漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 山と食欲と私 ③/信濃川日出雄 】

 僕自身はどちらかというとインドア派なのですが、職場やその周辺の業界がアウトドアなので、キャンプや野外料理や旅の話も、仕事上の会話として出てきます。
 その時に、なにかと言うと「山と食欲と私」や「ゆるキャン」を引用して、現在のトレンドを牽引しているこれらの作品では、こんなことが描かれてるとか、意見を言うこと多数。もちろん、何から引用したかも明言するわけですが、「お前の情報源は漫画ばかりだな」と、いつも言われます。
SmartSelect_20190723-225659_Gallery.jpg
 それはさておき、「山と食欲と私」、10巻が発行されています。
 
 山ガールと呼ばれることを嫌い、単独登山女子を自称する日々野鮎美は、結婚パーティーのビンゴ大会で、バーナートーチをゲットします。
 会社でも弁当を炙り、調子に乗って山でも炙り、勢い良くあぶられた火のついた食材が飛んで、草に燃え移ります。さあ大変、下手をしたら山火事に!
 そんなお話で始まった10巻もバラエティーに飛んでいます。
 細々とした食材や小分けした調味料をザックのなかでガタつかせずに運ぶには?
 山の麓の宿屋で開催された謎解きゲームの結果はいかに?
 6歳の姪っ子を引率して山に登るお話もあります。6歳ですから鮎美との体力差は歴然。そんな姪っ子にも、山の魅力はどうやら伝わったようです。
 
 サブキャラクターのエピソードも登場します。鮎美の山仲間、サヨリと旦那の健次郎は、勢いで東京から安曇野に転居しました。でも、どうやら職が見つからない様子。
 健次郎はとりあえず観光人力車の職について研修中、サヨリは山小屋でアルバイトです。山小屋は住み込みなので、単身赴任です。
 このお話では、山小屋スタッフの日常が描かれます。様々な業種にスポットを当てて紹介するテレビ番組はいくつかあり、知らない世界を覗き見れるというのは興味深いのですが、テレビで紹介するのは多くの場合、その世界での一流の人だったりスーパーマンだったりします。けど、ここではごく一般的な山小屋スタッフの一日が描かれます。朝は4時起きとか、お風呂は何日に1回とか、人によっては「そんなん無理」と言うだろうな、なんてエピソードもありますから、これを読んで「憧れの職業」としてそれを目指すなんて人はほぼいないでしょうけど、リアリティがあって興味深いです。
 そういえば、私も漫画で知って、今の職業に就いてるんですよね。
SmartSelect_20190723-225954_Gallery.jpg
SmartSelect_20190723-230041_Gallery.jpg
 さて、10巻にも少し長めのストーリーもあります。鮎美が亡き父の足跡を辿って、九州の山々を巡ります。
 少し感傷的になるかなと思いきや、なんのなんの、しっかり山ご飯や地元名物料理の話題も出てきます。山で食べる「鶏天うどん」に「もつ鍋」に「めんたいツナの炊き込みご飯」、そして名物料理の「地獄蒸し」です。
 
地獄蒸し」なんて山ご飯ではありませんし、観光客が食べる料理です。ストイックに「山」だけではなくて、こういう料理が出てくるのがまた良いんです。だって、僕たちが山に行くというのは、遠方(とは、限りませんが)に出かけるということであり、すなわちそれは、旅行でもあるわけですから。
SmartSelect_20190723-225733_Gallery.jpg(239-987)