漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 ガーリー・エアフォース/夏海公司・瀬口たかひろ 】

 瀬口先生の最新作です。

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 中国新疆ウイグル自治区で開催されてる航空ショーを、高校生の少年、慧は地上から見上げていました。母がパイロットをつとめているのです。
 そこへ、一機の戦闘機が突入、ショーを行っていた3機編隊の戦闘機は次々撃墜されました。母の生存は絶望的です。
 ザイ(災)と呼ばれる正体不明の戦闘機に中国は蹂躙され、混乱していました。ザイの急上昇急下降急旋回が可能な高機動力に、人民軍はなすすべもなく、世界の国々も中国の状況を不安視しているようです。ザイと呼ばれる軍事勢力が勃興し、政府のコントロール力を上回りつつある、ということのようです。
 中国は日本に脱出船団を要請しました。慧も明華とともにこの船で中国を脱出し、日本へ向かいます。明華は中国人ですが神戸に住んでいたこともあり日本語が堪能です。その頃から慧の家族とは懇意にしていて、慧と母が中国に渡ったあとは、言葉も慣習も何もかもが違う異国での生活を慧が送るのを、明華は心の支えとなって助けていました。
 航空ショーには明華とその家族も来ていたのですが、撃墜の混乱の中ではぐれてしまい、親兄弟の生死も不明です。そんな中での来日でした。
 ところが、日本へと向かうその船が、ザイに攻撃されます。救命艇で海へ出ますが、ザイの攻撃は執拗です。しかし、もうダメかと思われたその時、深紅の戦闘機があらわれ、ザイと同等かそれ以上の機動力を見せつけ、ザイを撃墜します。深紅の戦闘機は戦いには勝利したものの、なぜかふらついて海上に墜落しました。
 海上には浮かんでいたので、慧が救助に向かいます。深紅の機体だったのでそれまで気がつきませんでしたが、白く縁取りされた赤丸が描かれています。日本の機体? 自衛隊? 母親が飛行機乗りなので慧もそれなりに詳しいはずですが、こんな機体は知らない、といった反応を慧は示します。

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 機体に取りついてキャノピーを叩くと、コックピットが開いて、中には中学生かと見まがうような少女が搭乗していました。
「大丈夫?」と、声をかける慧。少女は無表情です。苦しそうにはしていないので、どこか怪我をしてるとかは無さそうですが。
 戸惑う慧に、少女がとった行動は、キスでした。
 そして、残した言葉が「新たな時代を」です。
 そこで場面が変わるので、その後のことがすぐにはわかりませんが、後に「制御不能になって墜ちたこの戦闘機は、慧がやってきたことで再起動した」という説明がなされますから、再び空中に飛び立ち、帰還したのでしょう。

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 日本に帰国した慧は、小松の祖父母の家に身を寄せます。家族の生死が不明なままの明華も一緒に居候します。明華は模範的な居候で家事全般一生懸命お手伝いをし、慧にも買い物を命じたりします。慧が中国に渡ったとき、慧の母から「よろしくね」と言われて以来、お姉さんきどりのようです。
 慧の外出中に、明華は「自衛隊航学生受験のための問題集」を見つけ、慧が自衛隊を志望してると知ります。「何を考えてるのよ!」と、頭に血を昇らせます。一方慧は、トレーラーで移送中のあの紅蓮の戦闘機を見てしまいます。自転車だったので追いかけますが、もちろん追い付けません。しかしここは小松。行き先は小松基地(小松空港)だとアタリをつけました。
 自転車で小松基地へ向かいますが、コンクリート壁のため、中を窺うことができません。ようやくフェンスの部分を見つけて覗き込むのですが、やはりよくわかりません。
 そこへ明華が追いかけてきて、自衛隊入りを猛烈に反対します。私はこの異国の地で知り合いは慧しかいないのに? 友達とも家族ともはぐれてその生死もわからない、その上、慧まで兵隊に行くとか言い出して、それを心配しちゃタメ? 明華の心の叫びが声になります。
 そんな2人を、前後から車で挟む黒服の男たち。慧と明華は何者かに拉致されてしまいました。

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 床の冷たいだだっぴろい部屋。そこで慧は、マシンガンの銃口をむけられます。そして、まさしく射撃されようとしたその直前、エンジン音が響きます。そこには、あの紅蓮の戦闘機がありました。
 中国からの帰国の船上でザイからの攻撃を救ってくれたその機体は、しかしその後、海上に堕ちました。でも、慧が近づくと再起動したのは前述のとおりです。そして今、慧がピンチに陥った瞬間に、その機体に再び火が入ったのです。
 慧を拉致した男は、自衛隊の技官で、八代通と名乗ります。対ザイ戦の研究をしてるとのことですが、紅蓮の戦闘機の開発運用の責任者と思われます。

