漫画パラダイス

読んだ漫画のレビューなど。基本的には所持作品リストです。

【 7SEEDS ③/田村由美 】

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 未知のウイルスと思われたそれの正体はダニで、冷凍状態だと活動を停止しますが、死滅するわけではありません。
 このダニがシェルターの外へ漏れだし、蔓延するのを防ぐために、シェルター「りゅうぐう」は自ら幕を引きました。そのダニとともに凍らされた人々のいる「冬」の区画を、シェルターの崩壊から逃れて地上に出てきたメンバーが開けたことを知った夏Aチームの安吾は、「汚染を考えず戻ってきたのか?」と、咄嗟に銃を出し、引き金を引きます。銃口を向けられたのは、それらの説明役をしていた欄ですが、彼女1人だけを殺しても意味ありません。この時の安吾は、皆殺しにするつもりだったのでしょう。
 欄の前に飛び出して、実際に銃弾に倒れたのは十六夜でした。
「愚かな一般人が、全員を危険にさらす」と、安吾はさらに銃弾をぶっぱなそうとしますが、苅田に飛びかかられて銃を落とします。
 ナイフで反撃する安吾。さらに苅田には4つの銃口がつきつけられます。

 苅田を一喝で下がらせた秋ヲ、今にも飛びかからんとする犬を押さえ込んでいる新巻の姿に「行きましょう」と離脱を提案した虹子、この2人によってこの場はおさまります。しかし、こんな誰もいない世界で銃で襲ってくるような所業に対して、花の怒りは収まりません。
 さりゆく夏Aチームから引き返してきた鷭は、くるみの妊娠に気づいていました。あらためて身体をいたわるように伝えて、夏Aチームを追います。
 物語の中で「とんでもない連中」の位置をしめていた秋のチームは、協力しあって地下から脱出したことに加え、敵対的な夏Aチームが登場したことや、夏Aチームが彼らを一般人呼ばわりしたことで、「とんでもない連中」から、過酷な未来世界を共に生き抜く仲間に印象が変化します。

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 クルーザーと思われたその船は、帆船でした。文明が崩壊しているであろう未来へ贈る船が、燃料を必要とするものでは、確かに非現実的です。でも、帆を張っていない時の外観や、船の居住スペースはクルーザー的な感じがするので、引き続きここではそう表現することにします。
 嵐、ナツ、蝉丸の3人は、順調に航海を続けています。そして、波間に漂う人間を発見し、救助します。春のチームのひばりでした。彼女は解凍に失敗して眠り続けていたのですが、救助されて間もなく、目を覚まします。
 嵐たちが一瞬、蛍と見間違えるほど、ひばりと蛍は似ています。ひばりが言うには「遠い親戚」とのこと。
 また、この2人は双子のように、離れていても感応しあうようで、ひばりは「蛍ちゃんはゆっくり死にかけてる」と言います。

 蛍もまた、ひばりを感じていました。ひばりが目覚めたことで、蛍も彼女に感応したのでしょう。
 そのひばりですが、牡丹、ちまきと共に、暗い穴に落ち込んで、動けなくなっていました。嵐、ナツ、蝉丸が去った夏Bチームは、降り積もる灰に悩まされ、移動を開始したのです。百舌は「急にいなくなったりするが気にしないでくれ」と宣言したとおりこの場にはおらず、穴に落ちなかったまつりが、何とか穴の中で動けなくなっている牡丹たちに水を流し入れて供給していました。
 自分1人ではなんともし難いまつり。助けを呼びにいきます。といっても、誰かに出会える確率はほぼゼロです。牡丹も、誰もいやしないと、ほぼ諦めています。
 夏Bチームは見つけた資材倉庫をベースに定住しようとしていましたが、嵐、ナツ、蝉丸の3人が関東に向けて出発した後、灰の降積に苦しめられ、定住を諦めて移動を開始します。そして、このような目にあったのです。
 嵐ら3人はクルーザーを手に入れて戻る途中、船底が何かにつっかえて身動きがとれなくなります。航路の左右両方に陸地が見えます。だとすれば、瀬戸内海かなと僕は考えましたが、その通りでした。小舟に乗り換えて(多分救命ボート)秋チームがいた神戸富士をベースにした村に立ち寄り、花が嵐に宛てた置き手紙などを発見しますが、村そのものは荒廃しています。やはり、降灰のために村を捨てたのです。

