漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 目玉焼きの黄身いつ潰す?/おおひなたごう 】

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 ゆるキャラスーツアクターをつとめる田宮丸二郎はその日、自分の部屋で恋人と初めての朝を迎えました。恋人の名はみふゆ。売り出し中の漫才コンビ「魑魅魍魎」の魍魎で、ボケ担当です。
 彼女が用意した朝食は、ご飯、味噌汁、目玉焼き(付け合わせにウインナーとほうれん草のソテー)です。
 目玉焼きに何をかけるかなー? と、みふゆが用意した調味料の数々に、二郎は目を丸くします。

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 醤油、ソース、塩、胡椒、ケチャップ、ポン酢、七味、粉チーズ、カラシ、わさび、マヨネーズ、食べるラー油、何かわからないものもありまます。
「醤油以外あるのか?」と言う二郎に、人それぞれと答えるみふゆ。
 食べ方の流儀で人間関係をギクシャクさせてしまう二郎の行く末がここに暗示されてるのです。

 幸いみふゆも目玉焼きには醤油でしたが、その食べ方が異なりました。二郎は黄身を潰して垂れた黄身を白身や付け合わせで掬って食べます。一方みふゆは、白身部分だけを先に食べ、最後に残った黄身を箸で器用に持ち上げ、一気に口の中へ。

 潰した黄身でお皿が汚れるのがイヤだからと理由を説明するみふゆに、思わず二郎が放った言葉、それは「おまえ、バカか?」
 そして、ページをめくると、みふゆはいなくなってました。
 ゆるキャラチームのリーダーである近藤に、二郎は相談します。そして、近藤が示した食べ方は、途中まではみふゆと同じ。黄身を残して白身だけを先に食べます。そして、残った黄身はお茶碗へ。醤油を垂らしてかき混ぜて、ごはんと一緒に掻き込むというものでした。

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 たまたま手元にこの漫画を持ってるときに、数人で呑んでいたのですが、偶然目玉焼きの話題になり、漫画を鞄から取り出して見せたところ、「黄身だけをご飯にのせてグチャグチャにかき混ぜてから韓国海苔で巻いて食べる」という人がいました。これはこの漫画にも無い食べ方です。上には上がいるものです。

 さて、「食べ方の流儀は人それぞれ」と二郎がこの時学んでいれば、あんなことやこんなことは起きなかったのですが、それでは漫画が進みません。二郎は食べ方の流儀で様々な困難に出会うことになります。

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 次は豚カツのキャベツを食べるタイミングです。二郎はまずカツを食べ、カツが口の中に残ってる状態でキャベツや白飯を食べます。でも、みふゆは、豚カツを食べたあとに、キャベツを食べます。脂っこくなった口の中を中和させるためとのことです。それをきいた二郎、豚カツを食べれば脂にまみれるのは当たり前で、中和させるくらいなら最初から食うなと言ってしまいます。
 次のページでは、やはりみふゆはいなくなっていました。

 ちなみに近藤は、カツとカツの合間に少量のキャベツを中和のために食い、残りは最後にソースをかけて飯とともに食う「おかず食い」、近藤の妻は、カツを食べてる間は一切キャベツに手を付けず、キャベツはキャベツだけで食べる「サラダ食い」です。
 これだけ違う食べ方を見せつけられても、まだ二郎は学びません。

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 次に二郎は、カレーライスの食べ方に悩みます。ルーとライスの境目から、ちょうどいい量のライスとルーをスプーンにとって食べ続けると、その位置でルーとライスがふたつに分かれてしまう、というのです。ゆるキャラチームの仲間である大貫が一緒に食事をしていましたが、彼は最初から盛大にかき混ぜました。みふゆにもきくと、彼女はごはんだけの部分は辛さからの逃げ場なのだと言います。そしてついに近藤から、カレーを「全がけ」で頼むという実践を見せつけられ、「頼めるんだ…」と、カルチャーショックを受けます。

