漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 Race Queen Angel/矢野健太郎 】

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 4人しかいないはずのレースクイーンのチームになぜか5人目がいて、「あれ? メンバー増えた?」の質問に、みんなが「NO」と答えます。

 でも、カメラ小僧のタカユキには、なぜか5人目のイコちゃんの姿が見えます。
 おまけにこのイコちゃんが超スケベ。しかも、座敷童。

 座敷童というのは、幸運をもたらす妖怪で、そのおかげでタカユキがモテモテになってしまい、やり放題。
 このやり放題のハチャメチャなシーンが連載時におけるひとつの見ものなのですが、タカユキも迂闊なヤツなのです。こんなにモテモテになるならもうイコは必要ない、なんて宣言します。

 こらこら、座敷童がどういう存在かわかってんのか? 感謝の念をもってもてなすならともかく、追い出すとは何事?

 座敷童は去ってしまいます。おかげでタカユキはさっぱりモテなくなってしまうのです。

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 単行本のページ数の関係で、異なるシリーズというか読み切りが1本掲載されてます。が、これだけがヤングキング系列に掲載された作品で、そのおかげで大都社から単行本になったのかな?

 それはともかく、またしても掲載誌休刊による終了です。

(143-509)

【 パート退魔麗/矢野健太郎】

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 多少の霊能力があり、コスプレ好きの、弱小パソコンショップの店員であるチカ(本名は梅近麗美)は、お気に入りの男性である松田(同じパソコンショップに勤務)にとりついた霊体女である琴美を祓おうと奮戦する日々。このあたりのことは、松田が主人公で琴美がヒロインの別作品「コットンプレイ」に詳しいのですが、パート退魔麗では、チカが主人公です。

 パソコンショップがどの程度弱小かというと、一昔前の商店街にあった夫婦2人で経営する町の電気屋が、そのままパソコンショップになったようなイメージです。

 こんなんで経営していけるのは、店員兼SE兼サービスマンのチカが優秀だからでしょうね。パソコンが立ち上がらない、とか、ネットに繋がらなくなった、とか、そういう細々したことに、いちいち出張して対応するサービスが行き届いているためと思われます。

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 さて、そのチカちゃん、退魔師の老人でエロじじいである妖魔ハンターに、後継者として目をつけられます。これは、誤解というか人違いだったのですが、それがわかるのは少し先。エロじじいから、ある方法で霊能力をアップさせられ、跡をつぐことになるのです。
 ある方法とは、魔方陣の中でエロじじいと交わることです。
 その時、事故が起こります。エロじじいがこれまで封印してきた淫魔が、なんと解き放たれてしまいました。このためチカは、エロじじいの後継者としてだけではなく、既にエロじじいが封じ込めたはずの淫魔も退治しなくてはならなくなります。

 しかも、霊能力を高められてしまったために、色んなものが見えること見えること。見えるだけならともかく、余分な波動が漏れまくって、霊にもチカは認識されて、まーありとあらゆる霊が寄ってくる寄ってくる。
 まあ、そのようなドタバタコメディです。

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 さて、では実際にはどのようにして淫魔を倒すのでしょうか。

 これがまた強烈です。淫魔を射精に導き、その精液に封じ込めて、ティッシュで透いとるのです。なんちゅー設定や(笑)。淫魔は、人間の身体を借りて女性と交接します。そしてついに、弱小パソコンショップの店長がとりつかれてしまいました。冴えない初老の男ですが、とりついた淫魔によって美形になります。これでナンパし放題、そうとりついた淫魔は考えるわけですが。

 淫魔の目的は、人間の女をセックスの虜にして淫乱化し、セックスに関する厳しい戒律を破らせること。詳しい時代や場所には触れられていませんが、当時は子作りを目的としたセックスしか認められておらず、それも教会が認めた日に限られるとのこと。快楽を求めるなんてとんでもない話だったのです。
 そして、セックスの相手から精気を吸い、自らの命を維持すること。
 しかし、乱れきった現代日本では、既に清らかな精気を持つ乙女などおらず、吸いとった精気はひどい味で、淫魔はゲロを吐きまくることになってしまいます。ここは思いっきり笑えました。

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 残念ながら掲載誌休刊で連載終了という憂き目にあいますが、それでもきちんと完結しているところが、矢野先生のすごいところです。

 ラスボスも出てきますし、宇宙にまで飛び出してしまうというスケールの大きさもあります。このあたり、本当は駆け足でなく、じっくりと描きたかった所でしょう。私もじっくり読みたかったです。

