漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 7SEEDS ①/田村由美 】

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 地球に巨大な隕石だか小惑星だかが衝突するとわかって、各国は協力しあって様々な手を打ちます。
 しかし、その全てが失敗したら? そのため人類は、最後の保険をかけました。それが「7SEEDS計画」です。
 健康で優秀な青少年を冷凍保存し、未来の地球が人類の生存できる環境になったら解凍して放出し、未来の地球上に人類を送り込むプランです。
 人類滅亡の可能性が極めて高いその巨大隕石だか小惑星だかの衝突は、パニックをさけるために公表されず、計画は秘密裏に進められます。
 未来で解凍放出された選ばれた人々は、その出来事が起こった瞬間、既に冷凍保存されていたわけですから、本当の所は何が起こったのか全く知りません。長い眠りにつかされ、そして、気づいたら、これまで生活していた日常とは全く異なる、見覚えのない世界でいきなりサバイバルを余儀なくされるのです。
 未来へ送り込まれるのは、7人1チームに事情を知るガイド1人を加えた8人編成で、各国ごとにこの計画は進められ、日本では5チームが作られました。春夏秋冬の名前がつけられ、夏チームだけはAとBの2チームがあります。

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 さて、ここでちょっとお勉強です。まず、地球にそんなものが落ちてくるの? というお話から。はい、落ちてきます。流れ星は地球に落ちてくるちいさな天体です。○○座流星群、というくらいですから、ものすごいたくさんの微少天体が毎日のように地球には降り注いでいます。ただ、大気との摩擦で燃え尽きてしまうのです。でも、それでも隕石があるように、燃え尽きずに落ちてくる小天体があるのです。
 そんなことになったら、地殻変動や火山の噴火、海上なら大津波と水蒸気、地上なら粉塵が、撒き散らされます。太陽光が届かなくなり、地球が冷えます。恐竜の絶滅もこれだったというのが定説です。
 地球に小惑星がぶつかるというのも、そんな途方もない話ではありません。小惑星探査機「いとかわ2」が先日到着した「りゅうぐう」も、地球に衝突する危険性のある星のひとつです。

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 中央に居住スペースとなりうるドームテントを備えた円形の救命ボートに乗り移った岩清水ナツ(高一)は、暴風雨の中、さっきまで自分がいた船が沈んでゆくのを見ます。自宅の寝室で寝ていたのに、なぜこんなことになっているのか、全く理解できません。自分のリュックが用意されていたり、寝間着ではなくちゃんとした服を着てスニーカーを履いた状態であることにも違和感を覚えます。
 救命ボートに乗ったのは4人。嵐も収まり、漂着した小島に上陸して、自己紹介をします。青田嵐(高二)、麻井蝉丸(18歳)、早乙女牡丹(どうせわたしが一番上よねと言い、年齢は語らず。20代後半か?)が、ナツ以外のメンバーです。家で寝てたはずなのに、気がついたらこんなことになっていたと、皆が口を揃えます。牡丹は事情を知る「ガイド」ですが、この場ではまだ名乗りません。
 事情(未来の地球にいる)を知らないメンバーは、救助がくるまでとりあえず生き延びなくてはと考えて行動します。地面にHELPと書いたり、水や食料を探したり、です。
 山に登って上から見ないと島の全体像が把握できそうにないので、一行ら高地を目指しますが、鳥や虫などが少ないのではないかと牡丹が気づきました。それもそのはず、食虫植物が異様に巨大化した「食獣植物」の島だったのです。

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 ナツと嵐が食獣植物にとらえられた時、百舌と名乗る男(年齢を含めた自己紹介はない)が助けてくれます。その後、別の3人に出くわします。他にも人がいたのです。
 天道まつり(女、16歳)、守宮ちまき(男、美大1年)、草刈蛍(女、12歳)です。3人は湿地帯で足をとられてい動けないでおり、しかもワニ数匹に迫られていました。
 牡丹と百舌により救出されますが、この時牡丹は負傷します。山頂へはナツと嵐が向かい、島の周囲の状況を確認します。絶海の孤島でした。
 8人揃った所で、牡丹は7SEEDS計画のこと、自分がガイドであること、このチームは「夏のBチーム」であることなどを告げます。夏にだけBチームがあるのは、純粋培養された優秀な人間だけでは、過酷な環境で生き残れるか不安なので、健康面では問題ないが、いわゆる落ちこぼれを集めたのだといいます。
 ガイドは牡丹てすが、百舌はさらに年齢が高く、一般メンバーと異なり、事情を何か知っていそうです。
 ともあれ、ここが日本の本土ではないことを知った一行は、いかだを作りその上に救命ボートをのせて、島から脱出します。