 僕も知りませんでした。というか、思い付きませんでしたよ。そんな風に注文するなんて。ちなみに僕は家では「亜全かけ」です。基本的に全かけですが、周囲に白飯だけの部分があっても気にしないというものです。

 物語はさらに、洋食のライスの食べ方(フォークの背に乗せるのか?)や、ミカンの皮の剥きかた、刺身をつける醤油にワサビを溶くか溶かないかなどに展開します。

 そしてついに、二郎はゆるキャラショーの主役である「どくフラワー」をおろされ、恋人のみふゆにかけた電話は「この番号は使われておりません」になってしまいます。みふゆは、二郎に内緒で番号を変更してしまったのです。

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 みふゆは漫才コンビ魑魅魍魎の相方、千夏に二郎とのことを相談します。一方、「どくフラワー」の新しいスーツアクター靖雄は、どくフラワーにはやはり二郎が入るべきと言います。その理由は、どくフラワーは鼻垂れキャラであり、公演を終えると二郎は必ず鼻が垂れていて完全にシンクロしていたことがわかるが、自分は鼻が垂れないから、というよくわからない理由です。そのそれぞれの相談の場面では、苺ショートを食べながら、でした。二郎とみふゆが付き合い始めたのも「苺ショートの苺は最後までとっておく」という共通の食べ方に惹かれあったからだという秘密が明かされます。

 ここで二郎は起死回生のための行動をとります。苺ショートを買い、みふゆのアパートへ向かうのです。携帯の番号は変えてても、別に引っ越しまでしたわけではありません。さらに2人は苺が3つ載った苺ショートを食べにでかけて、苺を存分に堪能して、本格的に仲直りをします。

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 さて、話題は続いて「つけ麺」。ぬるくなるのにどうしてつけ麺を食べるのか? そして、「焼き鳥」。串から外して食べるのか、そのまま食べるのか? さらには卵かけご飯の食べ方、おにぎりのかじり方と、呆れるほどにどうでもいいことがネタになります。

 キャラも増えてゆきます。きぐるみショーのMCをつとめる結構可愛い亜紀ちゃん(女性キャラはみんな可愛いんですけどね)、ワードバスケットというカードを使った尻取りゲームの名手、服部など。服部はワイルド系の男です。

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 スランプを脱した二郎は、主役の「どくフラワー」のスーツアクターに復帰しますが、今度は魑魅魍魎(女性2人組漫才コンビ)が仕事の悩みを抱えます。ネタは面白いのにイマイチブレイクしません。
 その原因は、10点のネタを10個してても、100点のネタを一発かますのとは違う、一本調子でメリハリがない、というものでした。コンテストでも良い成績が残せません。

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 おまけにまた、二郎とみふゆに危機が訪れます。パンと目玉焼きの食べ方で揉めます。スキーリゾートに1泊旅行に行ったのですが、その朝食でみふゆは、目玉焼きの黄身を崩して食べたのです。二郎はせっかく白身だけを先に食べ、黄身を残す食べ方をみふゆの流儀に合わせて習得したのに、納得がいきません。みふゆがそんな食べ方をする理由のひとつは、皿を汚したくないから、というものでした。しかし、洋食の場合、皿にこぼれ出た黄身は、パンで拭って食べることができるのです。

 ショックと怒りでろくな防寒具も持たずにホテルを飛び出した二郎。遭難したところをとある飲食店の店主に救出され、洋食での目玉焼きの食べ方を指南してもらい、1夜のお世話にまでなってしまいます。もともと1泊旅行だったわけですから、当然といえは当然ですが、ホテルに戻った二郎にフロントマンが言い放った冷たい言葉は、「お連れさんは、先に帰られました」でした。