 クルーザーに戻った嵐は、誰かに発見されやすいよう、手作りの凧をあげます。海岸に出たまつりはそれを発見。木に捕まってバタ足でクルーザーに向かいますが、力尽きてしまいます。同じく海上にいた百舌がまつりを見つけ助けあげ、2人で嵐たちのもとへ。

 百舌の指揮のもと、クルーザーから道具を持ち出し、牡丹達の救出に向かう嵐一行。おかげで牡丹、ちまき、蛍を救出できました。でも、ひばりが蛍と一緒にいるのを嫌い、単独行動を開始します。途中、角又に出会い、2人旅が始まりました。ひばりも角又も春のチームですが、大洪水でバラバラになってしまったようです。ひばりは角又を知りません。春のチームがバラバラになった時点ではまだ眠っていたからです。
 夏Bチームはみんなでクルーザーに戻り、快適な住環境をてに入れて、意気揚々と出航します。当面の目標は、嵐の彼女、花を探すことに決めた模様です。

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 夏Aチームは小瑠璃のハングライダーによる上空からの偵察で、物資倉庫の目印である岩に彫られた石仏を発見、そこを拠点とし、あっという間に村を作りました。狂暴な動物を避けるため、居住スペースはツリーハウスか水上です。吊り橋も設置し、地上に降りずに行き来できるようにもしてあります。
 行動は統率がとれていて、テキパキと一日をこなし、報告会も毎晩実施、情報を共有します。
 そんな折り、草むらに倒れている野火桃太郎、通称のび太をあゆが発見します。やはり春のチームはバラバラになっているようです。しかものび太は怪我を負っていて、しばらくは動けそうもありません。
 あゆはのび太を人体実験に使います。鷭以外のチームメイトにはのび太の存在を明かさず、採集した植物などをのび太に食べさせ安全確認をしたり、野草から作った薬を傷口に塗って効果を検証します。もちろんのび太はそんなことを知りません。親切で綺麗なお姉さんが看病してくれていると思い込んでいます。
 規律ある生活の中で住環境も整い、しかし夏Aチームは自分達の存在意義に疑問を感じ始めていました。訓練中は7人に残ることが彼らを支えていましたが、未来では成績優秀者が褒められるわけでもなく、評価者の誰かが見ているわけでもなく、ただサバイバル生活を続けるのみです。こんなことがしたかったのか? こんな未来にきたかったのか? みんな口には出さないけれど、そう感じていることをあゆは気づいていました。
 あゆが洞窟に匿っていたのび太を、安吾が発見し、村に連れ帰ります。訓練を受けてきた安吾たちと比べれば、のび太は何もできません。安吾は憤りを覚え、訓練のひとつも受けていないのび太に、いきなり、崖登りを命じ、できないとわかると辛く厳しく当たります。安吾に怯えるのび太
 安吾はイラついていました。栄えある7人に選ばれたものの、未来に来てみれば日々の生活に追われるだけ。自分達は選抜試験に勝ち抜いた優秀なメンバーであるというプライドがそれに輪をかけます。同様に未来に送り込まれたのび太は、訓練を受けてないのみならず、何もできません。イライラは募ります。
 一方、春の花や冬の新巻らを加えた拡大秋チームは、とりあえずの居住場所を求めて、新巻の案内で多数の洞窟のある一帯へやってきました。夏Aの村に至近な場所まで迫っていましたが、もちろんそんなことは知りません。
 ハルは木が燃えた後の炭が固く澄んだ音を出すのに気がついて、それで音階を作って音楽の演奏に利用しようと考えます。夏Aの源五郎は新巻の連れている犬と出会います。毒味役として人体実験に使われてるのび太は大きく体調を崩し、しかも自分がそういう役割を与えられてることを知り、夏Aの村からの逃亡を企てます。しかし、失敗。安吾に見つかって取っ捕まります。欄はシェルターから双眼鏡をかっぱらってきており、のび太が夏Aに捉えられてることを知ります。秋チームはガイドの十六夜を夏Aに銃殺された経緯もあり、拡大秋チームと夏Aの戦争が始まろうとしていました。
 そんな折り、ハルが炭の木琴で曲を奏でているところに、小瑠璃のハングライダーがとおりかかり、2人は親しくなります。2チームの確執とは無関係に、ハルと小瑠璃は心を通わせる仲になってゆくのです。
 拡大秋チームは、のび太奪還ための作戦を開始。欄は別動隊を組織して、ハルの所にやってきた小瑠璃を拉致。花ののび太奪還作戦は失敗しますが、欄たちがやってきて、小瑠璃との人質交換を提案します。

