漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 絶対可憐チルドレン ④/椎名高志 】

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 バベルが予知した東京直下型地震。しかし、その時刻になっても地震は発生しません。複数の予知能力者による予知を行っていますが、まさか外した? そう思った瞬間に激しい揺れが襲ってきます。この時間差は震源地との距離によるもの。東京といっても離島、八帖島が震源地でした。
 地震の伝わる時間を演出に使うなんて芸が細かい! と、感心しましたが、超能力者が行政区分に縛られて「東京都」で地震が起こる、というような予知をするのかなあ? と、ちょっと突っ込み。
 特務エスパー達が現地にかけつけますが、指揮官として同行している一般人、皆本は余震による土石流で土砂に埋まってしまいます。
 これを救出したのはフェザーでした。フェザーはバベルの地下に閉じ込められていたのですが、超能力を封じ込めるはずのその地下室から、さらに強力な超能力によって脱出。降雨のノイズで空間認識能力が低下するとされていますが、にも関わらずたった一回のテレポートで八帖島に飛びます。驚異的な能力です。
 しかも、本人によると「応急処置」とのことでしたが、病院で超能力による治療にあたっていた賢木は、「ほぼ完璧な治療」と驚嘆します。
 賢木によると、能力があらゆる方面に多彩で、高超度能力者が複数集まったようだ、とのことです。
 賢木に席を外してもらった皆本は、フェザーといくばくかの会話をしますが、悠理に憑依していた時と異なり、自力で実体化しているフェザーは消耗が激しく、皆本が核心に迫れないまま、人の姿を維持することができなくなって、小さな鳥になってしまいました。

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 鳥状態のフェザーは、皆本が飼い主となって面倒をみることになりました。皆本はチルドレンと悠理とちさとをつれて、プールリゾートへ行きます。ティムやパレットも、賢木とともに同行します。鳥状態のフェザーは、超能力を封じる丈夫そうなボックスに入れて皆本が連れています。
 しかし、そんなボックスはフェザーにとって屁でもなかったようです。ぶち破って外に出ます。そして、プールで人の形に実体化、流れるプールではぐれた悠理と対決します。このときの悠理は、ミラージュだったりファントムだったりします。
 フェザーは攻撃によってユーリを押さえ込み、そして言います。雲居悠理は疑似人格などではなく、アナタから辛い記憶を消しただけの、本当の姿である、と。
 これらの攻防は水中で行われていましたが、水上に顔を出したとき、ユーリは悠理に、フェザーは鳥になっていました。

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 その夜、皆本はフェザーとじっくり話をする機会を得ようとします。残念ながら、多くの話はできませんでしたが、3年前と現在とでは、未来において皆本と薫が直接対決する際の予告映像に若干の変化が起こっていることや、フェザー自身に過去の記憶がないことなどがわかります。フェザーは皆本に、(今は死んでるかもしれないが)生きていた人間であり、「私を探して」と頼みます。それがおそらく未来を変える鍵なのでしょう。

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 本人たちに気づかれないようにこれらの様子を窺っていた兵部と不二子。その兵部は極端に機嫌が悪くなっていて、不二子はその理由がわかりません。
 兵部はどうやら、ブラックファントムの洗脳者、つまり超能力者を洗脳して犯罪者にしたてる者、その正体がわかったようです。
 「わかったぞ!」という描写はあるのですが、なぜ兵部がそのことに気づいたのかは私にはわかりませんでした。漫画の読解力不足によるものか、そもそも描写されてるのかがわからないのですが、答えから言えばその洗脳者はユーリです。

