【 パチスロひとり旅 ホームレス/名波誠・奥田渓竜 】
パチンコ屋なんぞに行かなくなって10年以上、もしかしたら20年近くになるかもしれません。
こんなことしてちゃダメだ、とか思ったわけではなく、いつの間にか自然と足が向かなくなったのです。
でも、漫画は買ってしまいました。
6百万円を越える借金を、会社勤めをやめて、パチスロで稼いで返済、という実話を元にした漫画です。
といっても、ギャンブル依存症で借金を抱えてしまったわけではなく、真面目に働いていたにも関わらず不運が重なって借金が膨らんでしまい、普通にサラリーマンをしていたのではもはやどうにもならなくなってしまったためです。
むしろ、サラリーマンをしていたからこそあこぎな会社のやり口に借金せざるをえなくなったり、ということもあり、「会社なんか信用できない。もう会社務めなんかしない」という決意のもと、パチスロ生活に突入を決意するわけです。
パチンコやパチスロに客がつく、ということは、すなわち「勝てることもある」からなわけですから、ソコソコの実力と運と研究心があれば、増えたり減ったりしながらもトータルでトントンくらいにはできるかもしれないな、とは思います。
パチスロしてる時間を他の遊びで使ってれば、支出だけになるわけですから、現金の出入りがトントンなら、遊んでる分だけ儲かったといえなくもありません。
パチンコやパチスロで勝ってると豪語してる人のほとんどはその部類でしょう。
一方で、プロを名乗り、実際にそれだけで食べてる人もいるようですから、日によっては負ける時があってもトータルで勝ち続けている人もいる、というのもまた事実ではありましょう。
しかし。その上で借金まで返すとなると、ただごとではありません。
その、ただごとではないことをやってのけた実話が、この漫画です。
パチスロに勝ち続けるお話なら痛快ではあるものの、決して面白い漫画とはなりえません。
両親に本当のことを打ち明けられず悶々としたり、ネグラでもある車はまだローン返済中なのに故障で使えなくなったり、彼女に振られたり、定職の無い身分でありながら友人に金を貸すはめに陥ったりと、波瀾万丈な日々を過ごします。
そして、やってくる一番のピンチ。それは、新たな借金ができなくなってしまったことです。
期日を守って返済してれば、タネ銭がつきてもまた借りて打つ、ということが、サラリーマンなら可能です。ですが、この主人公は会社を辞めています。
無職であるという情報がサラ金会社で共有されてしまい、新たな借金が出来なくなります。手持ちの現金が全て、という状況に追い込まれるのです。職についていなければ、新たな借金はできないのです。考えてみれば当然ですが、漫画を読むまではそんなこと思いもしなかったですね。
タネ銭が尽きかけるピンチもなんとかしのぎ、車で寝泊まりし、たまに健康ランドへ、みたいな生活を続けながらも、パソコンを入手して日記を書いたところ編集者の目にとまり、作家としての道が拓けたようです。幸い、パチスロだけで借金の返済もおえたご様子。
しかし、普通では考えられない生きざまですね。
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