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(236-966)

【 ガンオタの女/左菱虚秋 】

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 痛恨のミス。

 興味の有る無しに関わらず、マニアックに極めて蘊蓄を満載した読み物は面白いものが多く、知的好奇心も満たしてくれたりするのですが、まさか「ガンオタ」のガンが「ガンダム」だとは・・・。

 山ガールとか歴女とかがいるのだから、ガンマニアの女性がいてもいい。日本では簡単に銃器が所持できるわけではないし、人並み以上の興味もありませんが、モデルガンの収集家なる趣味人も実際いるわけですし、自分で収集せずとも、そういう人にスポットを当てた物語は、それなりに面白いのではないだろうか?
 そんなことを考えつつ、多分、背表紙だけ見て即決し、表紙も見ずに、それも1巻だけでなく2巻までも手に取り、他の本と重ねてレジに向かったのでしょうね。

 ガンマニア、ではなく、ガンダムオタクとは。とほほ。

(142-508)

【 ラブスタ/佐野タカシ 】

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 カバー絵の女の子の色っぽさが、いかにもエロ満載な雰囲気を漂わせていますが、さほどでもありません。ジャンルで言えばラブコメなんでしょうけれど、結構シリアスです。
 青年誌ラブコメなので、少年誌に比べたら、そのものズバリなシーンもありますわなあ、程度です。 

 主人公の生田一馬は、大手人材派遣会社の新入社員。指導を担当する先輩社員の綾瀬陽子には恋人(婚約者)がいるものの、お酒を呑むとぐでんぐでんになるタチで、それがきっかけで、オトナな関係に…なりそうで、なりません。
 一方、一馬は、登録している派遣スタッフ有栖川敦子とデキてしまいます。初期は、仕事は有能だけれど、心が不安定気味で、男に依存しがちな女性という描写がされますが、2巻後半からは、それなりにきちんと色々なことを考えてる女性にイメージが変わってゆきますね。 

 そしてなにより、この物語のキーマンになるのが、一馬の営業先の人事担当をしてる波田洋平です。
 新入社員である一馬に与えられた最初の試練は、2週間で一件でいいから、飛び込み営業で契約を取ってくること。でも、門前払いの連続です。

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 やっと会って話を聞いてくれたのが、洋平なのですが、「お前の薄っぺらな笑顔が信用できない」なんて言葉を浴びせる嫌なヤローなんです。

 でも、最後に、一馬をとある行動に駆り立てたのは、洋平の言葉がきっかけでした。
「人生、何を選択したところで、後悔しないなんてことはない。 残酷だが、それが生きることだ。オマエの選択だけで世の中回ってるワケじゃねえ。だが、何を選択するかくらいは、テメーの自由だぜ」

 会社を辞め、恋人について海外に行き、そして結婚しようとしている陽子を、空港まで追いかける一馬。 
 渋滞で身動きできないまま、携帯電話で「行くな」と、伝えますが。

 フライト時間にはついに間に合わず、展望デッキから飛行機を見送る一馬でしたが、その背後には…。陽子は飛行機に乗らず、一馬を選んだのでした。

 あら、最後までかいちゃった。
 短い作品ですし、予定調和な感じもしますが、複雑に過ぎる物語より、独語の気持ち良さがあって、こういうお話は好きです。


(141-506)

【 アキオ無宿ベトナム/深谷陽 】

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 こらこらー。バリに婚約者を残して、テメーなにやっとんねん。ベトナムへ行ってる場合とちゃうやろー!
 と、ツッコミたくなりますが、とりあえず「アキオ紀行バリ」の続編です。

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 バリに立ち寄ったアキオは、彼女に白のワンピースをプレゼント。しかし彼女は、たった1日着用してくれただけでした。それで気落ちしたらアキオは再び、旅立ったのでした。

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 ベトナムでは、バリで会った日本人のタカハシくんと偶然再会、地元妙に怪しげなのに何故か妙に親切な地元の男どもと行動を共にしながら、観光にナンパにと精出すアキオですが…。
 その微妙に怪しげで妙に親切な地元の男どもに女性を紹介されます。「ツーリストの男は10人中8人は女を買う」と呆れる彼らですが、じゃあベトナム人はどうなんだと反論されて、しれっと「10人」と答えるところが笑えます。