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 次に二郎は、ゆるキャラ仲間の大貫とかき揚げ天ぷら蕎麦を食べますが、またショックを受けます。大貫は「天地返し」を行い、かき揚げを鉢の底に沈めてしまいます。かき揚げは「後のせサクサク」であるべきと思っているので、大貫に真意を問うのですが、駅の立ち食い蕎麦と、本格的な蕎麦やでの「かき揚げ天ぷら」は、そもそもよりベターなかき揚げの食べ方が違うのだと近藤に教わります。

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 目玉焼きの食べ方でまたもやキレた二郎、みふゆはその相談を相方の千夏にしていた頃、スパゲティをスプーン上でくるくる巻く食べ方は男らしくないと、二郎は服部から指摘され、スプーンを使わずに麺をフォークに巻く技術を学びます。よくまあこれだけ食べ方の流儀があるものだと感心しますが、作者は家族や漫画家仲間や編集者などに熱心に取材し、そこへ自分の幼少体験も交えて作劇していることが示されています。このエピソードがまた面白いんです。

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 良いところまで行きながら今一歩ブレイクに至らない魑魅魍魎。そこへ芸人仲間の宮さんが言い寄ってきて、そこそこいい雰囲気になってきます。二郎はかつての同級生カオルと再会、パンケーキの食べ方の違いに驚きます。おおひなた先生には珍しく、ギャグ漫画風デフォルメがなく、正当派の美女です。ニックネームが学級委員長をしてたことから、「委員長」です。美女で才女なのです。、当初(小学生の頃)からの憧れもあり惹かれてゆきます。彼女は何枚か重ねたパンケーキに、バターやシロップを染み込ませて食べたいといつ信念から、独特の食べ方をします。

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 二郎はみふゆとの仲がうまく行ってないことや、委員長への憧れをほのめかしますが、委員長は「ケリをつけてから」と言います。その言葉通りに行動した二郎、しかし最後には委員長にふられます。委員長流の「全てにシロップを染み込ませたい」を、完全に理解できていなかったからです。

 おまけに二郎は、社長との仲にも亀裂が入ります。焼き肉の時に白飯を食べたからという理由です。二郎は幼い頃、ごちそうと言えば家族揃っての焼き肉でした。幼い二郎にとって、それはとても贅沢な「おかず」であり、焼き肉と白飯を同時に食べるのは至福のひとときだったのです。しかし、白飯で焼き肉を食うなど、社長にとっては邪道であり、タブー。その事を知っていた他のメンバーは社長の前でそんな食べ方をしません。二郎はまたもや、食の流儀で人間関係に支障をきたすのです。

 焼き肉の件はメンバーの理解を得られ、社長も二郎にすまんと伝えて落着、魑魅魍魎も漫才グランプリでついに決勝まで進むことになり、食の方では、チャーハンの食べ方、かき氷のシロップをかけるタイミングなどがネタになります。二郎とみふゆは、まだ気まずいままですが、みふゆが、新たに心惹かれた宮は、実は食べ物に感心がなく、みふゆの手料理にも「おいしい」とは言うものの、食べ物なら何でも美味しいと知って、みふゆはこれ以上やっていけないと感じます。

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 握り寿司ネタを挟んで、二郎は魑魅魍魎が出演する漫才グランプリの応援に行きますが、結果は惨敗。しかし、決勝まで進んだことは快挙です。二郎はみふゆと千夏を連れて「湯豆腐」の打ち上げをします。そこでも食べ方の流儀で揉めますが、なんとその場では千夏が異端、二郎とみふゆが共通の食べ方をします。ただし、豆腐の選択を誤り、二郎は落ち込みます。とはいえ、二郎とみふゆはこれで元サヤに、収まったかに思えました。

 ところが二郎、みふゆが残していたバームクーヘンの外側を「食べ残し」と勘違いします。みふゆは一番美味しい外側を最後に残してた、だけであって、その楽しみを奪われたため、二郎はみふゆの怒りを買い、部屋を、追い出されてしまいます。あーあ、せっかく仲直りしたのに。
 でも、このバームクーヘン剥がし事件で、とりあえず二人は仲良しになれそうです。