 嵐には、花という恋人がいました。この「未来の地球」がほんの数年後であれば、花の生存確率は極めて低いとは家、一縷の望みを持つことができます。しかし、数十年後だとすれば、その望みはさらに低いものとなり、百年を越えるような時が流れた後ならば、まったく希望はありません。
 何度となくそんな思いに駈られながらも、まずは生き延びていかねばなりません。
 とにかく今が「いつ」なのかがわからないので、望みをつないでいいのかどうかもわからない状態です。これは、今が遥かな未来であり、2度と会うことができないと確定しているよりも、精神的に辛いことなのではないでしょうか。

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 その花は、実は春のチームの一員として、同じ世界に送り込まれていました。
 春のチームもまた目覚めた時は海の上で、離れ小島に漂着していました。ガイドの柳というオッサンから、7SEEDSプロジェクトの話をきかされた一同。やはり、にわかに信じることができずにいます。信じる信じないに関わらず、サバイバルを強いられるのは夏Bチームと同様です。しかも、島の状態は夏Bチームより過酷でした。
 彼ら彼女らは、島に上陸して生活ができないのです。何故なら、上陸したら約1分で巨大なムカデのような虫が彼らを襲ってくるからです(後に作品内で「フナムシ」と称されています)。仕方がないので春チームは短時間の上陸を繰り返しては物資をかき集めて、海上に設置した筏の居住スペースに運んでいました。
 また、この島には河口がなく、淡水を補充する術がありません。しばらく雨が降らなかったため、飲料水にも事欠くようになってきました。

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 このチームのメンバーは、ガイドの柳(オッサン)、末黒野花(17歳)、野火桃太郎(12歳)、雪間ハル(男、16歳)、甘茶藤子(17歳)、角又万作(18歳)、鯛網ちさ(18歳)、新草ひばり(女、12歳)で、ひばりは解凍に失敗したらひく、眠ったままです。
 柳とチームのメンバーの関係は悪く、ことあるごとに対立します。個々のメンバーは生き抜くために考えたり話し合ったりして行動するのですが、自分と考え方が違うと柳はメンバーの意見を否定し、自分に従わせようとします。その際、生意気だと断定したり、年上の自分に対して敬語を強要したり、やがて暴力で統制しようとしたりもします。花に対しては、俺が本気になれば色んな意味で足腰ガタガタにすることができるとまで言います。
 水を得るため島の内部に入り込んだ一部のメンバーは、巨大フナムシに襲われます。さらに柳は、やはり巨大なカマキリ(桃太郎によるとむしろワレカラに似ているとのこと)に刺されます。
 一行は水と食料を貯め、筏も強化して、島からの脱出の準備をしますが、その間も柳の様子はどんどんおかしくなっていきます。柳は刺されたときに卵を産み付けられていて、柳の体内で成長したカマキリ(ワレカラ)の幼虫に内側から食べられていたのでした。
 その日、筏で島を離れることに花は反対します。空気の匂いから天候が崩れるとよんだからです。しかし、柳は強行。おかげで嵐にあい、筏は分解。流されて元居た島に逆戻りしてしまいます。筏を強化して再出発の準備を進める中、柳は内側からどんどん虫に食べられ、正気を失います。一度は虫の住処に一行を誘導しますが、彼らを守るため虫に蝕まれた身体に自ら火をつけ、焼け滅んでいく最中に、情報を与えます。
 春のチームは関東で眠らされていた。海に放出されたのだから西へ進めば陸地に辿り着く(相当南に流されてる可能性も考慮するなら、僕は北西の方がベターと思いますが)。7つの富士を目指せ。そこに生き残る道が。
 そう言い残して燃え付きます。
 音楽家を目指すも結果を出せないでいたハルは、最後のチャンスと思っていたピアノコンクールを目前に、眠らされ未来へ放り込まれたと嘆くのを、本人が諦めなければ最後ではないと花は励まし、オカリナをプレゼントします。器を作るため赤土で焼き物を焼いた際に一緒に作ったものです。それで演奏した「チューリップ」は調子っぱずれと表現されてますから、形がいびつなだけでなく、音程も狂っているのでしょう。
 そのオカリナでハルの吹く軍艦マーチとともに、春のチームは西に向かって船出をします。