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 タカハシ君は値段交渉を引き受けてくれましたが、彼女らは日本人からぼったくることしか考えておらず、タカハシ君は「話にならん。やめやめー」と、戻ってくるのです。
 ネタは売春ですが、のほほんとした雰囲気が伝わってきます。このあたりが、いわゆるポン引きとの違いなんでしょう。

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 友達として振る舞ってる様子がつたわってきて、温かい気持ちになります。
 その後、なんやかんやのエピソードを経て、バリの彼女への想いを断ちがたいアキオは、再びバリへ。
 彼女アマリアとの再会、甘い日々の始まりかと思いきや、事故で目を負傷し、シンガポールの設備の整った病院へ転院。

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 アマリアへの深い想いに気づいて、「怪我を直してキミの元へ戻るから」で、物語は終わります。
 事前に予告されていた「中国編」を撤回、バリ編をラストまで描き上げるとのあとがきが記されていますが、まだどちらも、実現していないようです。


(140-504)

【 シーラント/矢野健太郎 】

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 ジャンルでいえば、サイコホラーでしょうか。ある日、会社員の杉田の元にシリコン製の精巧なダッチワイフが届きます。仕事中に迂闊に席を離れた瞬間に誰かの悪戯でダッチワイフのオークションページをPCに表示されてて、つい注文してしまったもののようですが、杉田は何かと言うとちょっかいを出してくる同期入社の坂巻という女子社員のしわざだと思いこんでいました。
 杉田と坂巻は同期入社で、当初勝手に杉田が坂巻を先輩と思い込んでいたようです。男女を意識せず、そこそこ気が合うようで、なにかにつけて坂巻は杉田に絡んできます。一度だけ成り行きで寝たことのある2人ですが、「1度寝たからって、調子にのるな」的なことを、お互い口にしていたりします。ただ、読者としてひとこと付け加えるなら、坂巻というOLは、矢野先生の女性キャラの中では、かなり上物です。

 ところで、きっかけがイタズラ(と、思い込んでいた)とはいえ、杉田がこのダッチワイフを購入したのには、わけがあります。別れた恋人の友香にそっくりなのです。

 会社から帰宅した杉田は、ベッドに裸で放置していたダッチワイフが、埃だらけになってるのに気付きます。シリコン製のためか静電気によるもののようです。浴室で洗おうとして、そもそもこのダッチワイフが中古(オークション)ものであることに思い当たり、「まず洗うべきだった」と判断するのですが、その浴室で足を滑らせ頭を強打します。そして、そこからダッチワイフとの会話が始まります。
 そのダッチワイフは主張します。自分はダッチワイフなどではなくラブドールだと。そして、杉田のことをご主人様と呼びます。杉田は頭を打ったために気絶してそんな夢を見ているのだと理解します。
 その証拠に、再度足を滑らせて頭を打ち、気づいたら、生き生きと会話をしていたはずのドールは浴室の床に横たわっています。それで、「やっぱり」と全てを納得する杉田。ですが、その状態からも、ドールは杉田に話しかけてきます。
 杉田は、幻聴と妄想によるものだと、自分を納得させようとするのですが。

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 しかし、不思議なことが続きます。
 仕事から帰宅すると、買い与えた記憶も着せた記憶もないコスチュームを、ドールは着て出迎えたりします。妄想だと自分に言い聞かせながらも一晩会話を楽しんだ翌朝、坂巻が「何日も無断欠勤して!」と、杉田を訪ねてきたりもします。
 慌てて出社する杉田。しかし、彼は無断欠勤などしておらず、それどころか、会社には坂巻がいた形跡すらなくなっていました。

 もはや何が本当で何が幻覚なのか、杉田にはわかりません。

 混乱した杉田が坂巻の家を訪ねると、そこには坂巻の等身大のドールを涙ながらに抱き締める父親の姿と、両親に挟まれて写っている坂巻の写真がありました。坂巻なる女性はどうやら他界していたようです。

 その夜、激しくドールを抱く杉田。しかし、ドールは「これ以上、杉田の居場所を乱してはいけないから」と、一方的に別れを告げます。「俺もつれてってくれ」と杉田は叫びます。
 おそらくその数ヵ月後、杉田の妹を名乗って坂巻が杉田のアパートを訪ねてきていました。大家によると、本人は蒸発し、家賃も今月分で切れ、部屋には女の死体かと思ったというボロボロになるまで使い込まれたドールが残されていました。

