漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 碧いホルスの瞳 ②/犬童千恵 】

 6巻が発行されました。

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 男装のファラオとなったシェプストの治世が始まりました。戦争により領土を広げて国を繁栄させるのではなく、彼女の望みは平和な世。そして、交易による国の繁栄です。しかし、自分の知っている世の中は少なく、本物とはなにかということもわかりません。より広い世界を見渡すには、自分の目だけでは足りないのです。そこでシェプストは、腹心のハプスネブに、「この国でもっとも美しさを知る者」を探すよう命じます。
 こうしてやってきたのが、バネヘンという若い商人です。交易で諸国を巡り、ホンモノを見る目を養ってきたと言います。
 彼は歓迎の宴を不愉快と中座し、では何を望むかとシェプストの問われ、王に伝わる首飾りを所望します。場は「冗談じゃない」「ふざけるな!」という空気になるのですが、豪胆にもシェプストはこれに応じます。王の首飾りは王家の宝物ですが、有能な者の活きる新しい時代は、宝物なんかよりも、もっと代えがたい宝なのだとシェプストは言うのです。

 バネヘンはその才能を遺憾なく発揮し、王宮内の地位を築き、外交官として交易に活躍します。それを面白く思わない人たちもいます。それは、王宮で従来その役についていた役人たちです。

 役人たちは、ハプスネブに何とかしてくれと訴えたりもします。この不協和音をシェプストの耳に入れたのはしかし、ハプスネブではなく、バネヘン本人でした。
 揉め事はごめんだ、仕事に集中したい、従って、古い役人達を切るか、自分を放逐するか、ふたつにひとつである。そうバネヘンはシェプストに迫ります。
 しかしシェプストはどちらも選びません。バネヘンに、役人達へ知識と経験を分け与えろと言います。また、役人達を尊重し、バネヘンもまた彼らから学べと付け加えるのです。

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 さて、シェプスト率いるエジプトは、新たにプントという国との交易を開きたいと考えていました。500年前に交易をしていた頃は、首都メンフィスから数10マイル程度砂漠を隊商が横断していました。しかし、現在の首都はテーベで、プントへむかうための港までの距離は150マイルにもなり、隊商が陸路を進むのは現実的ではありません。そこで、紅海とナイル川を結ぶ運河を開削することを思い付きます。

 戦争のない平和な世の中。交易による繁栄。そのための運河開削という大事業。大いなる夢に想いを馳せて目を輝かせるシェプストに、バネヘンは至上の美を見いだします。ここまで明瞭に作品には表現されていませんが、王の首飾りをバネヘンはシェプストに返却したことから、このことが窺われます。

 一方、センムトも建築士として各地で辣腕を振るっていました。神殿の新築、増築、補修などで名声を高めています。そして、かれの手掛けた神殿には、女ファラオの像が建てられました。シェプストの想いを象徴するためのもので悪意はないのですが、バネヘンは異を唱えます。王は人間ではない。最高神アメン=ラーの息子である。今のあなたはただの人間の女である、この像はそれを現してる、と。

 バネヘンの言葉が、エジプトとファラオを思っての素直で真摯な意見なのか、シェプストとセンムトを引き離すために弄したものなのかは、まだわかりません。わかりませんが、これがきっかけとなって、シェプストはセンムトとの男女の関係に終止符を打ちます。そして、以後のファラオ像を男性の姿で造るのなら、放逐は思いとどまってやると宣言します。

 やがて運河が完成。プントとの交易を始めるべく、シェプストはプントを訪問し、交渉に臨みます。
 交易に力を入れ始めたエジプトには様々な異民族が訪れ、治安が乱れ始めました。国境付近の村では異民族に襲撃されるなどということも起こっています。
 そんな時、シェプストの息子、トトメス3世は元服(12歳)をむかえました。トトメス3世は、母と離れ、メンフィスで教育を受けていたのですが、12歳になると軍隊に入ることができるので、入隊を志願します。
 「余は軍人となり戦に出て強きエジプトを取り戻す」と宣言します。
 この宣言に国王軍は士気高く盛り上がるのですが、「このままでは国がふたつにわかれてしまう」と感じた者が、シェプストに知らせようと走ります。

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