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 しかし、協議する間も与えられず、白いコウモリの襲撃に合います。逃げ惑う人間たち。コウモリvs人間の図式が成立し、一時は両チームの共闘体制が自然と成り立つのですが、コウモリ退治が終わるまでの話でした。
 これが終わると、秋拡大と夏Aの確執がまた表面化します。でも、安吾は、コウモリに対抗し、かつより安全に暮らすために、秋拡大チームのメンバーに、夏Aの村に合流することを提案します。
 夏Aは主に安吾のリーダーシップで統制のとれた暮らしをしていますが、一般人と見下した態度を秋拡大に対してとり、なにかというと命令口調で指示をするので反感を買います。個々のメンバー同士は仲良くなる人たちもいるのですが、チームとしては反目しあいます。

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 そんな中でも、自然浄化作用とでも言うのでしょうか、理解し合わなくてはならなちという空気が醸成されていくのでしょう。
 そこまで夏Aが、秋拡大を「一般人」と言うのなら、夏Aはどんなチームなのかと説明を求めます。夏Aは、選抜段階での過酷なノルマやテストについて語ります。

○ どこかわからない山の中の施設で生まれ育った。親はいない。いるのは自分達と教師だけ。
○ 未来へ行く7人を選ぶだけの訓練施設。
○ 毎日のように脱落者がでる。それは、勉強ができない、身体能力が足らない。生活力がない。視力が落ちたなど、様々な理由による。
○ 最終テストは、厳冬の山中に行きなり放り出されて、ひたすらサバイバル。
○ みんな、あっけなく死んでいった。

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 何も知らずにここに来た一般人のおまえらに何がわかるというのか、そう安吾は叫びます。花は「こっちだって辛かったんだよ、わかるよ」と言える経験が何もないことに愕然とします。もし未来に来ていなければ、嵐と将来はおそらく結婚をして、趣味でクライミングケイビングをして愉快に平和に暮らしていたと想像する花には、言うべき言葉が見つからないのです。
 しかし、秋ヲは安吾に反論します。「ようするに温室育ちだったんだろ?」という彼の一言は強烈でした。一般人にとってのライバルは、訓練施設の仲間の数どころではなく、人類全て。生まれた時から目標を与えられてる夏Aとは違う。自分で考えて選ばねばならない。受験に失敗したり、会社を潰したりして首をくくる人もいる。自分で選んだ道の責任は自分にある。狭い世界で生きてきたおまえらにはわからないだろう、と。
 狭い世界であろうとも、大人が勝手に用意したその世界で親友を失った安吾は、納得できません。しかし、秋ヲに反論もできません。安吾はますます不機嫌に、そしてかたくなになり、キレやすくなっていきます。
 これまでの経験から、空気が変わったので間もなく乾期が来るという新巻の言葉に従い、水の確保のために一同は手を打たねばならなくなります。ギクシャクした中での共同作業です。井戸を掘り、ため池を作り、水を確保できほうな池などの捜索が始まります。

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 花は夏Aの村からの離脱を決意します。ハルが背後から襲われたり、花が安吾から犯されそうになったり、色々ありました。
 みんなで出たいところですな、のび太は年少だし、くるみは妊娠してるし、反感を買っているのは自分だけでもあり、それで丸く収まると考えたのです。
 夏Aの教官だった貴士が、花の父親であることもわかりました。だからこそ訓練も受けずに未来へこれたとか、恋人の嵐まで一緒に送り込まれたなど、「ずるい」と安吾に思われ、ますます花への反感は大きくなっていきます。シェルター「りゅうぐう」で采配をふるっていたのも貴士だとわかります。花は父から何も聞かされておらず、父から知らされていたその職業は平凡な公務員でした。
 残された人のために、花は離脱前に水の確保という役割だけは果たそうと、洞窟の下部にあるらしい水流を探しに縦穴の裂け目に降りて行きます。しかし、ロープを切られて奈落の底へ置き去りにされます。
 新巻、ハル、源五郎、小瑠璃は救助しようと努力するのですが、簡単にはいきません。

