【 おくりびと/さそうあきら 】
本木雅弘が主人公の小林大悟を演じた映画は高い評価を受けました。
マンガ版おくりびとは、映画原作でもなければ、映画のコミカライズでもなく、むしろメディアミックスというべきでしょう。
映画公開にさきがけ、連載・発表され、細かい相違はあるものの、建物の描写なども映画そのものらしいです。
プロのチェロ奏者だった大悟が、楽団の解散で職を失い、故郷の山形に妻と共に引っ込みます。
そこで得た仕事が納棺師でした。
「安らかな旅立ちのお手伝い」的な求人広告に、旅行会社か何かだろうと半ば勘違いして面接に行き、即、採用。
人の死に携わる仕事ということで忌避されがちで、周囲からも「そんな仕事…」という目で見られます。
本人も何度か、辞めようと心が揺れるのですが、人の死は待ったなし。仕事は次々入ってきます。色々な死に様に対峙するうち、大悟も徐々に仕事に誇りを持つようになっていきます。
ある日、30年前に出ていったきりの父親の訃報が届きました。既に縁の切れた人と、故人との面会すら拒否する大悟、しかし職場の社長や古くからの事務員に説得され、妻と共に葬儀に出向きます。そこで大悟は、父親の遺体が地元(?)の葬儀屋から粗雑な扱いを受けているのを見て、 納棺師として自分が後を引き受けると申し出ます。
最初は、仕事を辞めることばかり考えていた主人公は、父親を自分の手で、故人の尊厳を胸に抱き、見送るのです。そして、物語は幕を引きます。
人の死生観を描いた作品ですが、作り手の死生観を私が理解できたかどうかは自信ありません。せいぜい、自分のの死生観とはなんだ? そんなことを考えたことはあるのか? と、自問するのがせいいっぱいでした。
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