 チルドレン逹の通う私立中学では、文化祭が開催されます。彼女逹のクラスはパンドラからの転入生を含めて8人の美少女がいて、そのクラスがラブロマンスの演劇をするというので、学校中が沸き立ちます。
 バベルの面々も、パンドラの連中も、本番当日には保護者として文化祭に足を運びます。そこで兵部逹パンドラの幹部は、一般人はもとよりバベルの関係者にも気づかれずに悠理の拉致に成功、悠理はユーリ(ファントムドーター)として、両者は壮絶な超能力戦を繰り広げます。
 ヒュプノにより2重にしかけた幻の中で、勝利を納めたのは兵部でした。ユーリは気を失って倒れます。その時、彼女が意識の底で見たのは、学校生活をはじめ、薫逹との楽しい日々でした。
 ユーリは、父親(ブラックファントム)の呪縛から解放され、学校に戻されて、文化祭での演劇を全うします。付き人のカイやハンゾウが、文化祭終了後にパンドラの連中に連れられて学校を出ようとしているシーンがありますから、この二人もパンドラに合流するのでしょう。
 プラスチック爆弾前頭葉に埋め込まれたカイは、その傷跡をかくすために、また行動に視力を必要としないこともあって、目から頭を包帯で覆われていましたが、この時はそういった禍々しい外見ではなく、大きめのキャップを目深にかぶっている姿に変わっていました。
 これによりユーリは、疑似人格としての悠理ではなく、悠理こそが彼女の真の姿として、チルドレン逹と学校生活を送っていくことになるのでしょう。しかし、永久が保証されてるわけではなく、いつか何かのきっかけで、再びファントムドーターに戻ってしまう可能性もあると示唆されています。
 フェザーに対して毒づくモモタロウは、フェザーから聞かされます。「あの人(兵部)の描こうとしている未来は信じていい。本当の敵は、『人間から幸せな思い出を奪ってその未来をも破壊する奴ら』。彼(兵部)がそうされたようにね」

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 パンドラのマッスル大鎌、その名の通り筋肉質の裸体を上半身裸でさらしながら、やはりその名の通りオカマであり、下半身はレイザーラモンHGみたいな衣装で、漫画の説明では丹田から気を発して超能力を発動するのですが、説明では丹田でも絵的にはモロにアソコというやや下品な技を使います。しかし、スーツを着せれば有能なビジネスマン。物腰は柔らかで女性受けもよく、しかし、外交官としてはシビアで敏腕です。
 どういう経緯があったのか、パンドラによる世界の中枢へ人を送り込んで内側から世界を掌握しようという作戦の一貫なのでしょう、ロビエトという国の外交官となり、日本への大使という椅子を手にいれ、日本側は譲歩につぐ譲歩を強いられます。
 そこで、助手である紅葉に「お手柔らかに」と伝えるため、バベルのイケメンツートップである皆本と賢木の2人が、デートを餌に籠絡に駆り出されます。が、そんなに上手く話が進むわけはありません。

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 結局、外交関係の話はどこへやら、紅葉がバベルの局長にコクってしまうとか、フェザーのちょっとしたミスで、皆本と薫が本気のキスをしてしまうことになるとか、ぐちゃぐちゃになって結末を迎えます。
 他にコメリカのレベル7の少年がぐれてしまい、その少年の心を開くために皆本が日本の有能な指揮官としてコメリカに招かれて海外出張に行くとか、そこにもパンドラやチルドレンが絡んでくるとか、ドタバタながらシビアな話が続きます。

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 その少年はコメリカの有力な議員の子弟です。しかし、高超度エスパーが恐れられるのは日本もコメリカも変わらず、もし皆本が失敗すれば、少年は当局によって抹殺されることが既に決まっていました。タイムリミットは24時間。チルドレンたちとの付き合いを通じて、年少の高超度エスパーの扱いに長けており、なおかつその心に寄り添うことができる皆本は、そのミッションを成功させますが、万が一失敗したときは、我が子が抹殺されないようにするため父親は手を打っていました。少年をパンドラに引き取ってもらい、超能力犯罪集団の一員として生き延びさせるために、兵部と裏取引をしていたのです。
 こうして作品内では、日本だけでなく、世界的にも一般人と超能力者の間には溝があることが示されて行きます。