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 同じく海上を陸地に向かって進んでいた夏Bチームは、無数の小島が散らばるエリアに着きました。伸ばした手の先だけが海上にある像を見つけ、それが平和記念像であり、現在地が長崎であると一行は気づきます。海水面が上昇しており、平地は海に沈んだことがわかります。
 牡丹は7つの富士に必要な物資が保管されてると言い、大分の豊後富士(由布岳)を目指すことになります。途中、犬のような穴熊のような動物を百舌が捉え、さばこうとすると、嵐がさばきかたの指南を請い、サバイバル生活へ順応するための努力をします。
 由布岳の南側の比較的なだらかな公園部分としか牡丹も知らされておらず、蝉丸は地図とかないのかと言います。僕もそう思いますね。牡丹は、7つの富士の物資倉庫に辿り着くことはマストではない、生活の足しになるというだけでそこが目的地になると本末転倒、地図があっても地形が変わってるかも知れない(無意味)、と答えます。実際、地形は大きく変わっていました。
 それでも無事、一行は物資倉庫に到着。球形をしたそれは、地面に埋め込まれていました。球の内部に数多くの引き出しがあり、種だの道具だのが納められていました。農業をしろということかと蝉丸は憤慨しますが、牡丹は農業だけでなく、漁業、狩猟、工芸などあらゆることをして一生自給自足するのだと言います。
 しばらくこの地に留まって体勢を整えると夏Bチームが決めた所で、ちまきが故郷の熊本を見に行くと宣言、嵐、ナツ、まつりが同行します。
 熊本城址はやはり地面は水に遣ってて、基本、崩壊していますが、石垣がその面影をとどめています。ここがお城だったんだとそれでわかる程度です。由布岳に戻った4人が熊本の惨状を伝えます。
 次は嵐が住んでいた東京へ行ってみると宣言します。恋人の花を探し出す決意をしています。もちろん会える保証はありません。仮に花が何らかの方法で地球規模の厄災を逃れたとしても、それからどれくらいの時間が経過しているかはわかりません。人間の寿命を越える時間が流れている可能性もあります。それでも嵐は花の生存を信じずにはいられないのでしょう。家が埼玉だというナツが同行志願し、二人の旅が始まります。
 春のチームは、横浜、そして東京に辿り着きます。苔むして横転した氷川丸や、海原からにょきにょきと姿を現している新宿の高層ビル郡、富士山は噴火で吹き飛んだようです。
 春のチームは神奈川にある地方富士、経ヶ岳(荻野富士)を、柳が語っていた7つの富士のひとつと検討をつけて目指します。途中、草木や石で目的地を示唆する印を見つけ、それに従います。誰かが先にたどり着いていて、後から来る人のために残しておいたようです。自分達以外にも生存者がいると確信する春のチーム。球形の物資倉庫に着くと、そこには夏Bチームのナツが残したメッセージがありました。嵐とナツは関東にたどり着けていたようです。
 ここまで夏Bと春チームの話が交互に進んでいますが、どうやら同じ時ではないようです。後に作品内で明かされますが、解凍されて地表に放り出された時期は、チームによって差異があるのでした。
 移動ばかりでは身体がもたないと判断した花の提案で、春のチームは経ヶ岳に拠点をおくことにして、村作りを始めます。

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 冬のチームは目覚めた時から5人でした。そして、3体のひからびた死体。場所は北海道。他のチームよりも15年くらい早く放出されたようです。食料は豊富で、悲壮感はあまり漂っていないように感じます。
 しかし、生き延びたのはたった1人でした。5人のうち2人、ガイドとメンバーの1人は、虎に襲われて死亡。残る3人のうち2人が高校球児で、荷物の中にあった野球のボールを、50年に1人の投手といわれている新巻鷹弘が投げ、野手の鮫島吹雪が棒っきれで打ち、虎の顔面にクリーンヒットさせて追い払います。
 近くに怪我をした大型犬がいて、手当てをしてあげます。これが縁で、大型犬は3人に付かず離れず、行動を共にするようになります。
 もう1人の生き残りは、神楽坂美鶴。日本舞踊界のホープで超美少女です。
 3人は、ガイドの熊川から聞いていた7つの富士のひとつ、雌阿寒岳を目指します。季節は秋から冬へと移り変わり、また虎に襲われます。食料となる野性動物が少なくなってきたからかもしれません。吹雪が犠牲になって、怪我を負った新巻を逃がし、雪の舞う夜、美鶴は全ての衣服を新巻に被せて自らは雪の中で舞を披露、そのまま命果てます。
 雌阿寒岳の物資倉庫にたどり着いた時、付かず離れず寄り添ってきた大型犬も息絶えますが、傍には子犬が2匹いました。新巻はこの子たちを、吹雪、美鶴と名付けます。

