漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 地球へ/竹宮恵子 】

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 地球へと書いてあるのを見て、とっさに「テラへ」と、読んでしまう人って、決して少なくないですよね。
 私がもってるのは、スクエアエニックス版ですから、もっとも新しい発行のものだと思いますが、作品そのものは私が10歳にも満たない頃に描かれたSF。

 いくつかの設定をとりあげてみますと、こんな感じです。

 地球が荒廃して人類は宇宙へ移民。ワープ航法が実用化されている。コンピューターによる人類の管理。子孫は試験官ベビーで出生する。

 超能力者と一般人の対立。
 反政府的な思想の洗脳による除去や最適化。

 今でもこれら設定が使われている作品は少なくありません。バリバリの現役の設定なのです。ですが、これら全てを当時盛り込んで作品にしている、そう思うと、なんだかムチャクチャ凄い作品ですよね。

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 「地球へ」は、難しい作品という評価もあったようで、なるほど、当時これだけの要素をてんこ盛りしてたら、確かに難しいと感じる面はあったかもしれません。

 今日的に問題視されるかもしれないなと思われる部分もあり、時代を感じさせます。それは、障害者に対する扱いです。
 成人検査の際に精神障害を患う者がいるという設定は、成人検査において精神の奥深くにまで入り込むためで、今なら非人道的なこととして扱われざるを得ないでしょうし、知的障害者や、成人検査のために精神障害者となった者が、はっきりとは言及されてないものの、成人検査でハネられることが示唆されています。
 世界観の設定のひとつとして作られているので、ナシな設定ではありませんが、それらを批判する勢力を、今なら同時に登場させざるをえないでしょうね。

 でも、この作品では、社会的に身体障害者が阻害されるという設定がないと成り立ちません。
 身体障害者は、その補完のために、超能力が発現するという設定だからです。そして、生物学的には、それは正解だと思います。ある身体能力を持たざるものは、他の身体能力でカバーしなければ、生き残れないからです。

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 さて、ミュウと呼ばれる身体障害のある超能力者たちは、はるかな長い旅を経て地球にたどり着きます。
 その彼ら彼女らの運命はいかに?

 ミュウの誕生が自然の流れであるならば受け入れるべきという主流の意見と、断固反対であるという政治家の意見、両論併記の記録がコンピューターに残され、かつその選択肢まで託された状態のままになっています。

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 今まで気づかなかったのですが、「人間は神の領域に手をつけた。この戦いはその制裁だ」とか、「新たに紡がれる「地球へ・・・」の世界、などの言葉と同時に、3巻の帯には「新連載」の予告ともとれる活字が・・・。

 続編が出てるのでしょうか。それとも、このあとの物語はみなさんの頭のなかで、そして、日々の行動で、紡いで下さいね、ということなのかもしれません。

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