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 黒いファントムの魔の手も緩みません。いったん洗脳を解かれたはずのティムが、再び洗脳されます。完全に洗脳がとけておらず、後遺症的な痕跡に、再び黒い幽霊が働きかけてきた、といったところでしょうか。
 黒い幽霊の洗脳者だったユーリは兵部によって解放されたはずですが、黒い幽霊の組織が壊滅したわけではありません。
 ティムは巨大ロボット化させたおもちゃで、富士山を噴火させようとします。富士山が爆発したら大変なことになりますが、彼はスコップで山の表面を掘り続けるということをしており、これではいつになったらマグマ溜まりに達するかわかったものではありません。洗脳されつつも完全ではなく、救助が来るまでの時間稼ぎをしていると説明されています。
 チルドレン達がかけつけ、巨大ロボットは制圧されますが、その様子を見ていた者たちがいます。ギリアム様と呼ばれている若い男と、それに付き従う不気味な男です。
 ティムにとりつかせていた虫に模したレアメタルを回収し、記録された超能力の痕跡を得ます。ユーリは悠理としてチルドレンたちと同じ学校に通う仲間でしたし、兵部はバベルと敵対するパンドラのトップですがチルドレン達も含めた超能力者を守るという理念を持っています。しかしどうやら、黒い幽霊は勧善懲悪における本物の悪役のようですね。

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 そして物語は1937年に遡ります。まず描かれるのは、少年時代の兵部と、おそらく少しだけ年上の蕾見不二子との出会いです。親の世代の縁で、日本に帰国した兵部少年は蕾見家でお世話になります。その二人を軍人に勧誘するのが、早乙女大尉です。超能特殊部隊、すなわちエスパー隊に入ってくれないか、というものです。
 不二子は、超能力を兵器として使うなんてゴメンだと断ります。しかし、不二子の父は、一般に超能力者が恐れられずに社会に認められるには、軍を足掛かりとして利用するのが早道と考えています。そして、1年後、二人は軍に入隊していました。

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 街中で海軍の軍人と不二子が揉め事をおこしたのがきっかけとなり、超能力部隊と海軍戦闘機が模擬戦を行って決着をつける、という事態に発展します。負ければ超能力部隊は解散です。戦闘機と超能力者による1対1の対決と決まり、超能力部隊からは兵部が選ばれました。
 模擬戦では当初、緊張から兵部は不利な状況に追い込まれますが、やがて形勢逆転します。父と上官、それぞれ異なる立場と考え方から兵部にかけていた言葉に、兵部は一人、心の中で葛藤を抱えていたのですが、それがふっきれたことが、形勢逆転の鍵となりました。

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 模擬戦の海域にコメリカ軍の潜水艦があらわれ、超能力部隊は実戦投入されます。コメリカ軍は結局退却するのですが、亡命を望んだ超能力イルカを保護することには成功しました。
 こうして陸軍超能部隊は成立していき、これがバベルの前身となります。しかし、後に敗戦となったとき、兵部達は軍(すなわち日本)から裏切られ、兵部と不二子も別の道を歩むことになるのは、既出の通りです。

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 薫たちが2年生に進級し、周囲の状況はめまぐるしく変わって行きます。
 ユーリが悠理に収斂し、新たに洗脳を受ける超能力者が生まれなくなったのを機に、パンドラは黒い幽霊に洗脳された超能力者を根こそぎにしようと活動します。一方で、兵部は賢木に協力を求め、カイの頭部に埋め込まれた爆弾を、超能力と外科手術の組み合わせで取り除きます。
 フェザーは皆本を呼び出して、正体を明かすと共に、変えがたい未来を皆本にみせます。そこでは、一般人と超能力者の戦闘が繰り広げられていて、核兵器まで使われていました。いくつもの町が放棄されていて、ただ戦いに勝利することが全ての世界になっている、とも見てとれます。パレットも戦いの中で死んでゆきます。
 フェザーはそんな未来を変えるために、薫、紫穂、葵などの思念が合体して過去にやってきたものでした。薫がメインの人格ですが、チルドレンの3人以外の超能力者も含まれているかもしれません。
 そして、兵部とフェザーがいつのまにかいなくなり、それでも日々は流れてゆきます。


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