【 流風/中垣慶 】
流風と書いて、リウフェンと読ませています。登場人物の名前です。
母と娘、たった2人の新堂流という拳法の道場。10年前に先代が亡くなり、門下生も離れていってゼロになり、しかも借金の保証人としてヤクザものから執拗な取り立てにあっています。
そこへ14年振りに父が帰宅します。父は門下生で入婿。中国で長く厳しい修行を終え、流通という息子を連れて帰宅しました。
息子といっても血は繋がっていません。旅の途中、行き倒れていた女性から託されたのです。その女性は間もなく絶命、流風は、血の繋がりはないのに、なぜか父になつき、一緒にとある寺に入って修行、気功を中心とした実践拳法を身に付けて、父の帰国についてきたのでした。
ヤクザものを追い払い、素人がテレビで特技を披露するコンテストに出演、磨き抜かれた気功術を披露して優勝。優勝賞金では借金全額の返済には至らなかったものの、テレビのおかげで門下生が集まり、新堂流は復興、道場の経営はようやく安定しました。
その流風を追って、中国から火露(フオルウ)が来日、再三勝負をしかけてきます。
まずは学校へ押しかけてきて、流風が勝負を避けると、今度は道場までやってきます。
2年前の武道大会で流風に破れており、リベンジを果たすべく、日本までやってきたのです。
しかし、なぜか流風は応じません。学校や往来ならともかく、道場に場を移しても、同じでした。
火露にしてみたら、流風に「勝ち逃げ」されたようなもので、納得いきません。再戦のために修行を積んでいたのですから、もっともな話です。
実は(読者にもその時点まで伏せられています)、火露は女性で、流風は極度の女性アレルギーだったのです。
前の試合では、勝ちはしたものの、その直後に全身に蕁麻疹が出てしまい、それ以来、女性を避けてきたのです。
火露との対戦で、女性の柔らかさに驚き、女性は脆いものという思い込みが染み付いてしまったこと、そして自分はまだ未熟で力の制御がしきれず、相手を壊してしまうかもしれないという恐怖、このふたつが原因でした。
表題作2話の他、狼くん突風、ミッションⅡ、ミルキィ先生(いずれも連載終了後の後日譚短編読切と思われます)、他1編を収録。
(095-751)