漫画パラダイス

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【 八百八町裏表 化粧師/石ノ森章太郎 】

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 江戸時代後期が舞台となっているらしい「化粧師」。式亭小三馬という石森キャラとしたら相当なイケメンを主人公にした物語です。

 タイトルを素直に解釈すると、いわゆる「メイクさん」がお仕事と思えますが、町中に店舗を構えて自ら開発した商品を販売するだけでなく、女性の着物の世話をしたり、大きなお茶会のプロデュースをしたりと、単なる小売店の店主というわけではありません。
 名家の姑と嫁が張り合ったりするのに力を貸したり、客のつかなくなった夜鷹を甦らせたりもします。男の化粧である「刺青」の図案や、騙されて大量に在庫を抱えた手拭いの販売にも知恵を絞ります。男気も才気も溢れるこの男を頼って大勢の人間が出入りするわけで、単なる小売店物語とは異なるわけです。

 この作品も私はアニメから入りました。大橋巨泉さんのナンタラいう番組でやってた「笑ゥせえるすまん」に続く番組内アニメだったのではないかと思います。短い期間で、「笑ゥせえるすまん」に戻されてしまったように記憶するのですが、当時としては目の覚めるような鮮やかで美麗な色彩で、とても丁寧に彩色されてたように思います。
 アニメ版は、2~3回しか観れなかったのですが、そのなかで印象に残っているのか、「寒の水」です。ただの水を売れとの命を引き受けざるを得なくなり、最初は「飲める化粧水」として売り出し、大ヒットを飛ばします。そこへ、かねてからの計略どおり「あれはただの水でしたかない」と悪評を流されてしまいます。式亭の評判も信用もガタガタになります。
 しかし、ただでは起きない式亭、その水が越後の國よりいかにして苦労して運ばれてきたものか、そして、いかに多くの人の絶賛を受けているかを喧伝し、再びヒット商品に返り咲くのです。
 この男が広告も含めた総合的なプロデュースの腕をもった知恵者かがわかるエピソードです。

 正続2巻に約30のお話がおさめられています。

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#漫画 #石ノ森章太郎 #八百八町裏表化粧師