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 二郎も自分の食べ方だけのことで周囲を混乱させてたのが、マゼラー大貫のハンバーグに関する悩みを聞くなど、少し成長したのかもしれません。そんな二郎に、劇団を主宰している笠原という男から、二郎を主役にした「目玉焼きどう食べる?」という舞台の話が舞い込みます。二郎役を二郎本人にやって欲しいという依頼です。どくフラワーショーも好評で、第2弾の製作が決まりました。カップ麺を食べるとき、蓋を完全に剥がすか、ある程度めくった蓋をつけたまま食べるのかというしょうもないことで悩んでいる場合ではないのですが、スーツアクターを辞めて舞台俳優になるか、スーツアクターを続けるかということよりも、二郎にはカップ麺の蓋が大切なようです。

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 一歩を歩き出さないといえないと、二郎はスーツアクターをやめて舞台俳優に転身する決意を固めますが、近藤にそれを言おうとしていた朝、後輩の靖雄が映画のオーディションに合格したため退団すると近藤から発表がありました。カップ麺の蓋で悩んでいる間に二郎は先を越されてしまったのです。

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 2人も急に辞めたら着ぐるみショーはどうなるのか? 近藤に「辞めたい」と伝えることができないまま、舞台のメンバーの顔合わせが行われるなど、事態はどんどん進行していきます。牛丼に紅ショウガをメガ盛りする食べ方がどうのこうの言ってる(やってる)場合ではありません。人生の岐路とも言うべきこんな時でさえ、食い方の流儀から離れられません。

 みふゆに「大切なのはジロちゃんがどうしたいかでしょ?」と言われて、ようやく近藤に伝えます。近藤は「自分の可能性に挑戦しようというやつを引き止めない」と、快諾します。

 おーい、この漫画、ギャグ漫画じゃないのかよー?

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 こうして二郎は舞台俳優の道へ進みます。といっても、ド素人の転身ではありません。どくフラワーのスーツアクターとしてステージには慣れているはずです。なのに、ちっとも演技が様になりません。自分自身の役なのに演出からNGを出され続けて、とうとう練習スタジオから飛び出してしまいます。
 着ぐるみを着ているときは、「台詞」がない。それが大きな違いだったのです。

 脚本と演出は、もう二郎をおろして代わりの人間を探すことも視野に入れ始めます。

 そしてついに、二郎はいったんクビになってしまいます。しかし、その窮地を救ったのが、演出さんによる特異なラーメンの食べ方だったのです。巻き起こる問題を食べ物で解決するって、「美味しんぼ」か? これはギャグ漫画じゃないのか? どーなってるんだ? 絵のタッチもギャグ調でなくなってきてるような気がします。

 そうこうしてる間にも、食べ物ネタは尽きません。
 サンマのハラワタ、餃子のタレなんかが出てきます。

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 そして、ああ、なんたること、魑魅魍魎の2人、みふゆと千夏が食べ方で揉めて気まずくなってしまいます。食べ方で揉めるのは二郎の専売特許のはずなのに、です。
 そこへみふゆに、ピンの仕事が舞い込みます。ドラマのヒロイン役です。食べ方で揉めて以来、気まずい二人。関係者といるときはそういう姿を見せませんが、仕事が終われば、千夏はさっさと楽屋を後にします。ピンでの仕事を引き受けるかどうか悩むみふゆ。千夏に打ち明けるタイミングも掴めません。

 先に口火を切ったのは、千夏でした。恋人(外国人)の子を妊娠したから、結婚して彼の母国へ渡り、魑魅魍魎を解散したいというのです。みふゆもドラマの話を打ち明けることができて、ちゃんと話ができた二人は和解して漫才コンビ解消となります。
 味見もしてないのにいきなり調味料問題、焼き鳥は塩かタレか、ハンバーガーを上手に食べられるか、ソフトクリームをどう舐めるかとか出てきます。

