【 きまぐれ乗車券/小山田いく 】
1980年代の作品です。小学館版のコミックスを所持してますが、どこにしまってあるかわかりませんし、現在の漫画整理&再読&リスト化&レビューでは、いつになることやらわかりませんし、未収録作品も入ってるとのことなので、ブッキング版を入手。
高校2年生の九城興生は、兄が経営する九城出版のマイナーな歴史雑誌「おのごろ」の手伝いにバイト扱いで度々駆り出されていました。
道祖神の取材のために長野に向かうため上野駅で切符を買っていると、訳有り少女、環(たまき)が合流してきて、同行させられる羽目になります。
取材のためにデートをふいにしてふられたばかりの興生、これをきっかけに環と徐々にカレカノな仲になっていくようです。あくまで、徐々に、ですけどね。
興生には「仕事」という意識が強く、環の同行に関しては、どちらかというと邪険に扱うのですが、根が優しい性格なので、様々な気遣いを見せます。
興生が環への気持ちをちゃんと自覚するのは、最終話なんですけどね。
既に取り上げた「鉄子の育て方」で、放送局と鉄道を絡めた物語がどっちつかずで、みたいなことを書きましたが、「雑誌」と「鉄道」も似たようなものです。しかし、その雑誌が「鉄道雑誌」の取材や編集を題材にしたものではなく、「地方へ取材に行く必要性のあるもの」という設定なので、すんなり受け入れられたのでしょう。鉄道の取材のために鉄道に乗る物語の方がストーリー展開はやりやすいはずですが、やはり鉄道は「移動の手段」であって、それがあるからこそのフィクションとしての物語の面白さというのが生まれるのでしょう。
登場するのは、長野へ行くために乗車した「あさま」、関西への往復に「銀河」と「出雲」、能登半島では「能登路」、都内では京浜東北線、九州へは「あかつき」、木曽路では「あずさ」と「しなの」です。
京浜東北線は別として、この中で僕が乗ったことあるのは、「能登路」と「しなの」くらいでしょうか。「出雲」に乗ったのは「サンライズ」になってからですね。もしかしたら、「出雲」ではなくて、「瀬戸」の方だったかも?
あずさは、長野県内の移動で乗ったかもしれません。
「しなの」は後年、「北近畿」にも使われましたが振り子運転は行わず、しかも新しく登場する車両はどんどんグレードアップしてますから、「こんなに狭かったっけ?」と思うくらい居住性が悪く感じました。僕にとっては「しなの」のお下がりが来たら「ハズレ」認定でした。
併載されている「くすのき亭の日々」は、ホラーです。小山田先生の作品がなければ、僕は漫画でホラーを読むことはなかったでしょう。
いや、梅図先生・古賀先生・つのだ先生などの作品は読みましたが、ホラーという認識はなかったんですね。「怖い話」「伝奇」「ファンタジー」「オカルト」とかいう感覚でした。
くすのき亭はとても人間くさい作品で、短いエピソードが次から次へと出てきます。
人が見る闇は、人が作り出すんだなあと感じずにはいられません。
それはそうと、主人公の楠了子は、小山田キャラの中でもっとも美人だと思うのは、きっと私だけですよね?
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