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 慧は説明を受けます。
 ザイの戦闘機の急加速、急旋回は人間の耐えられるレベルを越えている。有人では実現できないこの機動性をHiMATという。それは、ミサイルの照準もできない敏捷な動き。もし運良くロックオンできても、一種の妨害電波でミサイルを迷走、自爆させる。こをEPCMという。これは電子機器のみならず、人間の五感も狂わせる。これに対抗するために開発された無人機が、ドーターである。
 とまあ、だいたいこんな説明です。しかし、ドーターは不安定で、まだまだ使い物になりません。現に慧の目の前で墜落しています。ところが、慧(八代通にとっては見知らぬ少年)がキャノピーにとりついたとたんに再起動をしました。その時の少年が小松基地の防犯カメラに写ったので、八代通は慧を確保した、とのことです。そして、八代通の目論み通り、慧が銃撃されそうになったその瞬間に、沈黙していたドーターは、またしても目を覚ましたのです。
 彼は慧に「ドーターを飛べるようにしてやってほしい」と頼みます。慧にとってはわけのわからない依頼です。それに慧は、ドーターのコクピットに女子中学生かと思えるような姿ではあるものの、パイロットを確認しています。
 操縦席にいたのは、人型の「自動操縦装置」アニマだと説明されます。そして、JAS39というドーター機の自動操縦装置グリペンとして、見覚えのある少女を紹介されます。グリペンはまるで本物の人間のようにそこに立っていました。
 八代通によると、このままだとグリペンは廃棄処分になるとのことです。しかし彼は研究者として最後の最後まであかいてみたい、とも言います。慧は翌日から小松基地に通うことになりました。入隊に反対している明華には、「売店のバイト」と嘘をつきます。

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 この日、アメリカの正規戦力が中国に投入されることが発表されました。テレビのニュース画面には、空母を始め多数の艦隊が写し出されています。これでザイから中国を救おうというわけです。

 翌日、慧は小松基地を訪ねますが、八代通はおらず、直接グリペンが出迎えます。グリペンは隊員食堂に向かい、慧にはお茶を奢って自分は朝食を食べます。兵器が食事をするのかと驚く慧ですが、それだけではありません。慌てん坊だし、天然っぽいし、まるで不思議ちゃんと慧が指摘をすると、「それ以上言うと怒る」とまでグリペンは言います。
 普段は散歩や昼寝をしているとグリペンはいい、ならばと慧は二人で散歩に出ます。基地の外れにある昔の掩体壕(えんたいごう=基地を爆撃されたときに飛行機を守る防空壕のようなもの)に、グリペンは慧を案内し、「秘密基地」と言います。おもちゃなんかも持ち込まれています。
 秘密基地で慧は、グリペンと会話しながら、いくつかのことを訊くのですが、やがて彼女の携帯が鳴り、「検査の時間。また明日」と去ってゆきます。ここまでの描写では、グリペンはまさしく人間。人型のAIとも、兵器とも、まるで思えません。
 そして、1巻の最終ページには、なんの説明文もありませんが、アメリカの艦隊がめちゃめちゃにやられているシーンが描かれています。
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 原作はライトノベルです。アニメ化の際にメディアミックスの一環としてコミカライズされたようですね。
 僕はアニメ好きには天国である兵庫県(独立U局サンテレビがあり、めっちゃアニメをやってる)にいるおかげで、「ハクメイとミコチ」「ゆるキャン」「クジラの子らは砂上に歌う」「竜王のおしごと」「がっこうぐらし」などに偶然観て出会うことができたのですが、この作品は知りませんでした。コミカライズの担当が瀬口先生でなければ、多分知らないままでしたね。瀬口先生のツイッターに書いてあったので、購入したわけですから。
 さて、原作の小説は随分話が進んでいるようで、「小説を紹介しているサイト」などを読むと、マンガ1巻だけではわからない様々なことも書いてあります。が、ここではそれらには触れず、純粋に漫画のことだけを書いています。
 もともと文章(小説)だったものが漫画になり、そのあらすじやら自分なりの解釈やら感想やらをまた文章で書くというのは、なんだか不思議な気分になります。
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