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 二郎はというと舞台の初日を無事、成功させます。芝居は口コミで評判を呼び連日満員。好評のうちに千秋楽を迎えました。このまま舞台役者を続けるかと二郎は問われますが、彼は着ぐるみのスーツアクターに戻ると宣言します。
 ただし、彼の居場所がまだあるかどうかは、わかりません。「フラワー企画」(初めて名前が出てきたのでは?)に戻った二郎は、近藤がずっとどくフラワーの代役をつとめていて、二郎の復帰を待っていたことを知ります。

 これで、めでたしめでたしかと思いきや、みふゆの恋人が「どくフラワーの中の人」と知ったドラマの相手役(つまり、主役)の黒野ホルムが、スーツアクターの道に進みたいと、二郎たちの事務所入りを希望します。それを引き留めてほしいと二郎は黒野のマネージャー若月メタに依頼されます。ソフトクリームの舐め方で二郎とみふゆはまた揉めていたのですが、二郎とメタは舐め方で意気投合、一夜の過ちをおかしてしまうのです。メタのソフトクリームを舐めるシーンは、エロいです。

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 二郎が無連絡欠勤してる間に黒野はフラワー企画に入ってしまい、しかもさっそく「どくフラワー」の代役までしてしまったことで、二郎は何もかも無くしてしまったような気持ちになります。
 黒野のどくフラワーは実はボロボロで、そう簡単にどくフラワーはこなせる役ではないと思い知り、ますますやる気をだして前向きになる黒野。そんなことは知らない二郎。近藤は二郎の性根を叩き直すために手を上げるのですが、感情が激して止まらなくなってしまい、入院を余儀なくされるほどボコボコにしてしまいます。

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 二郎の入院中にもお話は進み、枝豆の薄皮は食べるかどうかとかいうどうでもよさそうなネタだけでなく、最後のひとつ(いわゆる遠慮のかたまり)が題材になり、食品ロスといった社会派ネタまで飛び出します。いやいや、これ、ギャグ漫画でしょう? コーヒーと砂糖の話なんて、完全なグルメ指向で物語は展開します。すごいな、この漫画。

 メタと連絡を取り合って二郎は会うことになりますが、入院中の二郎にかわって、見舞い中だった服部が出向きます。そこで、ワードバスケットと枝豆の薄皮によりおそらく全てが解決、クリームシチューが「おかず」になるかどうかという従来の路線に戻っていくのです。
 この枝豆の剥き方とか、薄皮の剥ぎ方とか、絶対エロ漫画を意識して描かれていると思います。おおひなた先生、遊びますねえ。

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 物語全体を揺るがしかねないゴタゴタが解決したところで、二郎とみふゆは結婚を意識しはじめます。そんな折り、二郎は「お店で瓶ビールを飲む男」と知り合います。二郎は「瓶なら家でも飲めるから、外では生を」派なのです。時を同じくして、みふゆはクラフトビールの新しいお店を見つけて、2人してビールの奥深さにはまってゆきます。またまた揉め事がおこりそうになりますが、新人の黒野の気配りでことなきを得ます。

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 食べ物ネタはさらに、オムライス、和食の配膳(食器の並べ方)に移ります。
 ある日、「どくフラワー」の中に入ったまま、休憩中に寝てしまった二郎、近藤に訊かれるままに、みふゆとの結婚や将来のことを考え、深夜にアルバイトをしているのだと打ち明けます。それくらいなら正社員にならないかともちかける近藤。

 二郎もその気になり、社長面接を受けることになります。面接といっても和食の食事会です。二郎はそのとき、配膳された食器を自分流におき直すのですが、これに社長が激怒します。食器の配置は日本の伝統礼法に基づいているからです。

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 和食のマナー教室に通ったり、人の意見をきいたり、なんとも前向きな二郎。おかげで、自分流を通しながらも社長に認められ、正社員になることができました。