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 東に向かってる嵐とナツを蝉丸が追いかけて合流。嵐が蜂に刺されて高熱を出し、なす術もなく助けを求めてうろつくナツが、人家を発見します。秋のチームを追放されたガイド、十六夜という男が1人で暮らしていました。
 そこへ秋のチームのリーダー的存在で、一同を支配している秋ヲ(男、20代?)と欄(女、20代?)がやってきて、家畜や食料を強奪し、ナツだけ一緒に来るよう言われます。有無を言わせぬ強引さで、ナツは「人が怖い存在」でもあることを、思い出します。十六夜が同行し、夜になってから嵐と蝉丸も忍び込みます。そこは、物資倉庫神戸富士をベースに作られた村でした。秋のチームは春や夏ABよりも3年早く放出されていて、村を築いていたのです。
 反省会と称するノルマ未達成者へのお仕置き、井戸に毒を入れて皆殺しにしようとする十六夜、物資をネコババしようとして取っ捕まる蝉丸、言葉は使わなければ忘れるからと英語で打ち合わせをする秋ヲと欄は、麻薬のような葉っぱを燃して煙を吸うなど、様々な出来事を経て、嵐とナツと蝉丸は村から逃走、関東へ再出発。

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 地殻変動でフォッサマグマの東西が分断された日本。3人はボートでさらに東へ向かいます。そこは動物も植物も生態系の変わり果てた日本でした。
 草木や石の道案内に導かれ、夏Bチームの3人は経ヶ岳の物資倉庫に辿り着きます。ナツが置き手紙を残し、さらに東京へと歩を進めます。この置き手紙を後に春チームが見つけることになったのは先に記載した通りです。
 地表を海面に覆われ、高層ビル郡だけが地上に飛び出した状態の廃墟の東京を、嵐達も目にします。そこへ襲いかかってくる恐竜のような巨大生物。それを新巻が助けます。
 冬チームの唯一の生き残りである新巻と、嵐、ナツ、蝉丸の4人は一夜を過ごします。経ヶ岳への目印をつけてくれたのはこの人だとナツは見当をつけますが、秋チームとのいざこざがあったからでしょうか、冬チームでたった1人生き残ってる新巻は仲間を犠牲にしてるのではないかと、嵐と蝉丸は信用きれません。夜中にこっそり出発することにしました。こっそりやりとりしていたはずのその会話を新巻は聞いていました。新巻は、この場を去ろうとする3人に、もうすぐ雨季だから気をつけて、東北の方が肉食獣は少ないなどの情報を与えて見送りました。

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 雨季を迎えて新巻は、洞窟の中で慎重に暮らしていました。子犬だった吹雪と美鶴は成犬になり、たくさんの子を産み落とし、新巻はたくさんの犬と一緒に暮らしています。一部の子犬が夜になっても戻ってこないので、探しに出た新巻。そこで恐竜のようなものに襲われ、逃げつつも戦う花に会います。新巻は指笛で犬達に総動員をかけ化け物を追い払います。これが春のチームと新巻の出会いとなりました。

 春のチームは経ヶ岳を拠点として小屋などを建て、暮らし始めていました。そこへ新巻が合流します。サバイバル生活は15年も先輩なので、春チームに様々な情報や助言を与えます。ようやく生活拠点を築き、新巻のアドバイスで雨季も乗り越えようかというその時、花が発病します。腕の皮膚が青紫色にドロドロと溶け出し、それが徐々に広がってゆくのです。
 そうして朽ち果てていく姿を見られたくないという思い、そして、これが伝染病だったら仲間を全滅させかねないという思いから、花は1人、拠点を出ます。
 アテもなくボートで海にこぎ出す花。筏でハルと新巻が追ってきてやっと追い付きます。そして、漂着したのは夏Bチームが最初にいた小島でした。夏Bチームは島を出るにあたって、崖に寄せ書きを掘っていました。花はその中に嵐のメッセージを発見します。
 花の皮膚病には塩水がきくこともわかり、海水を煮詰めて治療に使います。
 一方、仙台に向かった夏Bチームの嵐、ナツ、蝉丸は、名取富士の物資倉庫に到着。彼らが知ってるこれまでの球状倉庫だけでなく、地下に続く通路があります。階段を下りて行くと、そこは海岸から続く洞窟らしく水路があり、クルーザーが用意されていました。これも過去から未来への贈り物のようです。

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