【 パート退魔麗/矢野健太郎】
多少の霊能力があり、コスプレ好きの、弱小パソコンショップの店員であるチカ(本名は梅近麗美)は、お気に入りの男性である松田(同じパソコンショップに勤務)にとりついた霊体女である琴美を祓おうと奮戦する日々。このあたりのことは、松田が主人公で琴美がヒロインの別作品「コットンプレイ」に詳しいのですが、パート退魔麗では、チカが主人公です。
パソコンショップがどの程度弱小かというと、一昔前の商店街にあった夫婦2人で経営する町の電気屋が、そのままパソコンショップになったようなイメージです。
こんなんで経営していけるのは、店員兼SE兼サービスマンのチカが優秀だからでしょうね。パソコンが立ち上がらない、とか、ネットに繋がらなくなった、とか、そういう細々したことに、いちいち出張して対応するサービスが行き届いているためと思われます。
さて、そのチカちゃん、退魔師の老人でエロじじいである妖魔ハンターに、後継者として目をつけられます。これは、誤解というか人違いだったのですが、それがわかるのは少し先。エロじじいから、ある方法で霊能力をアップさせられ、跡をつぐことになるのです。
ある方法とは、魔方陣の中でエロじじいと交わることです。
その時、事故が起こります。エロじじいがこれまで封印してきた淫魔が、なんと解き放たれてしまいました。このためチカは、エロじじいの後継者としてだけではなく、既にエロじじいが封じ込めたはずの淫魔も退治しなくてはならなくなります。
しかも、霊能力を高められてしまったために、色んなものが見えること見えること。見えるだけならともかく、余分な波動が漏れまくって、霊にもチカは認識されて、まーありとあらゆる霊が寄ってくる寄ってくる。
まあ、そのようなドタバタコメディです。
さて、では実際にはどのようにして淫魔を倒すのでしょうか。
これがまた強烈です。淫魔を射精に導き、その精液に封じ込めて、ティッシュで透いとるのです。なんちゅー設定や(笑)。淫魔は、人間の身体を借りて女性と交接します。そしてついに、弱小パソコンショップの店長がとりつかれてしまいました。冴えない初老の男ですが、とりついた淫魔によって美形になります。これでナンパし放題、そうとりついた淫魔は考えるわけですが。
淫魔の目的は、人間の女をセックスの虜にして淫乱化し、セックスに関する厳しい戒律を破らせること。詳しい時代や場所には触れられていませんが、当時は子作りを目的としたセックスしか認められておらず、それも教会が認めた日に限られるとのこと。快楽を求めるなんてとんでもない話だったのです。
そして、セックスの相手から精気を吸い、自らの命を維持すること。
しかし、乱れきった現代日本では、既に清らかな精気を持つ乙女などおらず、吸いとった精気はひどい味で、淫魔はゲロを吐きまくることになってしまいます。ここは思いっきり笑えました。
残念ながら掲載誌休刊で連載終了という憂き目にあいますが、それでもきちんと完結しているところが、矢野先生のすごいところです。
ラスボスも出てきますし、宇宙にまで飛び出してしまうというスケールの大きさもあります。このあたり、本当は駆け足でなく、じっくりと描きたかった所でしょう。私もじっくり読みたかったです。
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