 残すはプロポーズです。意を決して二郎はみふゆに、結婚を申し込みます。このとき、正面で向き合っていればよかったんでしょうけど、ことの成り行きで二人は横並びです。そして、二郎がふと横を見ると、みふゆがいません。彼女は飲み過ぎで地面に突っ伏していました。
 それはそれとして、改めてプロポーズする二郎。受けるみふゆ。これでめでたく二人は婚約、と思いきや、またまた問題発生です。

 今度は、お箸の持ち方と、ご飯の食べ方が問題になるのです。
 お箸は「正しい」とされる持ち方に共通認識があり、それが実践できるかどうかだけなのですが、ご飯の食べ方というのは大きな問題です。
 二郎は、おかずとご飯を同時に食べ(これを、口内調味という)、みふゆはそれぞれ別々に食べるのです。

 二郎は近藤にすすめられて、ごはんとおかずを別々に食べてみます。すると、ごはんがいままでより美味しく感じたのです。白飯の甘味を強く感じます。非口内調味は、おかずを合わせない分、飯の美味さが引き立つのだと近藤は言います。
 それを電話でみふゆに伝えますが、みふゆはそういうことでは無いのだと言います。
 ご飯とおかずを別々に食べるのは、小さい頃から躾られた作法なのだ、と。

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 ここまでで10巻なのですが、まだ続きます。短ければ3巻、長くても5巻だろうと、当初は思っていました。
 作品が面白くないから続かないとかいう意味ではありません。文句なく面白いです。でも、こういう作品って、面白いからこそ、デカイ花火をボンボーンボンっと打ち上げて、最高潮のうちに幕引きでしょ? みたいに考えてたからです。

 ところがなんと、10巻です。
 10巻の帯には、「TVドラマ化もされ大きな話題を呼んだプード・ギャグ! 食の作法から生き方を問う、激震の第10巻」とあります。
 そして、10巻の巻末の次巻予告は、「食べ方が同じでないと、本当に人と人は愛し合えないのか!? 価値観の違いを乗り越えた、人間理解の真髄を問う、壮絶グルメドラマ、第11巻へ!」と、あります。
 うわー。壮絶グルメドラマになっちまったよ…。

 ちなみに、ドラマ化以前に、アニメにもなっています。あとは舞台を残すのみですね。宝塚歌劇になんないかなあ?

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 二郎は食事中に鏡をみる機会があり、食べながらどんどん口の中にあらたな食べ物を追加していく際に口の中が見えてしまう汚ならしさに気がつきます。

 みふゆの言う躾とは、これだったのです。

 おかげで、みふゆとも仲直りができ、月見そばの黄身はどう食べるかというこの漫画の基本中の基本にいったん立ち返ったあと、ついに二郎は「お嬢さんをください」と言うために、みふゆの実家、青森へ向かいます。

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 みふゆの家は父子家庭です。父が一人で住んでいます。そして、みふゆの大好物である筋子を用意して待っていました。

 食べ方マナーを習得していた二郎も父に認められ、さあこれで結婚への道筋が整ったと思いきや、みふゆのために用意した筋子があまりにも美味だったため、二郎は一人で全て食べてしまい、父の逆鱗に触れます。ああ、また揉め事です。

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飛び出した二郎は、故郷の秋田へ向かっていました。携帯はみふゆの実家で充電のためコンセントに繋がれたまま。このため、みふゆからは連絡がとれません。

 幸い二郎は、旧友に助けられて、美味しい筋子を入手、それを手土産にみふゆの実家に戻り、みふゆの父も大人げなかったと謝罪、みふゆも故郷の友人と久しぶりに会い、助言を得ます。

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 東京に戻った二人、またいつもの時間が流れます。二郎はゆるキャラショーの仲間と、仕事を終えて食事へ行きます。ここで、マゼラー大貫が「一口ちょうだい」を発動、後にみんなが、これを快く思っていないことを知ります。
 何人もの話を聞くうち、「ダメ」な人と、「平気」な人、そして「相手による」という人がいるのだと理解します。
 そこで大貫は、秘策を編み出すのでした。

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