 床に転がっていた補修剤を拾い上げた坂巻は、「これで何度も修理して使っていたのね。それで、杉田クンの心は、補修できたの?」と呟きます。
 どこまでが現実で、どこからが幻なのか、作品では明示されません。杉田はどこまでが正常で、どこからが狂気だったのかも、しかりです。

 併録作品は、飯塚を主人公にした「ネコじゃないもん」の後日談「いつか見た夢」と、読み切り短編が納められています。
「いつか見た夢」では、「ネコじゃ」の時には作者にそんなつもりはなかったのでしょうけれど、伏線の回収のようなことが行われたりもしています。というか、「いつか見た夢」を描くにあたって、ネコじゃのこの部分を伏線だったことにして、ここで回収しよう、ということなんでしょう。


 僕の邪推でしかないのですが、ネコじゃは作者的には完結させたかったところを、人気があったので編集がやめさせてくれず、連載続行となったために第2部がグダってしまったのではないかと思っていたりします。そして、第3部でテコ入れがなされたのではないでしょうか。
 しかし、「いつか見た夢」ならば、派生作品としてまだまだ継続できたように感じました。飯塚のカッパ禿、いっそのことスキンヘッドにしたらカッコいいのに、相変わらず長髪なのが未練で笑えます。

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(235-965)

【 ワイルド7R(リターンズ)/望月三紀也 】

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 一番新しい、そして、最後の「ワイルド7」です。
 元々のワイルド7は連続ドラマにもなりましたし、その後、OVAにもなったと思います。数年前には、瑛太が主役で映画化もされました(観たかったんですが、残念ながら…)。 
 銀河鉄道999、サイクル野郎と並んで、過日の少年キングを支えた看板作品です。

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 R(リターンズ)は残念ながら、往年のメンバーは飛葉しか登場しませんが、迫力有るアクションシーンは相変わらず健在。
 草波検事は親から子へ代替わりしたようですね。顔、同じですが(笑)

 ワイルド7が退治するのは、警察や司法の手に負えない悪人。逮捕、ではなく、退治。すなわち、その場で撃ち殺してしまうのです。それが許された部隊です。

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 大伍というかつての飛葉同様のスタンスのキャラが登場し、飛葉は前半は フォロー役。しかし後半は飛葉の活躍が無くてはならないものとなります。 

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 1巻も2巻もそれぞれ書き下ろし。直接のストーりーの連続性はありません。又、ワイルド7と言いながらも、7人それぞれが何らかの役割があり、活躍するというのは、示唆されてますが、シーンとしてはほぼありません。若干太目ながら一冊で一話完結の書き下ろしでは仕方ないかもしれませんね。 

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 あとがきでは、ファンの熱意に応えて、まだ描き続けたいという意志が見えましたが、残念ながら故人となられ、これがラストのワイルド7です。

(138-501)

【 ヤングブラックジャック/田畑由秋・大熊ゆうご 】

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 賛否両論、というか、好き嫌いの別れる作品では? と、連載当初は思ったのですが、意外と長続きしてますね。
 本編へつながる若きブラックジャックが主人公ですが、なるほど確かに若い頃のブラックジャックだと思える部分と、いやいやいや若い頃のブラックジャックはそーではないでしょと思える部分が、あります。
 このアリの部分とナシの部分、読者によって違うでしょうね。

 それらはきっと、読者ごとに異なるブラックジャックに対する印象や思い入れがあり、その全てに対応することができないからでしょう。
 とか感じたのもあって、そんなに続かないと思ってたんですが。

 手塚治虫先生自身の作ではないとはいえ、ブラックジャックという人間の生きざまが、やはり、多くの人の興味をひくのかもしれません。
 とはいえ、手塚先生が若き日のブラックジャックのお話のプロットなどを残しているわけではなく、新たな作品なわけですし、時代を色濃く反映した社会派漫画となっているようで、独立した作品として評価されているのかなとも思ったりします。

 本編のブラックジャックだって、話によっては、「こんなブラックジャックはいや!」と思わせることはあったんですが、でも、それもブラックジャックの一面であると読者が納得したのは、生みの親である手塚先生の描いたブラックジャックだったからです。
 しかし、それはどんな作品に対してもあるわけで、後付け創作の場合も同じ、ということなのでしょう。

 自分はむしろ、ヤングではなく、その後のブラックジャックを読みたいです。
 後日談なら、「こんなブラックジャックはいやだ!」であっても、心境の変化や周囲の状況、またブラックジャック自身も年齢と経験をかさねていった末のことと、納得しやすかったはずだし、それもまた物語の醍醐味と思うからです。

