【 コットンプレイ/矢野健太郎 】
暇があればオナニーばかりしてる琴美は、不幸なことにマンションの1階に住んでいました。そこへ、トラックが突っ込んできて事故にあいます。
そのショックで魂が抜けてしまい、記憶も自分の名前以外無くなって、霊体だから誰にも視認されることなく、全裸状態で道に踞って泣くばかり。
しかし、松田にはなぜかその姿が見えます。「まさかレイプ被害者?」と思った松田、放っておくこともできず、琴実に声をかけます。
「私が見えるの?」と、嬉しくなった琴実は松田にかけより抱きつこうとしますが、なにしろ霊体。松田の身体を通り抜け、さらに転がってコンクリートブロックまで通り抜けてしまいます。
会社がつぶれて無職になったばかりの松田。おまけに幽霊にまで取り憑かれてしまって踏んだり蹴ったり。
この日から松田と霊体の奇妙な同棲生活が始まります。
松田には綾という恋人がいますが、松田は綾にわりと酷い態度や言葉や接しています。いわゆるボロクソに言う、って、やつですか?
琴実はそのことに腹をたて、松田を責めるのですが、松田も「うるさい、黙ってろ、あっちへいけ」的なことを言って対抗します。しかし、そこにいるのは松田と綾。綾には琴実の姿は見えませんから、自分が言われてると思い、二人は別れることになります。
まあ、フェミニズムとまでは言わないものの、恋人に対してボロクソに感情をぶつけるだけのこんな男、ふられて当然ですね。実際こういうタイプの男はいるし、こういうタイプの男とくっついてる女もいるのだから、心の深い所では繋がってるんでしょうけど、僕はいやだなあ。
霊体とはいえ、本人がしっかりと気を持っていれば、物に触れたりはできるようです。なので、松田と琴実のセックスシーンもあるのですが、感じてくると「気をしっかりもつことができなくなる」ので、霊体通り抜け状態になります。
このあたりがエロコメの真髄ですね。
やがて松田は、琴実が生霊ではないかと気付き始めます。意識不明の肉体がどこかにあり、霊体だけが肉体を抜けてさまよっているのではないか、と。
実際その通りで、琴実はすぐ近くの病院に収容され、意識不明の状態で入院しています。
さて、琴実はなぜか電子媒体との相性が良く、例えはデジカメで写真を撮れば写ってしまいます。
このことを利用して、松田の友人の下田辺が、サイバーゴーグルを通じて琴実の裸体を鑑賞します。本当は彼女の記憶をオカルトチックな方法も含めて取り戻し、肉体探しをするために、松田がオタクの下田辺に協力依頼をしたわけですが。
琴実がすごーく可愛いこと、場合によっては触ったりしてボディタッチもできるので、お下品でいやらしいことを下田辺は考えてるに過ぎません。
松田もいつまでも無職でいるわけにもいかず、町の小さなパソコンショップに就職するのですが、ここにいる先輩スタッフのチカちゃんが無茶苦茶ITに詳しく有能で、しかも霊能者でコスプレ寄りのオタクで、緋村剣心にちょっと似ています。
下田辺が開発したコットンボディなるいわゆる精巧なダッチワイフを利用することにより琴実はかりそめの肉体を得て、さらにドタバタが続く構想だったようですが、掲載誌の休刊により完結。琴実は元の肉体に戻ります。
肉体に霊体が戻ったあとは、霊体時代の記憶は無くなるとのことで、惹かれあい始めていた松田と琴実、多少の躊躇がありました。しかし、戻れるうちに戻らないと本格的な浮遊霊体になってしまうので、このままというわけにはいきません。
しかしその後、町ですれ違ったときに、琴実は松田のことを思い出したようです。
この前だったか後だったか、僕のホームページとの相互リンクを矢野先生にお願いしたのをきっかけに、時々メールのやりとりをさせていただいておりました。
掲載誌がのきなみ休刊で、人気作がつぎつぎ打ち切りになっていた時期で、悔しい想いをメールにしたためたりもしたのですが、その雑誌では人気作でも、売れ行きを牽引するほどの作品を送り出せなかったのだから、雑誌休刊は作家陣にも責任がある、というお返事をいただいたのが心に残っています。
(231-944)