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 花は地下深くで大きな地下水の流れを発見、ブーメランにその旨のメッセージを記して投げあげます。花の無事を確認した4人は、さらに花の救助のために降りて行きます。同じく水を探していた安吾に出くわした花は安吾と揉み合いになり水流に落ちます。それを見つめるだけで救助しようとしない安吾。見殺しにするつもりのようです。
 ロープで安全確保した源五郎が水流に飛び込みますが、引き戻された源五郎からもたらされた情報によると、花は絶望的です。
 水流は激しく、その水はとても冷たく、洞窟は水で満たされていて空気のある場所はなく、先はいくつも枝分かれしていて探しようもない。花の死亡はほぼ確実と思われました。

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 ロープを切った涼、見殺しにした安吾、この2人が村を追放されます。夏Aチームからも同行しようという者は現れませんでした。
 新巻は花の生存を信じて、花の捜索のために、単独で村を出る決意をします。犬たちの嗅覚を利用して、花を見つけられるのではないかと考えています。
 住居に水を引くのをあきらめた一同は、水場の近くに乾期用の住居を建設して引っ越しをしました。これらを確認して、新巻は村を出ます。あゆが同行しました。

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 集団から離脱した安吾と涼は、海岸まで辿り着いた所で、接岸しているクルーザーを発見します。座礁でもしているのか、少し傾いています。近づいてみると、人もいます。いきなり声をかけるのではなく、慎重を期してしばらく様子をみることにしたのですが、向こうから接触してきました。
 夏のBチームと名乗ります。夏Aである2人は、チーム仲間とははぐれたと伝えます。
 ここでは1日に5回、冷泉の間歇泉が吹き上がります。間もなくその時間。水を受け止めるための容器を地面に置き、夏Bの人たちは頭から水を浴びて、その恵みを享受していました。

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 間歇泉の水を集め、海からの恵みなどその時に捕れるものを捕まえて食料にする。船は傾いたままで、藻や貝がびっしりついたまま放置。隠し芸大会と称した娯楽に耽たりもする。備蓄もせず、そんな刹那的な暮らしを続ける夏Bに、きちんとした訓練を受けてきた安吾と涼は、違和感を覚えながらも助言程度の小さな口出しをする程度でいました。
 外敵に対しても、仲間の人間に対しても、安吾や涼の目から見れば隙だらけです。しかし、本当の隙なのか、自分達を油断させようとわざとそうしているのか、判断がつきません。
 それに、文明の無い未来でのサバイバル生活のキャリアは夏Bの方が安吾達より長く、生活の知恵にたけていたり、食べられる野草、食べられない野草をそれぞれスケッチして残しておくなど、訓練ではなく日常から多くの事を学んでいました。
 そんな中、安吾と涼は、まだ訓練とテストの日々から抜け出せないでいました。トラウマになっていると言えるのかも知れません。その場の思い付きで行動することの多い夏Bに対して、今度は自分達が教官の立場になってテストをほどこそうとします。
 船室の中で炭火を使って食事をした後、トランプに興じる夏Bのメンバー。涼はその部屋を密封すべく、小窓などを閉めて回り、甲板に出ます。

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 一酸化炭素中毒であわや全滅になるところを、安吾が気づいて助けます。「危険に気づけよ! あっという間に全滅じゃないか!」と、安吾は夏Bを叱りつけます。
 涼は「まとめては難しい。一人ずつか」という意味のことを呟きます。
 拾ったバスタブを生け簀にして貝やカニをいれておいたら、貝は全て食べられてしまっていました。安吾と涼はこうなることがわかっていましたが、「テストなんだから言うな」と、涼は安吾に助言させないようにしていました。
 また涼は、サウナ室に蝉丸を閉じ込めてしまいました。椅子を重ねてつっかえにし、中からは開けられないようにしたのです。これにはナツが気づいて、蝉丸を救出しました。
 獲物を採るため嵐が涼に声をかけて海に潜りますが、涼はそのことを誰にも言いません。そのため、クルーザーは出発してしまいます。海上に再び嵐が顔を出した時には、すでに船の姿はありません。嵐は海の真ん中に取り残されてしまいます。