 とはいえ、ヤング編は、矛盾なく後のブラックジャックにつなげなくてはならないという絶対条件の中で、物語も面白くしなくてはならないという困難な作品、そういった取り組みには敬意を表します。
 物語としては、面白いのですが、どんな風に若かりし頃を描くつもりなのかなという興味だけでしたので、1巻を所持するのみです。


(137-499)

【 アイはカゲロウ/瀬口たかひろ 】

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 カゲローという影の薄いキャラが主人公。
 あまりにも影が薄いので、このままだと消えてしまうと危機感を抱いた「カゲローの影」が現れて、カゲローを乗っ取ろうとします。

 その影は、何故か女? 何故? それはこの作品が、エロコメだからです!(笑)
 影のカゲロー乗っ取りは、上半身だけ成功します。だから上半身は女です。しかし、下半身は男のまま。実体のカゲローはとんでもない姿になります。

 どうして、こんなことに!
 それは、この作品が、エロコメだからです!

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 これを「しょーもねーエロコメたなあ、もう~」と、思うなかれ。やはり、と言うべきかなんというべきか、佳境に入ってくると、それなりにハードな作品になってくるんですよ。

 ところで、カゲローの彼女を自認するトンちゃんという女の子、何故かゼンジー北京語を話します。
「○○アルよ…。」みたいな言い方は、夢幻紳士の甲保もしますが、「○○のココロ」と、徹底したゼンジー北京語は、マンガでも珍しいですよね。


(135-493)

【 チーズの時間/花形怜・山口よしのふ 】

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 両親を事故で亡くした亜氷音レミは、フランスでブルノーというおじさんに育てられ、「全フランス チーズ鑑評騎士の会」から史上最年少で「騎士」の称号の叙任を受けました。
 そして、二十歳になり「日本でチーズ屋を開く」という夢の実現のために帰国しました。 

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 彼女が帰国したのには、もうひとつ目的がありす。チーズ専門店を経営する傍ら、祖父母を探すことです。祖父母は「ささき」という日本料理店を営んでいると聞きおよんでいました。

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 フランスでは当たり前のチーズ専門店ですが、日本では馴染みがなく、なかなか商売は軌道に乗りません。また、「ささき」を名乗る料理店は多く、祖父母探しも容易ではなく、前途多難な日本での生活がはじまりました。
 しかしながら、ルミの情熱は周囲に理解されはじめます。店舗付住宅を斡旋してくれた不動産屋の山本あらし(若くてハンサム)、大家の一ノ瀬(頑固な老人)など、様々な人との出会いを通じて、徐々に常連客もつき……、というような、チーズを題材にした基本的に1話完結のエピソード集です。

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 なので、どこから読んでも楽しめますし、物語全体を貫くストーリー(商売の成功、祖父母探し、一流を目指すフランス料理店のチーズ担当など)もあり、長編漫画としても楽しめる作品になっています。
 ラストに近くなると1話完結のパターンが崩れ、エピソード集と物語全体を通してのストーリーが融合。
 エピソードを全て、あるいはいくつかピックアップして紹介するだけでもなかなか大変だし、重要なサブキャラの紹介も実はバッサリ省いているのですが、その代わり作品に登場するチーズをズラリと紹介しておきましょう。

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第1話 ロックフォール
第2話 パルミジャーノ・レッジャーノ
第3話 チェダー
第4話 カマンベール・ド・ノルマンディ
第5話 カチョカバロ
第6話 フロマージュブラン
第7話 モン・ドール
第8話 ゴルゴンゾーラ
第9話 ラクレット
第10話 ガプロン
第11話 フォンティー
第12話 ミモレット
第13話 ポーフォール
第14話 ラングル
第15話 アズィアーゴ
第16話 サント=モール・ド・トゥーレーヌ
第17話 ペコリーノ・ロマーノ
第18話 ブリ・ド・モー
第19話 ブロッチュ
第20話 ペライル・ド・ブルビ
第21話 エダム
第22話 ヴァランセ
第23話 エポワス
第24話 ブレスブルー
第25話 テッド・ド・モワンヌ
第26話 カンボゾーラ
第27話 バラカ
第28話 マスカルポーネ
第29話 アポンダンス
第30話 スティルトン

