【 なんでも解決!? 110番/服部あゆみ 】
日本橋懸(かける)は、鍵がなくて家に入れずにいるところを、隣のお姉さん「奈緒姉ェ」に助けられました。これがきっかけでずっと彼女に憧れていたのですが、「結婚するなら警察官」と考えてることを知り、自分も警察官を目指します。公務員になりたいという将来像とも合致します。
そして、交番に配属されます。お巡りさんコメディです。コメディを成り立たせているのは登場人物のみなさんです。
日本橋懸(主人公)は、T大卒のキャリア。新人ですが、キャリアなのでいきなり警部補です。
懸の階級章を見て驚いたのが若手でイケメンでちょっとお調子ものの椙森巡査。箱長(交番の責任者)の御法川十子が美人だからその下で働けてラッキーとか思っています。
御法川十子は巡査部長。ショートヘアのクールビューティーです。
そして、佐久間八重巡査は巨乳でメガネっ子。
この4人が同時に登場してますから、交代要員としてこの交番に勤務してるお巡りさんはまだまだいるはずですが、作品には登場しません。
さらに、犬の一ノ宮警部。引退した警察犬(麻薬探査犬)で、近所に住むやはり警察OBに飼われていますが、懸になついていて、しょっちゅう交番に遊びにきます。鷹揚な時代とはいえ、警察官OBが犬を放し飼いにしてるってのは、いかんですよね。
懸になついている人はもう一人います。ひばりくんです。ボクっ子かと思えば、顔はかわいいけど正真正銘の男子。ただし、女装趣味で、警察マニア。交番に入り浸って迷惑がられているが、懸だけが親切なので、なついているようです。でも、なついているだけで、スキンシップはあるものの、ゲイと思えるようなシーンはありません。女装していますが、性同一性障害とも違うようです。
今でこそLGBTだの、じぶんらしい生き方だの、人権だの言いますが、ひばりくんは何のこだわりもなく、奔放です。
警察マニアは男の子らしい趣味だといい、男なんだと主張していますし、婦警さんグッズを集めるなど、どうみても男の子ですね。
物語の流れは、懸とひばり君による推理ものという要素もあります。刑事じゃないから捜査はしないと懸が言ってる通り、刑事ものではありません。でも、よく殺人事件に遭遇します(たいていは死体の第一発見者)。そのせいか、刑事物ではないけれども探偵ものの雰囲気があります。
たいていは、屋根から降りられなくなった猫を助けてくれとか、壊れて飛ばされた傘が木にひっかかっていて、いつ再び風にあおられて飛ぶかも知れず、それが車のフロントガラスを覆ってしまうと危険だから撤去回収しなくちゃいけないので木登りするはめになるとか、科学者で大学教授の懸の父がエボラ出血熱のウイルスの入った鞄をなくすとか、そんなお話です。
でも、誘拐らしき事件とか、連続殺人事件とかも起こります。
上下2巻で、下巻に入るともう「日本橋警部補最後の事件」となります。交番勤務という研修を終えて、次のステップに進むのでしょう。
最後の事件では、警察官ばかり5人も殺される連続殺人事件が起こります。
懸をからかうのが好きらしい東京都観察医務院の非常勤監察医、左沢双葉に、懸はある疑問をぶつけます。
「これって本当に連続殺人なんでしょうか? 本当に犯人は1人なのでしょうか?」と。
左沢は言います。「最小で1人、最大で5人」。まあ、これは明らかにからかわれてますね。
でも、懸のこの推理というか直感というか、この考え方は正しくて、2人の犯人による2つの連続殺人事件だったのです。
さて、奈緒姉ェですが、犯人にボコボコにされた懸の見舞いにやってきます。見舞の割りには辛辣で、これもんです。
しかも、懸の奈緒姉ェに寄せる気持ちなんかこれっぽっちも感じていません。
こんな結末です。
さて、そんなにたくさんの作品を描かれてる方ではなさそうなのですが、先にレビューした「2度目の人生アニメーター」と関連のある漫画家さんです。「ガンダム」のアニメーターさんだったんです。
漫画家さんとしてより、イラストレーター・挿画家としての方が馴染みのある方かもしれません。「星子ひとり旅シリーズ」の表紙や挿画を多数担当されています。僕もその絵が好きで、服部先生の漫画を買うようになった一人です。
(221-880)