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 浮力のある海草を見つけた嵐は、それを身体に巻き付けて、体温と体力を温存、なんとか陸地に辿り着きます。
 嵐の不在に気づいた一行は引き返します。しかし、帆船のため同じ航路をとることができません。しかも、海面を真っ黒に埋め尽くす藻のある海域に入ってしまい、動けなくなってしまいました。他にも朽ちた船が何隻かあり、脱出不可能な船の墓場かもしれません。凧を上げれば風になびくのですが、船上では風は感じません。
 豪華客船を思わせる巨大な船舶もあり、どうせ動けないならと、夏Bの一行は有用な物資がないか、見に行こうとします。海面を埋め尽くす藻の上に戸板を載せれば、どうやら渡っていけそうです。
 安吾と涼にとっては、巨大船舶は「何らかの危険があるかもしれないさけるべき存在」です。反対しますが、夏Bの勢いをとめることはできませんでした。

 嵐は凧を見つけて、自力でクルーザーに戻ることができました。身体に海草をまきつけて藻の上を滑ることで、泳ぐことなく戻れたのです。
 残っていたちまきから状況を聞き、嵐も巨大船に向かいます。
 さて巨大船ですが、夏Bが乗り込んだせいでしょうか、何らかのスイッチが入ってしまったようです。急に船が傾き始めます。あわや沈没かと思われましたが、90度回転して、縦になった状態で停止しました。もともとそういうことができる構造になっていたのです。
 船の名は富士号。最初、7つの富士とは別の「物資倉庫」ではないかと思われましたが、とうやら「りゅうぐう」と同じく、避難シェルターのようです。
 当初、むやみと下層階に行かないようにしていた一行ですが、90度回転してしまったことで、メンバーはバラバラになり、予期せぬ階層に振り分けられてしまいます。

 ディスプレイには、カウントダウンのような表示がされます。電力は生きています。既にソーラーパネルの存在は確認できています。この他に、波力等も利用していたようです。陸上にいたとき、嵐は風力発電の風車や海中に延びるケーブルも発見していて、様々な方法で電力を確保していたようです。ただし、現在では十分な電力を確保できていないらしく、ディスプレイによると電力供給は20%で、節約モードが実行されています。縦変換の際に本来なら実行されるであろういくつかの仕様が達成されず、横向きになったままの部屋や、斜め状態で停止してしまった設備などもあります。

 牡丹と蛍は船長室でとあるディスプレイを見つけて、その中のファイルを開きます。そこには、船長から乗員にあてたビデオメッセージが残されていました それによると、電力も食料も十分でなく、有事に備えた武器を勝手に持ち出して殺し合いも勃発しており、みんな理性を失い始めている。限界だと判断した。よって、このシェルターは終わりにする。本土で苦しんでいるであろう皆のためにミサイルを発射して、船も自爆し、何もかも終わりにする、というものです。
 ミサイルには核を搭載したものもあるようです。
 そこかしこのディスプレイに表示されていたカウントダウンのようなものは、ミサイル発射までの時間だったのです。
 何らかの原因で止まっていたカウントダウンは、彼らが船に乗り込んだことが影響して動作を再開したようです。
 残り時間は13時間あまりです。

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 船が縦変換したことでバラバラになったメンバー。それぞれ近くの者どうしで自然発生的に小グループが組成され、海上の上層階へと向かいます。小グループはシャッフルされた状態になっおり、安吾と涼もバラバラになります。

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 縦変換が完全なものでなかったため、脱出路も所々で途切れています。それをクリアするのに、力を合わせるわけですが、その行動過程で、安吾は問われるままに身の上を語ります。
 養成機関にいた者は全員がなんの疑問も抱かず、未来への切符を手に入れるために、訓練で良い成績を目刺し、ダメなら脱落してゆきます。途中から安吾は、脱落した者は殺されることを知るのですが、「逃げるという選択肢はなかったのか?」と問われ、「無い」と答えます。絶海の孤島でもないのに、逃げる選択肢がないのはおかしい。逃げる選択肢を思い付かないように洗脳されていたのだと安吾は指摘されます。
 隔絶された世界では、教育(洗脳)によって、たったひとつの、あるいは極端に狭い価値観を植え付けるのは、容易
のようです。
 安吾達は、逃げてよかったんだ、逃げるという選択肢もあったんだ、そう気づかされます。
 やがて、船内でバラバラになっていたメンバーも、様々なルートをどうにかこうにか通り、一ヶ所に集まってきます。ここで、話し合いがもたれました。動き始めたミサイル発射のカウントダウンについて、です。
 十分な電力もなく、長年メンテナンスされることなく待機状態にあったミサイルです。きちんと動く保証はありません。従って、放置して逃げるという手もありといえばありです。
 しかし彼らは、一致団結してミサイル発射阻止に動くことにしました。

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