 内部は青カビで、外側が白カビというチーズがあります。僕はこれを何かで知って、実際に一度だけどこかのお店で購入もできて、食べもしたのですが、それ以降、全く出会えていません。
 ドイツではそれほど珍しいチーズではないようなのですが、この作品に出てこなかったのは、ちょっと残念ですね。


(136-498)

【 碧いホルスの瞳 ②/犬童千恵 】

 6巻が発行されました。

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 男装のファラオとなったシェプストの治世が始まりました。戦争により領土を広げて国を繁栄させるのではなく、彼女の望みは平和な世。そして、交易による国の繁栄です。しかし、自分の知っている世の中は少なく、本物とはなにかということもわかりません。より広い世界を見渡すには、自分の目だけでは足りないのです。そこでシェプストは、腹心のハプスネブに、「この国でもっとも美しさを知る者」を探すよう命じます。
 こうしてやってきたのが、バネヘンという若い商人です。交易で諸国を巡り、ホンモノを見る目を養ってきたと言います。
 彼は歓迎の宴を不愉快と中座し、では何を望むかとシェプストの問われ、王に伝わる首飾りを所望します。場は「冗談じゃない」「ふざけるな!」という空気になるのですが、豪胆にもシェプストはこれに応じます。王の首飾りは王家の宝物ですが、有能な者の活きる新しい時代は、宝物なんかよりも、もっと代えがたい宝なのだとシェプストは言うのです。

 バネヘンはその才能を遺憾なく発揮し、王宮内の地位を築き、外交官として交易に活躍します。それを面白く思わない人たちもいます。それは、王宮で従来その役についていた役人たちです。

 役人たちは、ハプスネブに何とかしてくれと訴えたりもします。この不協和音をシェプストの耳に入れたのはしかし、ハプスネブではなく、バネヘン本人でした。
 揉め事はごめんだ、仕事に集中したい、従って、古い役人達を切るか、自分を放逐するか、ふたつにひとつである。そうバネヘンはシェプストに迫ります。
 しかしシェプストはどちらも選びません。バネヘンに、役人達へ知識と経験を分け与えろと言います。また、役人達を尊重し、バネヘンもまた彼らから学べと付け加えるのです。

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 さて、シェプスト率いるエジプトは、新たにプントという国との交易を開きたいと考えていました。500年前に交易をしていた頃は、首都メンフィスから数10マイル程度砂漠を隊商が横断していました。しかし、現在の首都はテーベで、プントへむかうための港までの距離は150マイルにもなり、隊商が陸路を進むのは現実的ではありません。そこで、紅海とナイル川を結ぶ運河を開削することを思い付きます。

 戦争のない平和な世の中。交易による繁栄。そのための運河開削という大事業。大いなる夢に想いを馳せて目を輝かせるシェプストに、バネヘンは至上の美を見いだします。ここまで明瞭に作品には表現されていませんが、王の首飾りをバネヘンはシェプストに返却したことから、このことが窺われます。

 一方、センムトも建築士として各地で辣腕を振るっていました。神殿の新築、増築、補修などで名声を高めています。そして、かれの手掛けた神殿には、女ファラオの像が建てられました。シェプストの想いを象徴するためのもので悪意はないのですが、バネヘンは異を唱えます。王は人間ではない。最高神アメン=ラーの息子である。今のあなたはただの人間の女である、この像はそれを現してる、と。

 バネヘンの言葉が、エジプトとファラオを思っての素直で真摯な意見なのか、シェプストとセンムトを引き離すために弄したものなのかは、まだわかりません。わかりませんが、これがきっかけとなって、シェプストはセンムトとの男女の関係に終止符を打ちます。そして、以後のファラオ像を男性の姿で造るのなら、放逐は思いとどまってやると宣言します。

 やがて運河が完成。プントとの交易を始めるべく、シェプストはプントを訪問し、交渉に臨みます。
 交易に力を入れ始めたエジプトには様々な異民族が訪れ、治安が乱れ始めました。国境付近の村では異民族に襲撃されるなどということも起こっています。
 そんな時、シェプストの息子、トトメス3世は元服(12歳)をむかえました。トトメス3世は、母と離れ、メンフィスで教育を受けていたのですが、12歳になると軍隊に入ることができるので、入隊を志願します。
 「余は軍人となり戦に出て強きエジプトを取り戻す」と宣言します。
 この宣言に国王軍は士気高く盛り上がるのですが、「このままでは国がふたつにわかれてしまう」と感じた者が、シェプストに知らせようと走ります。

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(234-958)


