を払い、それを称して「賞金稼ぎ」と言われています。

 刑事の仲間(刑事仲間ではなく、仲間という名前の刑事です。ややこしいネーミングしないでー!)は、交通事故で婚約者を失い、杖がなければ歩けない後遺症を自らも負います。この事故を起こした運転手は飲酒運転だったようですが、逃げています。それを追うために、刑事をやめて、行政執行代理人の資格を取りました。

 コンビを組むのは18歳の比奈子。ヒラヒラの服を着て熊のぬいぐるみを持ち歩くような子で、おおよそ凶悪犯と対峙できるような風体ではありませんが、運動能力は高く、喧嘩にも自信があるようです。

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 基本線として、仕事を請け負い、とっつかまえては、新たな仕事を請けるの繰り返しの中で、物語全体を構成する大きな展開が完結して、連載終了なのだと思っていました。その基本線を逸脱する「探偵業のような人捜し」というお話しもあります。
 不穏な警備会社WSAなんてのがいわゆる敵対組織的な存在として登場したり、思った以上に急展開していきます。

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 漫画のストーリーでは、時として、中間のややこしくてメンドクサイ部分をすっ飛ばして描く手法がありますが、この作品はそれがほとんどないのが好感もてるんです。その細かいところをイチイチ描く。

 男性用サウナへの突入でも、メタルの館の最上階へ行くのでも、そこへの道程がきちんと示されています。こういうの、好きです。

「情報屋に調べさせる」で、「その結果をもらう」といった具合に、省略されてしまってる部分もありますが、そこは許容範囲です。

 話はそれますが、途中経過でイラッとさせられるのは、将棋漫画です。どうやったらその局面になるのかぜーんぶすっ飛ばして、しかも、見せたい局面でも酷い作品になると盤面全体を描かず、物語の都合のいい場所だけを描く。勝負そのものではなく、人間ドラマを見せたいのでしょうが、そこまで省略するなら将棋でなくてええやろ? と、思うくらいです。ここまで書いたらどの作品を批判してるのか、わかる人にはわかると思いますが、つのだじろう先生の「5五の龍」のような、途中の棋譜までしっかりと描く漫画を読まされたら、その域に達してない後続の将棋漫画には、「うーん?」とならざるをえないのです。

 さて、LICENSEはそのメインの局面、すなわちアクションシーンに至るまでのディティールの描写が丁寧です。

 そして、3巻ラストで、格闘に自信のある女が2人、対峙します。そして、ええとこで、「次巻につづく」です。
 このあと、どこでどう見失ったのか、新刊を見かけなくなり、長い間放置状態だったのですが、ようやく4巻をゲット。アクションシーン、なかなかの見物です。きっちりブチのめしてます。比奈子と対決した莉央も、喧嘩慣れしていたのですが、悪質な合成麻薬とアルコールを接種しており、さらに激しい運動(比奈子との対決)のため、心不全を起こして倒れ、警察が踏み込んだ時には意識がなく、比奈子は傷害の現行犯で逮捕されます。

 すぐに比奈子は釈放され、莉央の意識も回復し、ことなきをえますが、同時に仲間にある情報がもたらされます。それは、仲間の婚約者を殺した犯人についてのものでした。

 え? そこにたどり着いたらお話は最終回になるじゃないですか。それとも、その情報はガセだったとか、そういうオチ? あるいは、一歩近づいたけれども、そこから先は途切れていて、さらに探らないといけない状態におかれつつ、別の事件を追うみたいな流れ?

 情報で得られた地へ出向く、聞き込みをする、立ち寄りそうなところを張り込む、尾行する、時には空振りもある、などのプロセスをきちんと踏みますし、先に書きましたように面倒そうなことを省略したりしていません。

 比奈子と、新しく加わった莉央は、犯人尾行中に気付かれ、男1人vs女2人のアクションシーンが、電車の中でくりひろげられます。そして、ついに犯人確保。プロセスはきちんとたどっているのに、なんかあっけなさを感じてしまいました。

 犯人をとっつかまえたのが仲間ではなく彼女たちで、電車内で格闘が繰り広げられたため、そこへ仲間だけでなく、警察やら鉄道の社員などもかけつけたので、仲間が「復讐」か、「確保」か、などと葛藤することすら許されない状況になってしまっていたため、物語の厚みが出なかったかな、とも思います。

 作者としては、当初はそういうことも考えていたけれど、ラストシーンを迎えるにあたって、あえて仲間が復讐しようとすればできうる状況を作らないようにした、ということなのかもと思ったりもしています。

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