【 RIVIVE!/五十嵐浩一 】
五十嵐浩一先生の全4巻、結構シリアスなストーリーです。
保険会社のエリートサラリーマン小此木はある日、自宅近所のシャッターだらけの斜陽商店街で、古い模型屋のショーウインドゥに飾られたフィギュアに目を奪われます。オタク心が一気に再燃します。
早速手に入れて帰宅しますが、そのフィギュアを年頃の娘に見られアダフタすることに。
スカタンこいたのは、家だけではありませんでした。仕事でも大きなヘマをやらかし、取り返しのつかないことになってしまいます。
意気消沈している課長の小此木を元気づけようとした部下達に誘われ、彼はメイド喫茶に強引に連れ込まれます。
そして、メイドをやってる我が娘と、バッタリ!
出会い頭の事故のようなものですが、中高一貫の名門私立中に通う娘がメイド喫茶でバイトとは! 小此木は我が眼を疑います。
そして、家族という繋がりが狂い始めるのです。
そんな折り、会社は金融庁から業務停止命令を下され、組織再編の必要性にせまられます。
小此木の次のポストは栄転と言えます。しかし、それとひきかえに部下全員が左遷という人事でした。
小此木は、退社を決意します。そして同じ日、娘も退学してきました。休みがち、いじめられがちで、名門校にいづらくなったのです。
相変わらずなのは、妻が美人の会計士でバリバリのキャリアウーマンということだけ。
絵に描いたようなエリート一家だったのが、父も娘もドロップアウト状態になり、並み以下の状況に追い込まれます。これをきっかけに、家族はバラバラになってゆきます。
娘は地元の公立中学に転入します。そこで、仲良くなったのが、いかにもという感じの不良少女。
さらに、その不良少女にいじめられひきニート化した少年とも親しくなってゆきます。
名門私立を退学したとはいえ、一応は「学校に通う普通の女子」に落ち着くわけです。
しかし父親はまともな再就職とはなりませんでした。ひょんなことから、シャッターだらけの商店街の一軒の「古い模型屋」の店番を住み込みで引き受けることになります。
そこへ、母との折り合いが悪くなった娘が転がり込んできました。
荒れに荒れている公立中学の一員になった娘ですが、1日の売上高が800円の模型屋の娘になってしまいましたから、荒れてる連中と一緒になって遊ぶためのお金すら父親に無心できません。
娘のクラスメートで、模型屋の常連で引きこもりニート君を、同級生が刺したなんて事件迄発生しますが、誤解であることが判明。一件落着します。
やがて、娘の公立中学への転校も、友人ができそれなりの中学生活となり、模型屋の廃業と親父の再就職となど、また家族の時間が流れ始めます。
この作品にはこの他に、ことあるごとに高い価値のある古い在庫を売り払って一財産作ることばかり考えてる模型店の老店主の息子、40過ぎて未婚という典型的なオタクの常連(実は天才プログラマー)など、物語をひっかきまわす脇役も登場します。
娘の友達の不良女子中学生や、ひきニート君も含めて、当初は「なんなんだよ、こいつ」と思わせるキャラのオンパレードですが、結局は理解しあって暖かい想いで支えあって生きていきましょう、というメッセージかなと、思ったりもしました。
五十嵐先生の作品は、なんだかんだ言いつつも体制への反骨精神が多かれ少なかれどこかにあります。そして、この他に「ペリカンロード」のような青春もの兼抗争ものや、SFものなど作風も広いのですが、私はこの作品や「めいわく荘の人々」のように、結局のところ「暖かい気持ちを持った人間が支えあってるやん」っていうのが好きです。
もしかしたら、SF戦記や暴走族の抗争よりも、暖かい人の気持ちがどこかから溢れてるという方が現実的ではないのかもしれません。だからこそ、そういうのを漫画から得て、癒されてるのかもしれませんね。
(123-463)