以前の掲載はこちら ↓

http://zukuzuku.hatenablog.com/entry/2019/04/11/011310

【 クースー/あおきてつお 】

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 クースー。漢字で書くと、古酒。泡盛、すなわち沖縄の蒸留酒の熟成させたもののことです。
 作品内では、5年以上寝かせたものを古酒と呼んでいるようですが、何年も保存に適した状態でおいておけば良いというものではなく、毎年若干の新酒をブレンドしてこその味わいなのだとか。

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 一方、法律では、全量が3年以上寝かせたものでなくては古酒と名乗ってはいけないようです。
 これでは毎年新酒をブレンドしててはいつまでたっても古酒と名乗れず、作品内で言う古酒が本当の古酒ならではの美味しい古酒の作り方であるなら、法律が現実とかけ離れてしまっていることになります。
 どちらが、美味しい酒を飲むために適切な定義なのか、私にはわかりませんが、伝統的な製法と法律とのギャップ、歩み寄ることはできないものでしょうか。

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 この作品、「クースー」は、15年ぶりに東京から故郷の宮木島(おそらく宮古島をモデルにした架空の島)に戻った二十歳の女の子さくらが、家業であった(現在は廃業している)泡盛作りの蔵を再興しようと奮戦する話が軸になっています。

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 そこに、病気で味覚を失った元杜氏、ホテルのバーでバーテンダーをしてるのに洋酒が全く呑めない秋奈、さくらの祖父母他、色々な人々が登場します。
 さくらの帰郷は母の死がきっかけです。父は行方不明。もはや記憶にも残っていない祖父母を頼ってのことでした。

 酒蔵が廃業していることも、この時点ではさくらは知らなかったのです。
 でも、旨い酒を造ろうとしていた父の意志をついで、酒蔵を復活させ、父が生んだ幻の泡盛(正確には泡盛と焼酎をブレンドした新しい酒)を自らの手でもう一度、と夢を抱くのです。 

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 前途は多難。廃業して荒れた状態の装置を修理したり、取り替えたりするのに、約2500万円が必要ですが、まずその資金がありません。
 問題はもうひとつ。日本酒と異なり、泡盛は原料のタイ米を政府が一括輸入したものを使うので、原料の米を選べない、どこの酒蔵も同じタイ米を使わざるを得ないのです。

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 原料まで遡って厳選し、理想とする味を追い求めるという、一定レベル以上の飲食物を作るための当たり前のことが、そもそもできない、ということなのです。

 結論から言うと、このふたつの問題は解決します。多少ご都合主義ではあるものの、難題を創意工夫努力して、乗り越えていこうとする彼女たちと、その周囲で彼女たちに助力をする人々の姿が、このストーリーのキモとして描かれています。

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【 スカイハイ/高橋つとむ 】

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 この作品はテレビドラマになりましたよね。観たこともあったと思うんですけれど、イマイチ覚えていないなあ。

 物語は、多分、1話完結です。なぜ多分かというと、1巻しか持っていないからです。もしかしたら、2巻以降には、長目のお話もあるかもしれません。

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 この世での出来事に様々なわだかまりを残したまま、あの世へ旅立つことになってしまった、ということなのでしょうが、そこに、つけこんだ(?)あの世の門番が、死者に対して、その先のことを、選択させます。

○ 死を受け入れ、このまま天国に行き、再生を待つ
○ 現世をさまよい続ける
○ 1人呪い殺して、自分も地獄へ行く

 この3つがその選択肢なのですが、まあ、普通は「天国へ行き再生を待つ」を選ぶでしょう。
 しかし、自分が地獄へいくことになっても恨み殺したい相手がいる、なんて選択肢もあるわけですから、これを選ぶ人は相当酷いめにあわされた、ということなんでしょう。

 いやー、でもこれ、どうなんでしょうねえ。漫画としての設定の面白さを楽しむ、というスタンスなら、この選択肢でいいんですけど、ついつ:「自分だったら、どうする?」って考えませんでしょうか?
 考えて悩んで、そして多くの場合は、「相手を呪い殺す代償が『自分も地獄行き』では割りに合わない。次は良い人生になると信じて再生を待つ、だよなあ」となるでしょうね。でも、作品の登場人物はそうとは限らない。そのギャップを楽しむ漫画なんでしょうけど。
 そこまで酷いめにあったのなら、「相手は地獄、自分は天国」じゃないっすか?

