漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 カレチ/池田邦彦 】

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 作者の池田邦彦先生のデビューは遅く、最年長から2番目らしいです。ちなみに、最年長デビューは青木雄二先生だとのこと。

 なにかをやり始めるのに、遅すぎるということは無い、を実践されてるわけですね。

 絵柄は、見れば「あ、池田先生の作品だ」とわかりますが、取り扱う題材は広いです。でも、どうやら鉄道好きさんではあろうかと思います。

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 キャラの顔の造形が独特で、あー、こういう顔立ち現実にあるよなーという人がいっぱいいて親しみが持てます。

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 反面、怒っていたりブスッとしてたりすると、リアルすぎて本当に怖い雰囲気を醸し出します。なぜか若い女の子だけはかわいらしいですが。

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 車両の造形もしっかりしてて、外観に違和感なく、かつ迫力があるのは、鉄道車両とそれ以外の建造物等とのバランス、そして作者の思い入れの強さだと思います。

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 一巻一話では、主人公は新人車掌と紹介されています。乗務する鉄道での人情みある一話完結の様々なエピソードと、成長過程、鉄道マンの厳しさや心意気や誇り、乗客との触れあいそして鉄道の魅力を伝える作品です。

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 凛と張り詰めた空気と、暖かくほんわかした雰囲気が両立してて、読み終えれば優しい気持ちにさせられる漫画です。

 登場人物には、こすっからい人もいれば、何かにつけて手を抜いて楽をしようとする人もいます。情にかられてルール違反を犯す人も、職人魂のかたまりのような人もいます。

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 特に印象に残ってるのは、定時運行に使命感を燃やすベテラン運転士と、完璧な車両整備を行う技術者の話。国鉄が合理化を進める中で、「安全に運行できればいい」と、時間のかかる完璧な整備を否定され、技術者はそれに従わざるを得ないのですが、そのベテラン運転士はそれを見抜きます。安全運行には支障なくても、これまでのように「電車が自分の手足のように動く」とはならなかったからです。

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 ラストは国鉄分割民営化にかかわる重い話になります。ここだけは一話完結ではなく、5回の続き物として描かれました。

 このとき、主人公も退職することになります。

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 主人公は管理職の末席に据えられます。首切りの最前線に立たせるためだったようです。

 そして、人員整理を進める中で自らも身をひく決意をするのです。

 人員整理の功労者としてJRに残る道が用意されていたことでしょうが、自分が残って他者を切るというのを、潔しとしなかったのでしょう。

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 ちなみに、レチとは、車掌のこと。レチチは車掌長。タイトルにもなってるカレチは、客扱専務車掌の意だったかと思います。

 その他に、荷物だか貨物だかを担当するニレチという車掌さんがいます(いました、かな?)。



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