 人を呪わば穴二つ、といつような、教訓的なお話にするなら必要があったのか、それとも、自らの地獄行きとひきかえにしても、呪い殺したい相手がいるんだよという人の業を描こうとしたのか。

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【 幻影博覧会/冬目景 】

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 冬目景先生の作品です。全部ではありませんが、冬目先生の作品は、そこそこ持っています。好きです。

 この幻影博覧会は、舞台は日本、時は大正、ジャンルは探偵ものです。
 といっても、謎解きそのものが主題というより、人物やそれをとりまく状況に重きが置かれてるようですね。複雑怪奇な推理もありませんし、金の仏像なんかは私でも謎解きできましたから。

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 歳の頃は、16~7くらいの真夜は、居候先の藤枝博士の紹介で、博士の教え子である松之宮なる人物が経営する探偵事務所に就職します。
 物静かですが優秀で博識な彼女は、松之宮の良き助手として活躍します。

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 ストーリーは、1話から数話で完結。ゴルゴ13スタイルです。全体を貫く謎も最初は感じられません。
 しかし、物語の進行につれて、ある謎が深まってゆきます。それは、物語の中で依頼される謎解きや発生する事件ではなく、真夜そのものの謎です。

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 真夜は、なぜか未来の予想ができる能力があるのです。これが唯一、この作品でのファンタジー要素でしょう。

 もっとも、作品全体にファンタジックな雰囲気は静かに流れているんですけどね。
 大正という時代のせいもあるでしょう。登場人物に洋装と和装が入り乱れているのも、この作品の雰囲気に一役買っています。

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 ところで、なぜ真夜が藤枝博士のところに身を寄せているのかというと、彼女の両親は古物学者でほとんど海外暮らしのためです。
 その両親もやがて帰国。一緒に暮らそうということになります。しかし、松の宮のもとで助手を続けたい真夜は、両親と一緒に暮らす決意がつかずに逡巡します。
 訳あって、親元を離れて1人暮らしをしている松之宮は、真夜のことを想い、やはり彼女は親と一緒に暮らすべきと考え、説得します。彼女もそれに応じ、探偵事務所を退職するのですが…。

 ひょんなことから真夜は、この両親を名乗る人物が偽物であることを見抜き、逃げだします。
 松之宮は松之宮で、恩師であるはずの藤枝博士が実は恩師などではなく、思い出そうとすればするほと、思い出の中に居ないことに気づきます。そして、それ以降連絡がとれなくなってしまいます。

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 真夜の両親を名乗るのは何者? そして、藤枝博士の正体は?
 探偵と優秀な助手の物語から、話の展開が変貌していきます。

 そして、とどのつまりは「では、真夜って何者」ということになるのです。そういえば、彼女には未来予知の能力があるのでした。
 得た結論は、真夜に予知能力があるのではなく、彼女は未来からやってきた人であり、だから歴史を知っている、というものでした。

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 偽の両親のもとを逃げ出した真夜は、友人達の協力もあり、松之宮と再び会うことができました。
 彼女をとりまく人々はおおむね正しく彼女の正体を悟っていきます。
 そして、ついに彼女が本来のいるべき時間に戻るための、本当のお別れの時がやってくるのです。
 松之宮探偵事務所は、しかし、彼女の去ったあとも、平常通りの業務をこなしている模様です。

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(133-490)

【 モンキー・パンチ漫画セレクション④MPガールズ編 】

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 ルパン三世以外の、モンキー・パンチ先生の単行本が出てるじゃねーかと、思わず購入しましたが、作品集の四冊目とは、そのときは気付きませんでした。(後にも先にも、④以外見みかかけませんでしたが…) 
 MPガールズ編のMPってなんだろうと思って、わからないまま最後迄読んで、巻末のインタビューでようやくわかりました。モンキー・パンチのことでした。
 要するに、モンキー・パンチ先生が女性を主人公に描いた作品を集めたものだったのです。

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 「カラーガール」は学園もの5話、「ピンキー・パンキィ」は探偵(?)もの6話、他2編収録です。
 ピンキー・パンキィの中に、犯人が目撃者の瞳に映っていた、というエピソードがあるのですが、実際にそれで犯人逮捕という事例がありましたね。漫画の話だと思ってましたが、世の中進歩するものです。

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 それはともかく、ルパン三世以外の氏の作品って、透明紳士しか知りませんでしたし、もっと復刻して、それなりの部数刷って、ちゃあんと流通してほしいものです。

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ご冥福をお祈り申し上げます。